女子サッカー

澤穂希らレジェンドからの厳しい指摘は誰に向けたもの?なでしこジャパン「決断の時」

宇津木瑠美(左)安藤梢(中央)澤穂希(右)写真提供:Gettyimages

女子サッカー界のレジェンドである澤穂希氏、安藤梢氏、宇津木瑠美氏など、かつて女子日本代表のユニフォームを着て戦って来た先輩たちから、なでしこジャパンに厳しい指摘が投げかけられている。なでしこジャパン(サッカー女子日本代表)は開催中の東京オリンピック(東京五輪)で未だ1分1敗。勝利が挙げられていない。

7月24日に行われた予選リーグ(グループステージ)第2節、日本対イギリス戦。イギリスは五輪には英国4協会が統合された「チーム・グレートブリテン」として参戦しているが、招集メンバー22人のうち19人はFIFAランキング6位のイングランドである(他スコットランド2人、ウェールズ1人)。

日本にとってイングランドは、2011年のドイツW杯優勝時にも0-2で敗戦を喫した天敵だ。特にそのドイツW杯と2019年のフランスW杯、2つの世界大会で計3ゴールを挙げたFWエレン・ホワイトは天敵中の天敵だった。それだけに、同試合でも警戒していたエースFWに一瞬の隙を突かれて決勝点を許し0-1と敗れた後輩たちに、レジェンドたちは厳しいメッセージを向けている。


日本代表FW岩渕真奈 写真提供:Gettyimages

岩渕が捨身で奪った勝点1を大事に

東京五輪初戦、FIFAランキング10位の日本は同8位のカナダと対戦して先制され、1-1と引き分けた。第2戦は同6位のイギリスに0-1と惜敗。悔しいが、冷静に考えると日本は順当に負けた。

ただ、日本は格上の“ほぼイングランド”を相手に、カナダ戦から先発メンバーを5人替え、前半は攻守にアグレッシブなプレーを見せた。2011年と2019年のW杯の試合よりも善戦し、互角に渡り合っていた。2015年のカナダW杯準決勝における試合終了間際の相手オウンゴールによる事故のような勝利よりも良かったかもしれない。

イギリスは、昨年のFIFA年間最優秀選手に選出されている右サイドバックのルーシー・ブロンズが初戦のチリ戦で2得点に絡み、相変わらず中央にも進出する動きを見せている。初戦は先発を外れていた主力ウインガーのニキータ・パリスと並ぶイギリスの右サイドは、強力どころか世界最高だろう。男子で例えるなら、ブラジル代表の左SBマルセロ、その前にクリスティアーノ・ロナウドがいた当時のレアル・マドリードに対して、シャルケに在籍していた当時の日本代表右SB内田篤人がチャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメントで対峙していたようなものだ。

それでも、日本は初先発のMF杉田妃和とDF宮川麻都が左サイドでコンビを組んで奮闘。杉田がコースを限定し、宮川が前に出てインターセプトを狙う守備など、組織的にも機能するプレーを披露し続けていた。攻撃面でも世界最優秀選手に対して全く怯まず、1対1でブロンズからボールを奪っては圧倒的なキープ力を発揮し、チャンスにも繋げていた。

それだけに、杉田にはもともとのポジションである中央でプレーさせたいところだ。しかし司令塔役のMF長谷川唯のフィジカルや守備力を考えると、2トップ気味に中央に長谷川を配置し、攻守にファイトできる杉田をブロンズとマッチアップさせる策は理に適っている。

結果が出ない中、高倉麻子監督への批判は国民レベルに達しているが、初戦のカナダ戦の前半45分以外は特に何か致命的な采配を見せたわけでもない。それよりも、今はエース岩渕真奈が捨身の覚悟で奪ったカナダ戦の同点ゴールによる勝点1を大事にしたい。この1ポイントにより、第3戦のチリ戦で勝てば、決勝トーナメント進出は間違いなくなる。

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