
2024シーズンの明治安田Jリーグは全日程が終了し、12月10日のJリーグアウォーズでは、最優秀選手賞(ヴィッセル神戸FW武藤嘉紀)、優秀監督賞(サンフレッチェ広島ミヒャエル・スキッベ監督)、ベストイレブンなどが決定し、それぞれ表彰された。
10シーズンぶりとなる3チームによる最終節でのJ1優勝争いで盛り上がったが、サポーターの間では様々な「新語」が生まれ、SNSを中心に流行した。そこで、2024シーズンのJリーグで生まれた「新語・流行語」を紹介したい。

「禊は終了しました」鹿島アントラーズFW鈴木優磨
2024シーズン15得点を挙げた鹿島アントラーズのエース、FW鈴木優磨。この言葉が飛び出したのは、11月30日、第37節セレッソ大阪戦(ヨドコウ桜スタジアム/2-0)で快勝した後のヒーローインタビューだ。
鈴木は、11月9日に行われた第36節のホーム名古屋グランパス戦(カシマサッカースタジアム/0-0)で後半13分にキャリア初の一発退場となり、翌週に行われた延期分の第29節京都サンガ戦は出場停止。この試合が復帰戦だった。ちなみにこの退場処分に抗議した中後雅喜監督も警告を受け、“巻き添え”にしてしまっている。
闘志剥き出しのプレースタイルから誤解されがちな選手だが、鹿島愛は人一倍強い鈴木。さすがにこの出場停止処分には反省したのかと思いきや、このC大阪戦でも警告を受けている。しかしながら、前半14分に、MF柴崎岳がゴール前にふわりと上げたフィードを左足ダイレクトボレーで合わせて逆サイドネットに突き刺す美しいゴールを披露。
試合後のインタビューでは、勝ったにも関わらず当初は不機嫌そうな“塩対応”を見せていたのだが、出場停止明けだったことを問われると、「非常に反省しましたし、今日、点を取って勝たせたら禊が終わりだと思っていたので、やっと禊が終わったってハッキリ言えます」と答え、さらに「はい。禊は終了しました」と繰り返した。
インタビュアーから「大きな声でもう1回言っておきますか?」と“アンコール”をリクエストされると、鈴木は笑みを湛えながらカメラ目線で「禊は、終了しました」と口にすると同時に頭を下げた。怖いイメージを自ら払拭する“神対応”にSNSは沸き、「イメージが変わった」「何回聞いても面白い」「可愛すぎるなぁ」といった好意的な反応で埋め尽くされた。
副キャプテンとして、チームを背中で引っ張る鈴木。2025シーズンも得点のみならず、そのコメントにも注目だ。

「水かけPK」町田ゼルビアFW藤尾翔太
町田ゼルビアFW藤尾翔太がPK獲得時にルーティンとしていたボールへの水かけ行為。議論を呼んだのは8月17日、第27節ジュビロ磐田戦(町田GIONスタジアム/4-0で勝利)で藤尾がPKの前にボトルの水をボールにかけた行為に対し、高崎航地主審が濡れたボールを交換したことがきっかけだった。
この判断に、町田イレブンは主審を取り囲んで猛抗議。この事案は審判委員会でも議題に挙がり、同委員会は高崎主審の判断を支持した。競技規則には水かけ行為を禁止する条文はないが、審判委員会は「フェアで安全にという競技の精神を基に今後も主審がジャッジしていく」という方針を示した。
藤尾は『AbemaTV』で配信されている町田のドキュメント番組で「過去に乾いた芝の上で蹴ったPKが失敗に終わったことから始めた」と告白し、濡らしたかったのはボールそのものではなく芝だったという意図を明かした。しかし、”ルールで禁じられていないなら何をしてもいい”とも読み取れる行為は、ロングスロー時のタオル使用同様、他クラブのサポーターから「アンフェアなチーム」と受け取られ、当時既にダーティーイメージが染み着いていた町田の印象をさらに悪化させることに繋がった。

「税リーグ」(日本経済新聞および村井満Jリーグ前チェアマン)
いかにも“ネット用語”であるようにも思えるJリーグへの揶揄用語だが、この言葉の発端は、Jリーグ前チェアマン村井満氏への日経新聞のインタビュー記事だ。
村井氏がJクラブを持つ自治体を訪れた際、「君たちは“ゼイリーグ”だ。どれだけ税金を使うんだ」となじられ続け、その度に頭を下げたと言い、さらに追い打ちをかけるかのように、「Jリーグと関わると抜けられない。悪質商法みたいだ」と、酷い言葉を投げ付けられたと述懐している。
税金をJリーグに使わせられた自治体が、当時の村井チェアマンをなじった言葉なのだが、いつしか言葉だけが独り歩きし、特にJリーグのアンチ(プロ野球ファンや、欧州サッカーしか見ないファン層)がJリーグを腐す際に多用されることになる。
Jリーグクラブを持つということは、自ずとスタジアム建設や改修、交通網などのインフラ整備など、地域社会を巻き込んでいる。特にスタジアムが自治体の税金による支援を受けていることに由来した言葉だが、そこに地域の活性化や一体感といった金額換算できないメリットや、アウェイサポーターの来訪による経済効果は一切考慮されていない。
村井氏はこれに対し『週刊経営財務』でのインタビューで、下記のように述べている。
「企業会計的な価値で測られた場合、Jクラブは簿価ベースでの資産が潤沢にあるわけでもなく、恒常的赤字ではないにせよ、利益を生まない存在に見えてしまう。今後は、Jクラブがいかに社会にとってかけがえのない存在であり、どれだけ大きな価値を持っているかというところを世の中に伝えていく作業が非常に大きなテーマになる」
「特に、Jリーグの場合は大きなスタジアムが必要なので、行政などに協力を仰ぎながら、公共交通機関の整備も必要。スタジアムや練習場の整備に、時には税金を投入するようなこともあるかもしれない。そういう意味では、Jリーグの価値の可視化をどこまで進めていくことが大きな課題」
村井氏は、Jリーグは金銭的に大きな価値がないことを認めた上で、「Jリーグ=文化」として理解されようと、陰ながら努力していた。しかしながら、税金の使い方に対し、納税者から厳しい目が注がれる昨今、せめてクラブが単体黒字を出さない限り、地方にとっては“不良債権”呼ばわりされることは避けられない。これはJ全60クラブに課せられた課題といえそうだ。
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