
FC岐阜:大島康明監督
期待度:★★★★☆
昨2024シーズン、FC岐阜では上野優作監督の解任により、ヘッドコーチから天野賢一前監督が昇格。終盤7戦を5勝2分で締め8位にまで押し上げたが、プレーオフ圏内に届かなかったことで、わずか3か月で退任となった(天野氏は2025シーズン、ツエーゲン金沢ヘッドコーチに就任)。
後を引き継いだのは大島康明監督だ。現役時代はヴィッセル神戸の下部組織出身のFWだったが、選手として開花したのは、当時JFLの大塚製薬。徳島ヴォルティスと名を変え、J2昇格を果たす原動力となった。大島監督は2002年から2009年まで在籍し、同クラブのJ初ゴールは彼から生まれた。
指導者としては2013年、古巣の徳島でキャリアをスタート。カターレ富山のコーチを経て、2017年に鹿児島ユナイテッドのコーチとして入閣している。2023シーズン、当時J3の鹿児島の監督にヘッドコーチから昇格。就任早々7戦無敗(5勝2分)の快進撃を演出し、2位でJ2昇格を果たした。翌2024シーズンのJ2では戦力不足もあり低迷、途中解任となった(19位でJ3降格)が、43歳という若さにしてJ2、J3を知り尽くしている指揮官だ。
岐阜は、昨季のチーム得点王のFW藤岡浩介を含む22人もの選手を放出した一方で、湘南ベルマーレからMF山田直輝、RB大宮アルディージャからMF泉澤仁、FC今治からGKセランテスといった即戦力を補強。柏レイソルから期限付き移籍で獲得したFWオウイエ・ウイリアムや、昨季のヴァンラーレ八戸のチーム得点王FW佐々木快、また大卒新人4人も含む13人も加わり、大幅な血の入れ替えを断行。サポーターに期待を抱かせる陣容となった。
鹿児島をJ2に導いた際にも、前評判は芳しくなかった中での昇格劇だった。岐阜で再び結果を出せば「新・昇格請負人」の称号を得られるだろう。大島新監督の手腕に注目だ。

高知ユナイテッド:秋田豊監督
期待度:★☆☆☆☆
2016年に創立され、四国リーグを4年、JFLを5年で駆け抜け、ついに悲願のJ入りを果たした高知ユナイテッド。2022シーズンから3季にわたって指揮を執り、昇格に導いた吉本岳史前監督(現アルビレックス新潟コーチ)を勇退させ、秋田豊新監督を迎えた新体制で挑む選択をした。
秋田監督は、2024シーズンまで岩手グルージャ盛岡のオーナー兼社長を務め、ファンサービスも買って出る“名物社長”としてサポーターには人気だった。
しかし、指揮官としての実績となると、その手腕には疑問が残る。2010シーズン途中に監督に就任した京都サンガでは、就任後2勝3分14敗という散々な成績で、チームはJ2に降格。1年半契約だったにも関わらず、わずか半年で解任された。
次に監督を務めたのは2013シーズン、当時JFLの町田ゼルビアでも半年と持たずに解任。捲土重来を期して挑んだ盛岡では2021シーズン、J3で2位となりJ2昇格を果たすが、翌2022シーズンのJ2ではぶっちぎりの最下位で降格してしまう。これを機に監督業から離れ、オーナー兼社長業に転じた経緯がある。
実業家としての顔(株式会社サンクト・ジャパン社長)も持つため、盛岡を後にしサッカー界から離れたのかと思いきや、J初参入クラブの監督というオファーが魅力的に感じたのか、再び監督業に身を投じる決意をしたようだ。
盛岡時代の右腕だった神野卓哉氏をヘッドコーチに迎えたものの、戦力的には不足しており、高知はJ3残留が現実的な目標となるだろう。歯車が狂えば、JFL降格、あるいは今度は追われる側の立場での入れ替え戦出場もあり得る。

鹿児島ユナイテッド:相馬直樹監督
期待度:★☆☆☆☆
「監督兼GM」という肩書で成功した例はJ史上、未だにない。2016シーズン名古屋グランパスの小倉隆史監督、2021シーズンカマタマーレ讃岐の上野山信行監督、そして昨2024シーズンいわてグルージャ盛岡の神野卓哉監督が挙げられる。このジンクスに挑もうとしているのが、昨2024シーズン、たった1年でJ2から再降格した鹿児島ユナイテッドの新指揮官、相馬直樹監督だ。
日本代表の左サイドバックとして1998年のフランスW杯に出場するなど選手としての実績は申し分ないが、監督歴は挫折の連続だった相馬監督。現役最後のクラブである川崎フロンターレの下部組織で指導者キャリアをスタートさせ、2010シーズン、当時JFLの町田ゼルビア監督に就任し3位に入ったが、J2昇格基準を満たせず、J昇格できずに退任した。
2011シーズンには川崎の監督に就任するも、クラブのJ1昇格以降初となる2桁順位の11位に終わり、2012シーズンも低迷し途中解任。2014シーズンからJ3の町田の監督に復帰し、2015シーズンには2位で大分トリニータとの入れ替え戦の末、J2昇格を果たす。通算7シーズンにもわたり町田の監督を務め、これは同クラブの最長記録だ。これが相馬氏が監督として、もっとも輝いた時期だった。
2021シーズンには古巣の鹿島アントラーズ、2022シーズンには大宮アルディージャの監督に就任するが、いずれも前任者の解任によるもの。大宮に至っては2023シーズン、クラブ初のJ3降格という憂き目に遭ってしまった。
鹿児島の上層部はどういった基準で監督選びをしているのか疑問が残る。前任の浅野哲也前監督時についても、6年ものブランクがあり、セミリタイア状態にあった同氏を呼び戻した上、J3に降格してしまっている。
実績の乏しい指揮官に監督兼GMという重責を背負わせることはリスクしかないが、このオファーを受けた相馬監督の覚悟は相当なものだ。鹿児島は23人もの選手を放出や引退により失い、新加入選手は20代前半の若手が中心だ。FWアンジェロッティ、MFジョアオ、DFヘナンのブラジル人3選手の活躍がチームの浮沈のカギを握るだろう。

FC琉球:平川忠亮監督
期待度:★★★☆☆
昨2024シーズンまでFC琉球を率いた金鍾成前監督は、北朝鮮代表としてプレーしていたが当時のハンス・オフト日本代表監督(1992-1993)の目に留まったことで、ジュビロ磐田でプロデビューしたJ初の北朝鮮国籍選手だった。「とにかく攻撃!」のサッカースタイルの指揮官だったが、結果が伴わずに昨季限りで退任となった。
後任として選ばれたのは、浦和レッズ一筋18年の現役生活を送り、引退後は浦和のトップチームやユースのコーチや監督を歴任していた平川忠亮監督だ。2023シーズンからJ3でも苦戦を強いられている琉球の立て直しを託された格好だ。オファーした琉球にとっても、そのオファーを受けた平川監督にとっても勇気の要る決断だっただろう。
日本を代表するサッカーどころの静岡で生まれ育ち、J随一のクラブ規模とサポーターを持つ浦和で現役生活を全うした平川監督にとっては、全てにおいて新たな発見があると思われる。当然ながら琉球は浦和のような補強など望むべくもない。強化担当はJ1で出番を失っている若手にターゲットを絞って、レンタル移籍によって補強を図った印象だ。
現役時代からサッカーIQの高さとポリバレントさが売りだった平川監督。いずれは浦和を率いることになるのだろうが、まずは沖縄の地でJ3に旋風を巻き起こしたいところだ。
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