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超カッコ良い!東京五輪も盛り上げてきた2大フットボール・アンセム

『Blur』『Elephant』『Under Blackpool Lights』写真:筆者所持品

東京五輪は佳境を迎え、サッカー競技も男子決勝のスペインとブラジルの対戦(8月7日20:30〜)を残すのみとなった。女子決勝(6日)ではカナダとスウェーデンが対戦。延長戦でも決着がつかず、PK戦の末に3-2でカナダが勝利し初の金メダルを獲得。日本を破ったスウェーデンは、リオデジャネイロ五輪に続いての銀メダル。3位決定戦(5日)ではアメリカがオーストラリアを4-3で下して銅メダル獲得となった。

男子の3位決定戦(6日)では、日本がメキシコに3-1敗れ53年ぶりのメダル獲得を逃す。しかしながら、U-24日本代表のベスト4進出により、今大会ではサッカー競技の視聴率が全競技の中でトップだったという報道もあるなど、大きな盛り上がりを見せた。

ところで無観客にして盛況な大会を盛り上げるのに一役も二役も買ってきたのが、試合前選手入場時の独特のギターサウンドが印象的なスタイリッシュな楽曲と、ゴール後の痛快なロックチューンだ。ここでは、東京五輪でも使用され、現在のサッカーシーンで“ド定番”となっている2大フットボール・アンセム(象徴曲、祝歌)について紹介したい。


ロビン・ファン・ペルシー 写真提供:Gettyimages

今や定番の『セブン・ネイション・アーミー』

「曲名は知らないけど聴いた事がある!」と思うのも当然、東京五輪で選手入場時に使用されてきたのは、ユーロ(欧州選手権)などサッカーの国際大会では定番となっている『セブン・ネイション・アーミー(Seven Nation Army)』だ。アメリカのロックデュオ、ザ・ホワイト・ストライプス(The White Stripes)の名曲である。2003年にリリースされた彼等にとって4作目の名盤アルバム『Elephant』に収録されており、2004年のグラミー賞ベスト・ロック・ソング賞を受賞している。

アーセナルやマンチェスター・ユナイテッドのファンの方々なら、両チームに在籍したオランダ代表FWロビン・ファン・ペルシー(現フェイエノールトU-16チームのアシスタントコーチ)で思い出すのではないだろうか?プレミアリーグで2011-2012、2012-2013シーズンの2季連続得点王が得点すると流れる「♪~オー・ロビン・ファン・ペールシ~」というチャントの原曲である。

ユーロ2008で選手入場時に採用された『セブン・ネイション・アーミー』は、ユーロ2012とユーロ2016ではゴール後のアンセムに起用され、2018年遂にFIFAワールドカップ大会でもFIFAアンセムに代わって入場曲として使用された。それによって、同楽曲はリリースから10年経ってから全英チャートに再登場している。

ザ・ホワイト・ストライプスは、ギタリスト兼ボーカルのジャック・ホワイトとドラムのメグ・ホワイトによるアメリカのミシガン州デトロイト出身のロック・デュオ。デビュー時は姉弟という設定だったが、実は元夫婦だった。公になっても音楽活動時は「姉弟」と振る舞うなど話題性もあったが、そんなゴシップ以上に確かな実力がある。特にジャックは「歴代のカルトヒーロー」と肩を並べ、各種ギタリストランキングに唯一現役世代としてランクされる超絶技巧のテクニックを評価されている。リズムギターとリードギターのフレーズを同時に弾きこなすような重厚な奏法は鳥肌ものだ。

作品、衣装、ライブには、イメージカラーである赤・白・黒の3色しか使わないという拘りとコンセプトがあったり、ライブDVDなどの映像作品は8ミリ映像で収録するなど、独特の美意識を持つザ・ホワイト・ストライプス。ストイックで緻密で豪快でもあるフットボールとの共通項だ。彼らのスタイリッシュさを1つの楽曲に凝縮させたのが『セブン・ネイション・アーミー』である。

尚、ザ・ホワイト・ストライプスは2011年に「今まで築き上げてきた自分たちの音楽・アートを最高の形で残したいため」と解散を発表。現在、ジャックは別プロジェクトやソロ名義で活躍している。


ゴール後の爽快な“ウ〜フ〜”『ソング2』

東京五輪のサッカー競技でも、ゴール後に「ウ〜フ〜」という歌声と共に爆音が流れるキャッチ―かつインパクト抜群の楽曲が流れた。イギリス出身のロックバンド、ブラー(Blur)の代表曲『ソング2(Song2)』である。1996年にリリースされたブラーの5枚目のアルバム『Blur』に収録されており、その名の通り楽曲の演奏時間が約2分間という、疾走感とキャッチ―なメロディーが奏でるパンキッシュなロックチューンである。

ブラーはメンバー脱退などもあって活動休止期間なども多く、近年はフロントマンであるロンドン出身のデーモン・アルバーンによってほぼソロ・プロジェクト化されているが、1988年から活動している超ベテランのロックバンド。1990年代中頃の「ブリット・ポップ」と呼ばれる英国出身ロックバンドの隆盛期に、デーモンはファッションアイコンとして注目を浴び「ジャージを着こなすアーティスト」としても人気を集めた。1997年には映画『フェイス』にも出演して俳優デビューも果たしている。

この『ソング2』の冒頭の歌声のインパクトの強さから、欧米では『Woohoo! Song』と呼ぶ人たちも多い。シンプルな楽曲構成だが、一気にアッパーなギターが立ちあがる瞬間のインパクトは、イングランド代表による「キック&ラッシュ」を想起させる。

この2大アンセムをは、あと何回聞けるだろうか?サッカーファンにはしっかりとCDを買って聴いてみることをおススメしたい。ちなみに冒頭写真(『Blur』『Elephant』『Under Blackpool Lights』)は、筆者所持の証拠である。