[3.10 第24回全日本選手権決勝 名古屋
6-0 立川・府中 駒沢屋内]
立川・府中アスレティックFCは、10日の第24回全日本フットサル選手権の決勝で、名古屋オーシャンズと対戦した。クラブにとって12年ぶりの決勝進出であり、日本一への期待も高まったが、結果は名古屋に0-6という完敗だった。
そこで現れた差は、どのようなものだったのか。試合後に元日本代表FP渡邉知晃に聞いた。
以下、決勝後の立川・府中FP渡邉知晃のコメント
――試合の感想をお願いします。
渡邉 完敗。プレーオフ準決勝の時は、前半でゲームが壊れた感じだったのですが、今回はゲームが壊れたわけではないのに完敗ですね。逆に気持ちいいくらいに負けた感じ。こういうことは、あんまりないんですよね。負けたら「マジ悔しい」とか、イライラしたりとかするのですが、終わった時に気持ちいいくらいの完敗で、もう清々しいというかね。イライラとか、悔しいというのを通り越して、「負けたな」という感じでした。言い訳もないですしね。
――それだけ名古屋が強かった。
渡邉 うん。逆に接戦で負けていたら、悔しかったでしょうね。でも、そういう感情が出せないくらいの差を見せつけられたから、本当に言い方が悪いけど、受け入れやすかったですね。受け入れるしかない結果だったかなと思います。
――今、「感情が出せないくらいの差」ってありましたが、名古屋との差をどこに感じましたか?
渡邉 名古屋には日本代表クラスの日本人選手ばかりで、素晴らしい日本人選手がたくさんいることが前提なのですが、おそらく名古屋の日本人選手は、ほかのクラブに行けば、長時間にわたって主力でプレーするでしょう。でも、そんな選手たちが出場時間を制限されたり、あんまり出られない選手がいます。それだけ代表クラスの選手たちなのに。もちろん、吉川(智貴)であったり、パッシャン(西谷良介)だったり、今日の試合だったら(星)龍太、安藤(良平)も日本人の中では出場していたと思いますが、そんな彼らであっても出場時間を得られないほど、強烈すぎる外国人助っ人が3人いるっていう印象が強いです。結局、点を入れられたのも、彼らだし、彼らの個の力にはがされて、それに対応できなくて決められたっていうシーンがほとんどでした。その彼ら3人のクオリティが、まず大きな差かなと思います。
――以前、リカルジーニョがいたので、それほど騒がれていないのかもしれませんが、歴代でもトップレベルの選手たちですよね。
渡邉 そう思いますね。リカルジーニョっていうのは、言わずもがなの世界ナンバーワンですが、歴代の外国人選手たちのなかでも、かなりクオリティの高い3人だったと思いますね。外国人にやられて、外国人に負けたとは思ってはいませんよ。彼らを支えているクオリティの高い日本人がいることでの外国人だから。でも、それを差し引いても、彼らの個の力は、やっぱり普通じゃないし、止められなかったわけですからね。
終わった後、関口(優志)と(斎藤)功一と話したのですが、あのプレーができる日本人って日本にいないんです。あのプレーを体感することが、普段の練習でもできない。それを試合でやられたときに、普段からあのレベルに接していないと、対応するのは難しいなと。もしかしたら普段からチーム内でやりあっている名古屋の選手であれば、何とか食い止められるかもしれないけど、それは毎日やっているから、彼らに対応する対応の仕方を学べると思う。そういう対応の仕方は、慣れで覚えると思うんですよね。ほかのクラブの選手は、普段、そのクオリティの選手と対峙していないし、他のクラブの選手は、日本人にあれだけのパワーと技術がある選手がいるわけではないから。それを急に試合で対応しようとしても、対応できないよねっていう話をしたんです。普段からやりあっていたら違うけど。そこの差は、感じたかな。
――そういう世界トップレベルが来ているっていうことですね。
渡邉 それは数字にも出ていますからね。ゴールランキングのトップ10に3人とも入っているわけですからね。
――来季も彼らは残るから、どう止めますか?
