
エディン・ジェコ(ボスニア・ヘルツェゴビナ代表FW/1986年3月17日生まれ)
40歳でも衰えぬ得点力、ボスニア・ヘルツェゴビナの絶対的エース
ボスニア・ヘルツェゴビナ代表FWエディン・ジェコは、3月に40歳を迎え、今W杯の欧州予選プレーオフでイタリア代表撃破に貢献した。40歳3か月で本大会を迎える、同代表の最多出場・最多得点記録保持者でもある。1-1のドローに終わったW杯初戦のカナダ戦(6月13日)では出番がなかったが、第2戦のスイス戦(6月19日/1-4)ではスタメン出場し、後半18分までプレーした。
ジェコは、イギリスのスポーツ専門チャンネル『Sky Sports』のインタビューで、「10年前には40歳でプレーしているか想像できなかった」と語っている。全体練習前後の個人トレーニングを増やし、脚や全体の回復に注力しているという。食生活ではタンパク質中心で、そのストイックさを物語る。
2010年のブンデスリーガ得点王(ヴォルフスブルク)、2017年のセリエAと欧州EL得点王(ローマ)の実績を引っ提げ、2025/26シーズン途中には、ブンデスリーガ2部のシャルケに移籍し、加入後11試合で6ゴール3アシストを記録し1部昇格に大きく貢献。その決定力がさび付いていないことを証明した。

フェルナンド・ムスレラ(ウルグアイ代表GK、1986年6月16日生まれ)
大会中に40歳到達、代表復帰後も見せる安定感
ムスレラは、本大会初戦のサウジアラビア戦(1-1)翌日に40歳を迎えた。2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会では正GKとして活躍したが、2022年カタール大会では正GKから外れた上、グループリーグ敗退に腹を立て試合直後に乱闘騒ぎを起こし、FIFA(国際サッカー連盟)から4試合の出場停止処分と奉仕活動、2万スイスフラン(約280万円)の罰金が課された。
この事件以降、代表から外れていたが、2026年になると3年3か月ぶりに代表復帰。2025年にガラタサライから移籍したエストゥディアンテス(アルゼンチン)での安定したプレーぶりが買われ、滑り込みでW杯への切符を手にした。グループリーグ第1戦のサウジアラビア戦(6月16日/1-1)でも先発フル出場。同組4チームすべてが引き分け発進の混戦模様の中、その経験値はチームに好影響をもたらすだろう。
ゴールキーパーとしての経験を活かし、日常のポジショニング練習とフィジカル面のメンテナンスを継続。18年以上にもわたる欧州生活を経て、南米に復帰した適応力が基盤となっている。

マヌエル・ノイアー(ドイツ代表GK/1986年3月27日生まれ)
2014年優勝を知る男、代表引退宣言からの復帰劇
W杯初出場のキュラソー代表を相手に7-1と、とてもサッカーのスコアとは思えないほどの圧勝で第1戦(6月15日)を終えたドイツ代表。そのゴールを守ったGKマヌエル・ノイアーは、40歳2か月で5度目のW杯出場となる。主要大会(W杯・欧州選手権)における同国の最年長出場記録を持つDFローター・マテウスを超えた。
2024年の欧州選手権後に代表引退を表明したが、ユリアン・ナーゲルスマン監督の要請を受けて復帰。2014年W杯優勝メンバーで唯一残る選手でもある。
ノイアーのプレースタイルは「スイーパーキーパー」と呼ばれ、現代GKの模範となっている。トレーニングでは瞬発力とカバー範囲の維持に重点を置き、負傷後のフィジカル管理も徹底。40歳での代表復帰は、プロフェッショナルな日常習慣の賜物と言える。

ヴォジーニャ(カーボベルデ代表GK/1986年6月3日生まれ)
インスタフォロワー爆増のGK、25歳でプロ入りした遅咲きの守護神
カーボベルデ代表GKヴォジーニャ(本名:ジョジマール・ディアス)は、6月3日に40歳を迎えたばかり。2012年の代表デビュー以来、W杯開幕時点で国際Aマッチ56キャップを誇り、カーボベルデ史上初のW杯初出場に大きく貢献した。
記念すべきグループリーグ初戦のスペイン代表戦でもゴールマウスを守り、27本のシュート(うち枠内7本)を浴びながらも完封し(6月16日/0-0)、FIFA選出のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(ミケロブ・ウルトラベストプレイヤー賞)にも選ばれ、同国のサッカー史に確たる足跡を残した。その活躍によって、インスタグラムのフォロワーは約5万人から1,000万人を超えたという。一夜にして“世界的スター選手”となった自身が一番驚いているかも知れない。
ヴォジーニャは、2009年地元サン・ヴィセンテ島のバトゥケFCでアマチュアとして選手生活をスタートさせ、2011年までプレーした後、ライバルだったCSミンデレンセに移籍。25歳で初めてプロ契約を交わした遅咲きの選手だ。長年の地道なトレーニングと献身性が、40歳で大舞台に立つ夢を実現させた。欧州育ちの選手のような、厳格な食事制限や緻密なトレーニング法を実践しているわけではないが、アフリカ人選手ならではの、持って生まれたフィジカルが強みだ。
なお、40歳前後のアフリカ人選手と言えば、1990年イタリア大会開幕戦でアルゼンチン代表を破る大番狂わせを演じたカメルーン代表のFWロジェ・ミラを思い出す。当時38歳だったミラは既にプロとして引退していたにもかかわらず、ポール・ビヤ大統領の要請で現役復帰。8強進出という大旋風の中心的存在となった。その4年後の1994年アメリカ大会時も、地元のアマチュアクラブで“余生”を楽しんでいたにもかかわらず、再びビヤ大統領の要請で代表入り。チームはグループリーグ敗退に終わったが、ミラは42歳1か月8日で得点を記録し、W杯最年長ゴールとして今でも名を刻んでいる。こうした謎めいた選手が現れるのが、アフリカ大陸の代表チームの魅力でもある。
8選手に共通する、年齢を超えるストイックさ
これらの選手に共通するのは、日常の積み重ねだ。ロナウドのようなルーティン(厳格な食事制限や多様なトレーニング方法)から、ゴードンやオチョアのような経験重視型まで多様だが、回復・栄養・メンタル管理を怠らない点では共通している。
日本代表でも39歳のDF長友佑都が、糖質を適度に減らし、良質な脂質を摂取する「ファットアダプト食事法」を実践、体幹トレーニングを重視し、フィジカルを維持している。2018年ロシア大会直前、日本代表の平均年齢が史上最高の28.17歳となり、若手にチャンスを与えないことを批判するファンに対し、長友はXで「年齢で物事判断する人はサッカー知らない人」と発信し炎上したが、こうした目に見えない努力を知ると、納得せざるを得ないだろう。
40代選手の存在は、現代サッカーの進化(科学的なトレーニングや栄養学の発展)を反映するものだ。北中米W杯で彼らが示すのは、年齢という数字を超えた献身性でもある。大会を通じて、さらに彼らの活躍ぶりによって、ピッチ上では年齢など欠点にならないことを証明してくれることを期待したい。
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