ワールドカップ Jリーグ

北中米W杯から学ぶスタジアム経営の教訓「こうして税金依存を脱却せよ」

SoFiスタジアム 写真:アフロスポーツ

日本時間7月20日に閉幕したFIFAワールドカップ(W杯)北中米大会は、アメリカ11会場、カナダ2会場、メキシコ3会場の計16会場で開催された。2022年のカタール大会が大部分を新設したのに対し、本大会は既存のサッカー専用スタジアムやNFL(アメリカンフットボール)施設を最小限の改修で活用した点が最大の特徴だ。このアプローチは、巨額の建設・維持費が課題となっている日本のスタジアム整備に貴重な示唆を与える。

ここでは、北中米W杯会場の所有形態、資金負担、維持費、稼働率、多目的利用の実態を整理し、日本が参考にすべき点を考察する。鍵は民間主導の建設、コンサートなど他用途との組み合わせによる収益確保、長期的な維持費削減にある。Jクラブや自治体の財政負担を軽減し、持続可能な施設を実現するための教訓を得ることが目的だ。


MUFGスタジアム(国立競技場)写真:アフロスポーツ

北中米W杯16会場が示したもの:既存施設フル活用

大会で使用された全会場が既存施設だった点が最大の特徴だった北中米W杯。アメリカでは全11会場が、NFLチームの本拠地であるアメフト場にロールアウト型天然芝の敷設などを施し、FIFA基準に合わせた最小限の改修で活用した。カナダ・メキシコも主に既存施設を使用したが、公的所有・公的資金の比率が高い傾向が見られた。

日本では、東京五輪のために建て替えられた国立競技場の建設費は約1,569億円。維持管理費は年間約18億円前後と高額でその多くが公費負担となっている。一方、Jリーグのサッカー専用スタジアムは、建設費が概ね100~150億円規模で、原資は主に自治体の負担であり、税金に依存している構造だ。建設費調達の他の方法としては、企業版ふるさと納税や寄付を利用した例もある。

北中米W杯のモデルは、大会後の「負の遺産化」を避ける多目的利用と資金負担の分散という点で参考になる。2022年のカタール大会は8会場(新設7+改修1)を使用したが、大会後に解体される予定のスタジアム974(974個の輸送用コンテナとして再利用する計画だが、未だ実現していない)を除けば、大会後の稼働率は限定的で、オイルマネー頼みの設備維持が続いているとされる。


SoFiスタジアム 写真:アフロスポーツ

建設費は誰が負担するのか:民間主導という選択肢

北中米W杯で最も高額だったのは、カリフォルニア州イングルウッドのSoFiスタジアム(約50~55億ドル)だ。民間企業(クローンケ・スポーツ&エンターテイメント)が実質全額負担した。このスタジアムはNFL2チームの本拠地に加え、コンサート会場としても機能し、第61回NFLスーパーボウル(2027年2月14日)の開催も決まっているほか、2028年ロサンゼルス五輪でも開会式と競泳会場として使用予定である。メットライフ・スタジアム(ニュージャージー)やジレット・スタジアム(フォックスボロ)も、土地・インフラ面で一部公的支援はあるが、民間主導で建設された。

なぜこのような運用が可能なのか。NFLのシーズンは全32チームで9月に開幕し、2月中旬のスーパーボウルまで続くが、レギュラーシーズンのホームゲームは8試合か9試合(隔年で変動)と少なく、プレシーズンやポストシーズンを含めてもホームで戦えるのは最大15試合程度だ。それでも数万人の観客動員が見込めるため巨大スタジアムにならざるを得ない。「NFLだけでは採算が合わない」という前提の下、多目的利用を想定して造られている。

実際、AT&Tスタジアム(ダラス)では、日本代表がオランダ代表と戦ったグループステージの後も大会を通じて天然芝が維持され、準決勝(スペイン対フランス)終了後すぐに特設天然芝を剥がして元の人工芝や多目的仕様へ戻す原状復帰工事が始まった。

同スタジアムはNFL開幕への準備はもちろん、その前の8月15日にはBTS(韓国出身のボーイズグループ)のワールドツアー公演、8月22日にはザック・ブライアン(シンガーソングライター)のライブが控えている。W杯の思い出に浸っている暇などないのだ。しかも、決勝会場のメットライフ・スタジアムで使用された天然芝は剝がされた後、450ドル(約7万3,000円)で販売されるという。ここまで来ると、FIFAの商魂のたくましさを感じさせる。

一方、公費依存が高いNRGスタジアム(ヒューストン)やBCプレイス・スタジアム(バンクーバー)では税負担が課題となっている。

日本では、ガンバ大阪の本拠地であるパナソニックスタジアム吹田の事例が参考になる。建設費約140億円の大半を企業・個人寄付で賄い、指定管理者として運営。隣接する「ららぽーとEXPOCITY」との複合開発で賑わいを創出している。アメリカのように「エンターテインメント複合施設」のハブとして位置づける発想が重要だ。日本では新スタジアム計画が持ち上がると「どこに造るか」が先行しがちで、「一から街を造る」視点が不足しているのではないだろうか。「駅近」「街なか」というワードが出てくる時点で、立地選定が先行し、施設自体で集客を創出する視点が弱い印象を受ける。

提言としては、総事業費の50%以上を民間資金(寄付、命名権、官民連携)で賄うことを目標に設定したい。自治体は土地提供・税制優遇に留め、150億円規模の場合、目標として民間負担100億円以上で自治体負担を50億円以内に抑える。これにより公金依存批判を緩和できる。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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