ワールドカップ 代表チーム

イタリアを94年W杯決勝に導いた悲劇のヒーロー、ロベルト・バッジョ

著者:マリオ・カワタ

 多くのサッカーファンにとって、最初のワールドカップの記憶は特別な物なのではないだろうか。現在ロシアで大舞台に挑んでいる若手には2002年大会さえ覚えていない選手もいるだろうが、私にとっては1994年大会が子供時代の懐かしい思い出となっている。ロマーリオやフリスト・ストイチコフ、ゲオルゲ・ハジといったヒーローたちに彩られた大会の中で、私の心を最も強く捉えたのは悲劇的な結末を迎えたイタリアの背番号10の物語だった。

 1993年にバロンドールを受賞したロベルト・バッジョは既に世界最高の選手の一人として認められた存在であり、当然のようにアズーリを4年前の地元開催のワールドカップでは達成できなかった4回目の世界制覇へ導くことが期待されていた。

「この大会が私たちにとって歴史的なものになることを願っているよ」と、大会開幕前にバッジョは語っている。

 アキレス腱の負傷が完治していなかったファンタジスタは、怪我を押してイタリア代表の初戦にジュゼッペ・シニョーリと2トップを組んで先発出場した。しかし結果は、アイルランドを相手にまさかの0-1の敗戦。その5日後のノルウェー戦でも、イタリアは21分に無謀なオフサイドトラップを破られるとゴールキーパーのジャンルカ・パリュウカがエリア外でハンドを犯し一発退場となってしまう。代わりのゴールキーパーを送り出すためにベンチへ下げられたのは、エースのはずのバッジョだった。

 監督のアリゴ・サッキは試合後、「ロベルトを外すのは非常に難しい決断だったが、あの状況では技術のある選手よりタフで走れる選手が必要だった」と説明している。

 イタリアは後半さらに主将のフランコ・バレージも負傷で失うが、69分のディノ・バッジョのセットプレーからのゴールでなんとか1-0でノルウェーを破った。第3戦でメキシコと1-1で引き分けたチームはグループリーグを3位で終え、当時の24チームによる大会方式のおかげでなんとか決勝トーナメントへ駒を進める。しかしアズーリの戦いぶりは実に頼りなく、攻撃の中心となるべきバッジョも精彩を完全に精彩を欠いていた。

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