
アル・アハリ・ドバイは21日に行われたAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)準決勝で、町田ゼルビアに0-1と敗北。試合終了間際にゴール取り消し、VAR(ビデオアシスタントレフェリー)介入を巡り、正式抗議および再試合要求という前代未聞の事態に踏み切った。
中東メディア『エミレーツ・プラットフォーム』が伝えたところによれば、「アル・アハリは、町田戦の主審に対して正式に抗議。規定に基づき法的権利を全面的に主張する姿勢を示した。また、同点ゴールが無効とされた判定について、ルール適用の誤りがあったとして再試合を求めている」という。
問題のシーンは後半アディショナルタイム1分。町田がMF中村帆高に代えてMF望月ヘンリー海輝を投入する交代手続きの最中、アル・アハリが審判の笛を待たずにスローインでリスタート。望月がピッチに入りきれておらず、実質10人で守る町田の右サイドを攻略し、MFギリェルミ・バラが強烈なミドルを叩き込んだ。一度は同点ゴールと判定されたかと思われたが、町田ベンチの猛抗議を受けてVARが介入。主審がオンフィールド・レビューを実施した結果、ゴールは取り消された。この判定を受けて、アル・アハリの選手たちは試合後に主審を取り囲んで抗議。レッドカードが提示されるなど、後味の悪い試合となった。
DF岡村大八は試合後、「VARに助けられたゲームだった」と率直に認めた。黒田剛監督は試合後の会見でこの批判的な報道に対して反論する姿勢を見せたが、問題の核心は選手個人の行為ではなくVAR運用の「前例」にある。
不正なリスタートへのVAR介入は、世界基準では「過介入」として原則禁止とされてきた経緯がある。VARはもともと「最小限の干渉で最大の利益」という哲学の下に設計された仕組み。スローインの不正再開にまで遡及判定を下すのは、世界的にも超異例の運用だ。一方で、この原則はサッカー競技規則への明文化はなく、あくまで審判員用ハンドブックに起因するもの。主審の判断が「ミス」と断言できる根拠もまた、現時点では存在しない。
つまり今回の判定は、白でも黒でもない「灰色の領域」で下されたものだ。
アル・アハリの再試合要求がAFC(アジアサッカー連盟)に受理される可能性は極めて低い。だが、この一件が国際的なVAR運用基準の見直しを迫る火種になるリスクは、決して小さくない。町田、そして日本サッカー界の歴史的快挙が、現地で騒がれている審判問題の泥沼に引きずり込まれる懸念は拭えない。
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