11月17日、駐日スペイン大使館にて、浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)のゴールキーパー(GK)コーチ(2022-)を務めるジョアン・ミレッ氏の出版発表イベントが開催された。
同氏の書籍『ジョアン・ミレッ:世界レベルのGK講座』は、オランダ在住で「サッカー指導者の指導者」として活動中の倉本和昌氏との共著として出版されている。両氏によるGKに対する細かな技術解説やサッカー哲学が凝縮している1冊だ。
イベントには、ミレッ氏の熱い指導を受けたことのある元日本代表GK西川周作(浦和)、今年浦和への移籍を果たしたGK牲川歩見、11月4日付で契約満了を迎えFC東京退団を宣言した元日本代表GK林彰洋、計3名の選手が参加し、それぞれのエピソードを語った。その他会場には、2021〜2022シーズン浦和を率いたリカルド・ロドリゲス監督の姿も。早速、豪華ゲストの話をご紹介していこう。
ジョアン・ミレッGK本出版の背景:倉本氏の熱い想い
ミレッ氏の書籍出版決定の背景には、共著の2人のドラマの様な出会いがあったという。2006年にスペイン北部ビルバオでサッカー指導者の勉強を積んでいた倉本氏は、当時ミレッ氏が開催していたGK指導の授業に初めて参加し、衝撃の出会いを果たす。
「それまで色々なGKコーチに会ってきましたが、ジョアン(ミレッ氏)の様に『この状況ならば、この方法をとれば良い。なぜならば、こうだから』という理論を明確に持っている人はいなかった。また、今でも覚えている言葉が『GKのことを勉強しないで、どうやって失点を防ぐんだ?失点の原因をコーチが知らなかったら、どうやってチームを勝利に導くんだ?』と言われ、GKに対する見方が変わりました」と、当時のことを倉本氏は語っている。
その後ある時に、倉本氏はミレッ氏の口から「自分の指導方法を他の人に渡すつもりはない」という言葉を聴き、将来的にこの方法論が途絶えてしまう危機感に襲われたそうだ。倉本氏はいつか同氏を日本へ呼びたい、日本で仕事をしてほしいと本人に懇願した。
倉本氏の決め手は「ミレッ氏の方法論を残したい」そしてその方法は「日本人に合うのではないか」という2つの期待からくる熱い想いだった。日本人特有の反復精神や向上心とも合い、理論付けて物事を考え進行するという部分は日本に根付く、行く末には日本が世界のキーパー大国になることが可能かもしれない、と強く感じたそうだ。
現在は両氏によって『ジョアン・ミレッ:世界レベルのGK講座(2020年1月15日発売)』と、『ジョアン・ミレッ:世界レベルのGK講座:技術編(2022年5月30日発売)』の2冊が出版されているが、とてもそれだけでは足りないほどミレッ氏の指導方法は奥深いと言う。倉本氏は「将来的には7、8冊まで達成したい」と語り、場内を沸かせた。また、GKの視点で「なぜ点を入れられたのか?」という疑問を探っていくと、更にサッカーの楽しみが広がるという倉本流のアイデアを紹介してくれた。
指導を受けてきたGKたちの本音
ここからは、ミレッ氏の熱い指導を受けたことのある元日本代表GK西川周作(浦和)、GK牲川歩見(浦和)、元日本代表GK林彰洋(元FC東京)、3名の選手の言葉をご紹介したい。
GK西川周作「ゴールの前の空間をいかに防ぐか」
「今年(2022年)ジョアンと出会って、一番最初に言われた言葉は『今まで自分がやってきたやり方をリセットしてほしい』でした。自分はもっと上手くなりたかったし、日本代表にも戻りたかった。なのでジョアンを信じてリセットをかけました」
「今、実際に思えることは、信じてやってきて良かったということ。今までやってきたプレーよりも更に幅が広がり、年齢を感じさせない技術などのスキルアップをすることができたと感じています。具体的にはクロスボールにはそんなに出るタイプではなかったが、ジョアンと出会ったことで、クロスボールに出るのが楽しくで仕方がないです」
「ジョアンに『ゴールは存在しない』と言われ、ゴールの前の空間をいかに防ぐかに集中し大切にしてきました。今年はその成果を発揮することができたと、自分自身とGKチーム皆で感じています。引退はまだまだ先だと思いますが、今後もジョアンの指導を取り入れ、そして楽しみながら、そして将来的にコーチをすることになった際には、この指導方法で子供達にサッカーを教えて行きたいと思っています」
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