アジア タイ代表

最後の最後で劇的へディング弾。ベトナムが東南アジア最強を下す

写真提供: @Changsuek

著者:Gian Chansrichawla(フットボール・トライブ・東南アジア)

 タイのブリーラムで開催中(6月5〜8日)のキングスカップ2019。チャーン・アリーナでの開幕戦では、ディフェンスに大きなミスのあったタイに対し、ベトナムがロスタイムのゴールで勝利を収めた。

 タイは、チャナティップ・ソングラシン、ティーラシン・デーンダーが共に不調で不在のラインナップ。スター選手の穴を埋めたのは、ブリーラムを拠点とする若手スパチャイ・チャイデッドとスパチョーク・サーラチャートだ。ホームのピッチで印象を残そうとした。

 一方のベトナムは、グエン・コン・フォンがベンチに残り、チャン・ディン・チョンも最近のハノイFCでの試合の怪我によりメンバーから外れた。

 開始数分はどちらのチームもリズムを掴めず。ベトナムが積極的に前に出るも、中盤のバトルでの勝者が出ない。

 タイに最高のチャンスが訪れたのは、スパチャイ・ジェイディッドがベトナムのDFクエ・ゴック・ハイを退けてポストからのシュートを放った時だ。

 それに呼応するかのように、ベトナムは勢いを取り戻し、タイの中盤を突破してディフェンス陣を捉えようとした。タイのディフェンスは力強くボールを止めたが、ポゼッションに綻びがみえた。両チーム得点なしで前半を終える。

 試合開始57分、鋭いパスがボックス内での混乱を引き起こし、タイがリードを奪ったかのようにみえた。しかし、ベトナムの毅然としたディフェンスがまたしてもボールをクリアし、会場のフラストレーションは高まった。

 60分直前、選手同士の乱闘が発生。ベトナムのドアン・バン・ハウが、タイのティティパン・プアンチャンに張り倒された。両選手ともに審判からは何も提示されず、緊張が高まる中、どの選手も欠けることなく試合は再開される。

 69分、タイのテーラトン・ブンマタンの強烈なフリーキックが相手を突破してコーナーに吸い込まれ、ホームサポーターの興奮は最高潮になり、タイがリードを奪ったかと思われた。しかしながら、ファウルによりゴールは無効とされ、サポーターはさらなる怒りを募らせた。

 その直後にホストに向かったペナルティキックは審判に無視され、トリスタン・ドゥによる異議にイエローカードが出される。

 ベトナムのスター、グエン・クアン・ハイは後半そこまで静かだったが、ここで初めてゴールに近づいた。結果はほんの数センチ外れ、試合は残り10分で未だスコアレスとなる。

 ブリーラム・ユナイテッドの16才若手スパナット・ムアンターが、チームメイトのスパチャイ・ジェイディッドに代わり登場。彼の国際戦デビューに、ホームサポーターがようやく声援を送った。

 しかしこの声援も短命に終わる。4分のロスタイムが宣言されベトナムが勢いを増したためだ。試合最後の試みに、グエン・アイン・ドゥックがブリーラムMFルアン・スアン・チュオンの隙をついてヘディングシュート。GKカウィン・タンマサッチャーナンの捉え損ねか転倒か、ボールはクロスバーの下に沈んだ。トリスタン・ドゥもクリアすることができなかった。

 この予想外のゴールにはアウェイサポーターが沸き、タイの選手たちは信じられない様子をみせた。どちらのチームもうまくやったとは言えない試合だが、ベトナムの固執と粘り強さが、タイのディフェンスのミスコミュニケーションと混乱の大きな助けを借りて、わずかに上回った。