Jリーグ 川崎フロンターレ

川崎FW小林悠の代表復帰を推す理由。“違い”を作る日本のトーマス・ミュラー

小林悠 写真提供:Gettyimages

点取り屋と共存、サイド起用でも得点量産

大学在学中の2008年には、J2水戸ホーリーホックで強化指定選手としてプレーしていたが、卒業後の2010年シーズンからは川崎一筋でプレーを続けている小林。生え抜きレジェンドとして前述のような数々の記録を積み上げてきたが、常にFWとしてプレーしてきたわけではなかった。

特に2016年までは前人未踏の3年連続J1得点王を獲得した元日本代表FW大久保嘉人(現セレッソ大阪)が川崎に在籍しており、その頃まではFWよりもむしろ右サイドMFやウイングとしての起用の方が多かったぐらいだ。

2017シーズンから大久保が抜け、自身が主将にも就任したタイミングで初めてメインストライカーとなり、23得点を挙げてJ1得点王に輝くなど、2017年以降は毎年2桁ゴールを記録。得点ペースを上げたのは間違いない。

ただ、2011年から2016年までの6年間で55得点を奪っており、うち3シーズンで2桁得点を記録しているのも見逃せない。プレースタイルは明らかに点取り屋であり続けているにも関わらず、サイドMFでも得点を量産できるのだ。

今季も右サイド起用が増えており、かつて大久保とプレーしていた頃のように、現在はレアンドロ・ダミアンと共存しながら得点も量産し続けている。


ボールを争う大宮時代のマテウス(左)と小林悠(右)写真提供:Gettyimages

オフ・ザ・ボールで“違い”を作る点取り屋

サッカーの世界では「特別な選手たちは“違い”を生み出している」と表現される。では小林はどこで“違い”を生み出しているのだろうか?

20代中頃までの小林はスピードが武器だったかもしれないが、スピードスターと呼べるほどではなかった。33歳となった現在は速さで勝負できる選手ではない。また177cm72kgのサイズは、いかにも“一般男性”の体格である。高さや速さだけでは勝負できないだろう。

小林は両サイドやトップ下起用でも応えられるため“器用”と言えるが、技術的には高いとは言えない。川崎自慢のパスワークでも“繋ぎ”で関わる頻度は低い。お世辞にも個人技に長けた選手とは言えない。

川崎のチーム自体がポゼッション型のチームであり続けているのは大きい。加えて、2012年から3年半に渡って10番を背負っていたブラジル人アタッカーのレナトが左サイドにいたことも大きい。チーム全体がパスワークで崩し、レナトが個人技を活かして左サイドを突破し、右サイドの小林がエリア内に入っていくプレースタイルは見事にハマっていた。

また、小林にはトラップミスやパスミスのような「止める」「蹴る」の基本プレーにミスが少ない。身体の可動域が広いためにボールを蹴るポイントが広いようにも見えるが、攻撃の局面で「それは違うだろう」と言われそうなパスや仕掛けのタイミングは一切ない。周囲とイメージを共有することに長けている。

昨季限りで現役を引退した元日本代表MF中村憲剛氏という偉大なパサーから徹頭徹尾鍛え上げられ、パスを引き出す術が多彩なのだ。小林はボールを持たない局面「オフ・ザ・ボール」で“違い”を作れる選手と言える。

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