アジア タイ代表

タイ代表敗北の理由はどこに?ベトナム戦で犯した4つの失敗

著者:オッブ・ディーワジン(フットボール・トライブ・タイ)

3月のFIFA大会で中国に1-0で逆転勝利したタイ代表チーム。ブリーラムのチャン・アリーナでのキングスカップ開幕戦、ベトナムとの対戦でも高い期待を持たれていた。しかしながら、コミカルなディフェンスミスから試合90分のゴールで敗退し、サポーターの間では憤慨と不満が引き起こされた。では、タイ代表の何が悪かったのだろうか。


疑問残る交代策

シリサク・ヨディヤードタイ監督がスマニャ・プリサイに代えてサーラット・ユーイェンを投入したのは正しかった。ポートFCのプレーメイカーであるサーラットの縦パスはチェレンジ性が強く、タイが差し迫るベトナムの前線を突破するのを助けた。

しかし、その後の交代を試合時間残り10分まで待つという決定は理解し難い。さらには3人の確立されたストライカーがベンチで待機していたにも関わらず、16才キッズに目を向けた事実だ。確立されたストライカーのうちの1人は、代表チームとして100度目の出場を待っていたというのに!

これは将来が非常に有望なスファナット・ムエアンタへの批判を意味するものではない。ただ、彼の起用は戦略的な決定というよりは、希望的な決定にみえた。不適当かもしれないが、ティーラシン・デーンダーはタイで最も優れたフィニッシャーであり、間違いなく10分は持ったはずだ。さらに、アディサク・クライソーンは中国カップで活躍し証明された東南アジアレベルのゴールスコアラーだ。スラチャット・サリーピムを破壊槌として送ることさえ、その時点での試合の異常な性質を考慮するともっと意味がある。シリサク監督は、戦術的な解決策の代わりに奇跡を探しに行った。


いつもと違う守備ポジショニング

スタートは、アディソン・プロンラ、パンサ・ヘムヴィブーン、スファン・トンソンの3バックから始まった。これらの選手は以前も代表チームとしてうまくやってきていたため、スターティングチャンスを得るにふさわしい。

しかしシリサク監督は、3人のうち右サイドにパンサ・ヘーミブーンを迎え入れることで物事を複雑にした。アディソンは彼にとって逆の左にシフトした。

試合開始1分で、パンサとGKカウィン・タンマサッチャーナンのコミュニケーションにミスがあった。公正に言うと、パンサとカウィンが一緒にプレーする機会がほとんどないために、このエラーが発生した可能性がある。しかし最も大きな理由は、パンサが普段と全く反対の方法でポジションでプレーしなければならなかったためではないだろうか。

国際大会ではトレーニングピッチでの時間は非常に限られているため、選手には慣れ親しんでいる役割を果たせるようにするのが賢明な選択だろう。


サーラットとタナボーンの惨めな失敗

不調のサーラット・ユーイェンと、ペースが乱れたタナボーン・ケセラトを組み合わせたのは間違いだった。2人は2010年半ばにキャティサック・セーナームアン監督のポゼッションベースの体制で名声を博した。バルセロナの4-3-3体制におけるブスケツとシャビの役割を再現していた。彼らはまた4年前のタイとベトナムの最後の対戦でも活躍し、有名な「ティキタカ」ゴールでアウェイの闘象(タイ代表)を3-0の勝利に導いた。

残念ながらサッカーの戦術は、ポゼッションをコントロールすることからポゼッションを取り戻す力を持つことへと移ってきた。ベトナムの積極的な攻撃により、タイの積み上げプレーは中断され、サーラットは前半の間完全に孤立していた。

タナボーンに関しては、ピッチ上の他の全員と比較して単純に半歩遅れていた。たびたび相手前線に圧倒され、遅れのために無意味なファウルをいくつか犯した。タイの2部層(彼は現在BGパトゥム・ユナイテッドFCでプレー)と東南アジアチャンピオンを支配する国際層間のギャップは非常に大きかった。タナボーンはこの状況対処に苦悩しているようにみえる。


スパチャイはワントップに適さない

新星スパチャイ・ジャイデッドは、AFFスズキカップやAFCアジアカップで飛び抜けた素晴らしい才能であり、ゴールやアシストを通して一貫したフィニッシュを提供する。しかしながらこの試合では、20才の彼がワントップとしてラインをリードするには相応しくないことが見てとれた。

身体的にスパチャイは、最速でも最強でもない。遠くからのシュートでパワーを使う必要もないし、1対1で対戦相手を突破する素早いドリブルも必要ない。彼の特別な才能は、空間を見つける本能だ。適切なタイミングで適切な場所にいることだ(フィリピン戦のゴールなど)。ナンバー10のポジションから、あるいは広いエリアから、空間に移動するときに最も危険な選手である。一方、ワントップとして起用すると、彼のその自由が制限され、偉大な才能を弱めてしまう。

試合への貢献の証拠として、スパチャイの前半の2回の試みを指摘する人がいるかもしれないが、実際にはロングボールと断片的なスローの結果で、それぞれの可能性はわずかだった。彼はチームメイトの誰もをプレーに出させることができず、それはタイの攻撃がほとんど存在しなかったこと、またそれ故にベトナムがタイを追い込むことを簡単にしたことを意味している。試合後半から中盤にわずかに移動し改善したが、それでもパスの多くを見逃していた。


 

名前:菊池大将
趣味:サッカー観戦、映画鑑賞、読書
好きなチーム:ACミラン
幼少期に父親の影響でミランが好きになりました。アイドルはシェフチェンコ。パッション、データ、経済、カルチャー、サッカーの持つ様々な表情を見るのが好きです。よろしくお願い致します!

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