
2025シーズンのJ1リーグが中盤戦に差し掛かろうとしている。各クラブの目標と現実が徐々に乖離し始め、サポーターの期待と不安がスタジアムの空気を支配する季節でもある。それは、取りも直さず「監督解任」という名の劇薬が投じられることを意味する。
その口火を切ったのは横浜F・マリノスだった。横浜FMは2023シーズンにケビン・マスカット監督(現上海海港)の下でJ1リーグ2位という好成績を残したが、2024シーズン後任のハリー・キューウェル監督体制は不安定で7月に解任。ジョン・ハッチンソン暫定監督を挟んで、スティーブ・ホランド監督が就任するも、今2025シーズン第12節清水エスパルス戦(日産スタジアム/2-3)後に解任。ヘッドコーチだったパトリック・キスノーボ氏が新監督に就任した。
今シーズン降格するクラブは、昇降格のない2026年春の「0.5シーズン」を挟み、秋春制が導入される2026/27シーズンまでJ2での戦いを強いられる。ここでは、近年稀にみる大混戦にある現在のJ1の状況を鑑み、明確に結果が出ておらず降格圏が現実的な脅威となっている5クラブの監督に注目し、監督交代の可能性を検証していきたい。

FC東京:松橋力蔵監督
FC東京はJ1第19節終了時点で勝ち点19の18位と降格圏にいる。2025シーズン序盤から安定したパフォーマンスを見せられず、攻撃力不足が顕著だ。守備組織は一定の評価を与えられるが、得点力の低さが問題となっており、勝利につなげられていない。
松橋力蔵監督は、アルビレックス新潟で攻撃的なパスサッカーを披露し、今シーズンを前に迎え入れられたが結果が伴っていない。ファンからは戦術の柔軟性不足を指摘する声も上がっており、そもそも松橋監督の志向するサッカーと選手のタイプが乖離しているという声もある。
もし後半戦で連敗が続くならば、クラブは監督交代に踏み切る可能性が高い。特に、FC東京は首都圏のクラブとして注目度が高く、成績不振に対するプレッシャーが大きい。その場合、後任候補としては、従来のFC東京の持ち味だったカウンター戦術を得意とする指揮官が招聘されるだろう。

横浜FC:四方田修平監督
横浜FCはJ1で現時点17位(勝ち点19)と、こちらも降格圏に近い。何しろコロナ禍によって降格がなかった2020シーズン(15位)を除けば、J1に残留したことのない典型的なエレベータークラブだ。第19節終了時点で得点はリーグワーストタイの「13」。若手選手が次から次へと活躍するのが同クラブの特長だが、今シーズンはその様子も見えない。
かつての横浜FCは監督交代を繰り返すクラブだったが、現在の四方田修平監督はJ2時代の2022シーズンに就任し、5年目を戦っている。1年でJ1に復帰させた後、降格と昇格を繰り返しており、今シーズン仮に降格となれば実に“2往復目”となる。
堅実なサッカーを志向する四方田監督。選手層の薄さといった監督の責任以外の部分で苦戦を強いられているのは不憫ではあるが、長期政権によるマンネリ化も指摘され始めており、大ナタが振り下ろされる可能性も低くないだろう。問題は後任監督だが、失点は少ないだけに、攻撃力アップを期待できるベテラン監督が求められるだろう。
一方、ルヴァン杯プレーオフラウンドでは、セレッソ大阪を相手に第1戦(6月4日)を1-4で落としながらも、ホームの第2戦(6月8日4-0)で奇跡的な逆転勝利(2戦合計5-4)を収めた横浜FC。この勢いがリーグ戦にも生かされれば言うことはないが、まずは残留争いからの脱却が急務であるため、夏の移籍市場で補強が必須だ。

湘南ベルマーレ:山口智監督
2018シーズンにJ1に復帰して以来、毎年のように残留争いをしている湘南ベルマーレ。現在は、降格ラインから勝ち点差3の16位に位置しており“危険水域”にいる。
攻撃的なスタイルを志向し、開幕3連勝で一時は首位に立ったが急失速。開幕3戦で5得点を記録したものの、その後のリーグ戦で複数得点を挙げた試合はわずかに「2」。守備の脆さが露呈し、大量失点の試合が増えている。ファンからは「湘南らしいサッカー」の復活を求める声が強いが、結果が出ていない現状ではプレッシャーが高まっている。
2021シーズン途中から就任した山口智監督は湘南のOBではないが、「J1残留」というミッションをクリアし続けていることに対しサポーターからも一定の評価を受けている上、若手選手の起用にも積極的だ。一方で、“反対派”からは「戦術が時代遅れ」といった意見も。まだ3連敗したことはないが、大型連敗を喫した場合、クラブは難しい決断を迫られるだろう。
湘南はクラブ予算の制約から、シーズン途中の監督交代には慎重だ。しかし夏場以降に降格圏が現実味を帯びてくるとなれば、監督交代の可能性が高まる。後任には「湘南スタイル」を理解しつつ、しぶとく勝ち点を重ねられる監督が適任だろう。
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