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J2得点王は出世コース?香川&フッキ輩出時代からの傾向変化とは【J2タイム】

鄭大世 写真提供:Gettyimages

J2得点王の平均年齢が2013年を境に6歳差

そこで歴代J2得点王を調べてみたのだが、興味深い事実が浮き上がった。まずは下記に目を通して欲しい。

J2歴代得点王(1999-2020※太字が30代

年度/選手名(当時所属チーム)/得点数/出場試合/当時年齢

  • 1999年:神野 卓哉(大分トリニータ)36試合/19得点/29歳
  • 2000年:エメルソン(コンサドーレ札幌)34試合/31得点/22歳
  • 2001年:マルコス(ベガルタ仙台)40試合/34得点/27歳
  • 2002年:マルクス(アルビレックス新潟)36試合/19得点/28歳
  • 2003年:マルクス(アルビレックス新潟)41試合32得点/29歳
  • 2004年:ジュニーニョ(川崎フロンターレ)39試合/37得点/27歳
  • 2005年:パウリーニョ(京都パープルサンガ)32試合/22得点/23歳
  • 2006年:ボルジェス(ベガルタ仙台)41試合/26得点/26歳
  • 2007年:フッキ(東京ヴェルディ)42試合/37得点/21歳
  • 2008年:佐藤 寿人(サンフレッチェ広島)40試合/28得点/26歳
  • 2009年:香川 真司(セレッソ大阪)44試合/27得点/20歳
  • 2010年:ハーフナー・マイク(ヴァンフォーレ甲府)31試合/20得点/23歳
  • 2011年:豊田 陽平(サガン鳥栖)38試合/23得点/26歳
  • 2012年:ダヴィ(ヴァンフォーレ甲府)38試合/32得点/28歳
  • 2013年:ケンペス(ジェフユナイテッド千葉)38試合/22得点/31歳
  • 2014年:大黒 将志(京都サンガ)42試合/26得点/34歳
  • 2015年:ジェイ・ボスロイド(ジュビロ磐田)32試合/20得点/33歳
  • 2016年:鄭大世(清水エスパルス)37試合/26得点/32歳
  • 2017年:イバ(横浜FC)41試合/25得点/32歳
  • 2018年:大前 元紀(大宮アルディージャ)41試合/24得点/29歳
  • 2019年:レオナルド(アルビレックス新潟)38試合/28得点/22歳
  • 2020年:ピーター・ウタカ(京都サンガ)40試合/22得点/36歳

2012年に現行の22クラブ制になるまで参入クラブを増やして続けて来たJ2は、1シーズンのリーグ戦でホーム&アウェイの2回総当たり戦だけでなく、創設から2007年までは1シーズンに4回対戦。2008年と2009年は同3回対戦していた。

そのため、出場試合数と得点数も列記したが、気になるのは得点王獲得時の年齢である。歴代J2得点王の平均年齢は27.45歳。しかし、そこには“カラクリ”があった。

2013年にケンペス(2016年にシャコペエンセの飛行機墜落事故で他界)が30代で初めてJ2得点王に輝いたのだが、そこから5年連続して30代が続いた。それまでの14年間で1度も三十路得点王がいなかったのが奇跡かもしれないが、5年連続するのは確実に“流れ”が変わったからだろう。

2012年までのJ2得点王の平均年齢は25.36歳と、まさに若手や無名外国籍選手が活躍するリーグに相応しい数字だったのだが、2013年以降は31.13歳と一気に6歳も繰り上がっている。2019年の新潟のレオナルドを除けば32.43歳となり、さらに高齢化の傾向は強まる。ちなみにJ1得点王の平均年齢はどの年度で区切っても29歳前後である。


ジェイ・ボスロイド 写真提供:Gettyimages

降格の恐怖?求められるのは「本物」の代表級選手

この背景には、現行の22クラブ制になったのが2012年で、そこから下位カテゴリーへの降格制度が始まったことが挙げられる。2014年シーズンからはJ3が創設されたことで、降格クラブ数も1枠から1.5枠に、2017年からは2枠と増えた。つまり、J2クラブには「降格の恐怖」が生じ、経験や実績を重視する流れが生じたのである。

もちろん、これはスポーツ科学の発展により、サッカー選手だけでなくアスリート全体の選手寿命が延びていることが考えられる。

ただ、2012年以前の“若きJ2得点王時代”にも代表経験豊富な選手がJ2クラブで活躍する例はあった。それでも、大黒将志や鄭大世、大前元紀に代表されるように、J1で活躍してから欧州移籍も経験した選手がJ2得点王に輝いているのも面白い。元イングランド代表のジェイ・ボスロイドや元ナイジェリア代表のピーター・ウタカも含めた、J1級の「本物」がJ2でも求められているのだ。

ただし、「無名の外国籍選手」が少なくなったわけでもない。むしろ近年には顕著な例として、2019年の新潟のレオナルドが挙げられる。前年はガイナーレ鳥取でJ3得点王を獲得した彼は、22歳でJ2得点王を獲得したのだが、これは2000年のエメルソンと並ぶ最年少得点王である。当時はJ3がなかったエメルソンにしてもJ3クラブにやってきたレオナルドにしても、全くの「無名の若手外国籍選手」である。

そして、エメルソンは来日6年目の半ばに中東へ、レオナルドも来日4年目となった今季開幕前に中国へ高額な移籍金を残して飛び立っていった。

そんな変化の中にある現在のJ2を今後も追っていきたい。

●【J2タイム】と題したJ2に関する連載企画。いよいよ次回からはインタビュー記事なども登場します!お楽しみに!

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