Jリーグ 京都サンガ

チョウ・キジェ監督下で京都サンガはどのように変貌していくのか

チョウ・キジェ監督 写真提供:Gettyimages

「新スタジアム元年」という機運を勢いにして挑んだ2020シーズンの京都サンガ。数多くのニューフェイスも実を結ばず、結果J2リーグ8位フィニッシュ。2019シーズンよりも勝ち点が少なく、決して順風満帆なシーズンとはならなかった。


京都サンガ 写真提供:Gettyimages

昨シーズン残した絶望的な数字とは…

京都サンガの2020シーズンが不甲斐ない結果となってしまった要因の1つに、「アウェイ戦」が挙げられる。ホームスタジアムである「サンガスタジアム by KYOCERA」では開幕から9戦無敗(7勝2分)と強さを見せながら、アウェイ戦ではホームのような強気な姿勢を目撃することはできなかった。

アウェイ戦の戦績のみに注目すると、京都サンガは4勝7分10敗で勝ち点をたった19ポイントしか積み上げられず、J2リーグ全22クラブの中でもワースト3の記録にあたる。アウェイ戦だと当然のように相手に主導権を握られ、思い通りにプレーできない試合がほとんどだった。

また、エースであるピーター・ウタカへの依存度がシーズンが進むにつれて高まる一方だったことも課題と言えるだろう。2020シーズンにウタカが得点した22ゴールはJ2得点王に相応しい記録だが、徐々に相手に研究され始めるとウタカだけではゴールをこじ開けることに難しくなり、バリエーションに富んだ崩し方をすることに苦労した。J1昇格への道が絶たれることになったヴァンフォーレ甲府戦(11月25日)では、チームの主砲から放たれたシュートがことごとく守備陣にブロックされ、同点に追いつくまでがやっとといった試合だった。


チョウ・キジェ監督 写真提供:Gettyimages

禊を終えた指揮官の現場復帰でどうなる?

實好礼忠監督の退任が決まり、2021シーズンはチョウ・キジェ監督の就任が決定。チョウ監督は一時期浦和レッズの指揮官になる噂もあったが、地元である京都への帰還を渇望した格好だ。

2019年にパワハラ問題により湘南ベルマーレを去ることになったチョウ監督だったが、S級コーチライセンスの1年間停止処分が解けJリーグで再びキャリアをスタートさせることになる。実力はお墨付きであり、かつて率いた湘南ベルマーレでは、J2優勝、J1昇格、さらにはルヴァンカップ制覇など様々な功績を残し、是が非でもJ2を攻略したい京都サンガにとっては最適な人材と言えるはずだ。

そしてチョウ監督は京都サンガでも間違いなく「組織的な連動性」と「ハードワーク」を仕掛けることに精を出すだろう。これらはきっと京都サンガに欠けている一体感の醸成に一役することを期待している。

またチョウ監督からにじみ出る情熱はチームへ乗り移り勝負強さの一助になると考えている。異常なまでのボールへの執着で横浜Fマリノスに勝利を収めた2018シーズンのルヴァンカップ決勝や、世紀の大誤審に見舞われたものの諦めない気持ちで2点差から大逆転を果たした2019シーズンの浦和レッズ戦は、チョウ監督でなければ実現しなかっただろうと考える。

ただ京都サンガは監督に対して、短期間での結果を求めるといった致命的な課題を抱えている。J1昇格への焦りなのか、チームの成熟度に対するスピードが重要と考えているようだ。しかし、J1への切符を逃す度に監督を毎シーズンのように入れ替えるという荒療治には懐疑的な意見も少なくない。湘南ベルマーレで見られたようなチョウ監督の哲学を1年で浸透させるのも至難の業と考えるが、チョウ監督の招聘は長期的な成長曲線への投資でもあることをクラブは決して忘れてはならないだろう。


ピーター・ウタカ 写真提供:Gettyimages

2021シーズンのスカッドはどう変わる?

今年のシーズンオフ、京都サンガの強化部は多忙を極めていたに違いない。コロナ禍で思うような投資が見込めないクラブもある中で、京都サンガは積極的な補強に勤しんだクラブの1つだ。

チョウ監督が好む3-4-2-1のシステムから逆算し、MF選手層を厚くする補強が目立った印象だ。中でも浦和レッズから加入した武富孝介、湘南ベルマーレから加入した松田天馬、中川寛斗、さらには2020シーズンから京都サンガに加入している野田隆之介はチョウ監督と湘南ベルマーレで共にした過去もあり今回京都で再開を果たした格好だ。おそらく彼らをベースに中盤の構成を組み立てることになるだろう。そこにチームのブレインである庄司悦大や若手有望株である福岡慎平が順応できれば中盤での主導権を握れるはずだ。

気になる点は、前述したウタカ依存からどのように脱却果たすか。2020シーズン途中に期限付き移籍で京都サンガへ復帰を果たした仙頭啓矢も2021シーズンからサガン鳥栖へ拠点を移したこともあり、ウタカだけに頼らない新たな攻撃の一手を構築しなければならない。李忠成や宮吉拓実のコンディション次第ではあるが、裏への抜け出しに長ける荒木大吾をフォワードとして起用する手段も有効的だと考える。

J2に籍を置き10年以上が経過した。チョウ・キジェの哲学と新加入選手たちとの融合はJ1の舞台へと続く道を示してくれるのだろうか。

名前:秕タクオ

国籍:日本
趣味:サッカー、UNO、100均巡り

サッカー観戦が日課のしがないサラリーマンです。かれこれ人生の半分以上はサッカー観戦に明け暮れ、週末にはキルケニー片手にプレミアリーグやJリーグにかじりついています。

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