渡邉 どう止める(笑)? それは俺じゃなくて監督が決めることだから、監督の指示に従ってやります。でも、1枚だけでは止められないから、2枚とか、人数をかけるしかないですかね。
――名古屋をどう止めるかっていう話ですね。3冠を2年連続でやられていますから。
渡邉 それは、正直ね、分かっていたら、決勝でやりますよね(笑)。現状、それがわからないというか、誰も止められないから、無敗でリーグ優勝して3冠しているわけだから、策は思い当たりませんよ(笑)。思いついたら、誰かやっているでしょ。それに理屈じゃないし。人対人だから。こうやればいいという問題でもない。なにか、その時その時にどう対応するかだから。
――ほかのクラブも強烈な外国人を連れてきて慣れるしかない?
渡邉 それは一つですね。
――でも、彼らと同等クラスの選手たちを呼んでくる経済力は、なかなかないですね。
渡邉 それは難しいところですよね。
――もう一つ、ポイントとなったのが、前半終了間際の失点だと思うのですが、あれについては?
渡邉 映像を見返していないので、なんとなくは覚えていても、鮮明には覚えていないのですが、あそこもヴァルチーニョに個ではがされたんですよね。
――前半で壊れたプレーオフ準決勝があったから、0-1で慎重にいくかなと思ったんですよね。
渡邉 もちろん失点はゼロで残り1分を終わらせようというか、0-1のままで終わらせようというマインドはありましたよ。でも、名古屋の圧力もありますし、うちもボール保持ができなかった部分もあるので、マインドセットだけでは解決できない部分で、やられた感じです。
――先ほどの攻撃と同じで、守備でも日常の差が出たっていうことですね。
渡邉 うん。こっちはもう100%、120%のゲームをやらないと、名古屋に勝てる可能性が限りなく低いのは間違いありません。本当にゲームを通してミスをしないこと。このミスっていうのは、パスミスとかではなくて、攻撃の終わり方も、ディフェンスの仕方も、個人の対応の仕方も、すべてを含めて、ミスがほぼない100%のゲームをやって、初めて勝つ可能性が出るんじゃないかなというレベルにはあると思いますね。
――そうじゃないと、このレベルが上がっているなかで、無敗優勝はできませんね。
渡邉 うん。だって、現にうちもリーグは3位でしたからね。名古屋以外のチームには、全部勝っていますからね。決してリーグのなかで、レベルが低いチームではないはずなんだけど、名古屋とやるとこうなるのは、彼らのクオリティの高さが一つ、二つ上にあるのは間違いないでしょう。
――名古屋から点を奪う選手として聞きたいのですが、GK篠田龍馬選手とGK関口優志選手。どっちがゴールマウスを守っているのが嫌ですか?
渡邉 どっちも変わらないですね。こっちがいいとか、やだとかはないですね。同じくらいのレベルのGKだと思いますよ。
――関口選手は前に強いとか、篠田選手は安定感があるなど、そのスタイルでチームの守備も少し変わるのかなと思ったのですが。
渡邉 こっちがめちゃくちゃ多くのチャンスをつくっていたら、そこの差を感じるかもしれませんが、そもそもチャンスが少ないので、感じられないですね(苦笑)。どっちも同じくらいのクオリティだから、どっちも出てくるんだと思いますよ。
――なるほど。個人的には日本代表から約1年、離れていますが、ワールドカップ予選まであと1年。どう過ごしたいですか?
渡邉 特に気にはしていないですね。監督が決めることなので。
――最後にシーズンを終えてファンに一言。
渡邉 シーズンを通して応援ありがとうございました。プレーオフ、選手権の決勝とタイトルを獲る可能性があったの試合があったなかで、獲れなかったことは悔しさと申し訳ない気持ちが強いです。 ただ、最後のプレーオフの負け方、選手権決勝での大敗、この最後の終わり方がすごくインパクトの強いものだから、ネガティブなイメージをもってしまったかもしれません。しかし冷静に分析すれば、今季はベテランが抜けて若手が入り、若返りを図った難しいシーズンです。そのなかでチーム史上最高タイの3位になれて、プレーオフにも進出して、全日本でも12年ぶりに決勝まで進めました。1年間の過程と結果を見れば、最後の終わり方でネガティブになるほど悪いシーズンではなかったと思います。チームとしては非常に大きな成果と結果を得られたシーズンだったと思うので、収穫はゼロではありませんし、年間を通してみれば、最後はダメでも良いシーズンだったと思います。ただ、日本一になるには、まだまだ足りないことも明確です。そこは、個人としても、クラブとしても、全員でさらに上を目指していかないと、日本一になるのは難しいなと感じました。だから日本一を目指せるように、また来シーズンも応援をお願いします。
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