Jリーグ

監督交代が多いJ1クラブ5傑。そろそろ首筋が寒い?

柏レイソル(左)京都サンガ(右)写真:Getty Images

横浜F・マリノスはAFCチャンピオンズリーグエリート準々決勝で、4月26日にサウジアラビアのアル・ナスルと対戦(プリンス・アブドゥラー・アル・ファイサル・スタジアム)し、1-4で敗退した。

4月18日に就任1年目のスティーブ・ホーランド監督を解任したばかりの横浜FM。暫定的にパトリック・キスノーボ氏が指揮を執っているが、これで監督交代後も2戦2敗。いわゆる“解任ブースト”も効かずにJ1リーグでは最下位に沈んでいる。

横浜FMのシーズン途中の監督交代は2年連続だ。かつて浦和レッズのテクニカルダイレクター(TD)を務め(2019-2024)、2024年にシティ・フットボール・グループ入りし、今年から横浜FMのスポーティングダイレクター(SD)に就任した西野努氏はいきなり試練に直面している。昨2024シーズン途中に解任されたハリー・キューウェル元監督、そしてホーランド前監督とトップリーグの監督としての実績がない指揮官にチームを託し、低迷を招いたフロントの責任も問われてしかるべきだろう。

今2025シーズン、リーグ戦も約3分の1を消化し、J1・J2・J3全てのカテゴリーが混戦状態だ。下位に低迷するクラブもまだ浮上の余地があることで、監督交代は横浜FMのみだが、この先浮上のきっかけが掴めないとなれば大ナタが振るわれるケースもあるだろう。

特に今シーズンで降格してしまうと、来季に予定されている昇降格のない「0.5シーズン」を挟み、秋春制が導入される2026/27シーズンまで下部リーグで戦わなければならなくなる。それだけは避けたいクラブが夏以降、監督交代に踏み切る事態が続出することも十分に考えられる。

ここでは、現在J1に所属するクラブで、Jリーグ参入以来監督をコロコロと変えた過去を持つクラブを挙げ、その“暗黒の歴史”を紹介したい。


ヴィッセル神戸 写真:Getty Images

ヴィッセル神戸(1997シーズン以降のべ32人)

クラブが創設され、初練習当日の朝、阪神・淡路大震災に見舞われるという不運から始まったヴィッセル神戸。震災の影響で運営会社の筆頭株主だったダイエーが撤退する一方、チームは当時デンマーク代表FWミカエル・ラウドルップの活躍もあり、1997シーズンにJリーグに参入する。

しかし経営は苦しく、2003年に運営会社が東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請。クラブは存続の危機に立たされると、2004年に楽天CEOの三木谷浩史氏が買収し、解散は何とか免れた。

2度のJ2降格を経験しながらも着実に実力を付け、いまや強豪クラブの1つに数えられるまでになったが、三木谷社長就任以降短期間での監督交代に拍車が掛かり、何とのべ32人。その平均任期は約0.93年と1年にも満たない。

シーズン途中での交代も最多23回にも上る。最初の9年間では7人、シーズン途中の交代が3回だった一方、三木谷氏が買収した2004シーズン以降の18年半でのべ25人、シーズン途中の交代が20回に激増している。

2018年、バルセロナから元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(2018-2023)を獲得したのを皮切りに、元スペイン代表FWダビド・ビジャ(2019)、MFセルジ・サンペール(2019-2023)、FWボージャン・クルキッチ(2021-2022)、DFトーマス・フェルメーレン(2019-2021)と、次々と元バルセロナ所属選手を獲得。フアン・マヌエル・リージョ監督(2018-2019)の下、“バルサ化”を目指したかと思ったら、成績不振によって方針変更を余儀なくされ、監督人事は迷走に次ぐ迷走を続けた。

皮肉なことに成績が上向いたのは、3度目の就任となる吉田孝行現監督がバルサ化を捨て、欧州を経験したFW大迫勇也やFW武藤嘉紀らを中心とするチーム作りをしてからのこと。その土台作りをした監督もまた日本人の三浦淳寛監督(2020-2022)だった。

三木谷氏は、オーナーを務めるプロ野球・楽天ゴールデンイーグルスでも監督交代を繰り返す。“カネは出すが口も出す”オーナーの典型とあって、昨季J1連覇を果たした吉田監督も、今季の成績次第ではあっさりと更迭される可能性もあるだろう。


セレッソ大阪 写真:Getty Images

セレッソ大阪(1995シーズン以降のべ28人)

今季オーストラリア人指揮官のアーサー・パパス新監督を迎えたセレッソ大阪も、監督交代の多いクラブだ。2017シーズン以降J1に定着しているが、それ以前は降格と昇格を繰り返す“エレベータークラブ”だったことも要因だろう。

1995シーズンのJリーグ参入以来、パパス監督で28人目。シーズン途中の監督交代も11度を数える。加えて、レヴィー・クルピ監督は3度も就任している(1997、2007–2011、2012–2013)。さらにクルピ監督は宿敵ガンバ大阪の監督も務めた(2021)唯一の指揮官でもある。

2021シーズン途中から就任した小菊昭雄監督(現サガン鳥栖監督)を勇退させた上でパパス監督を招聘し、タイトル奪取を目指し攻撃サッカーを志向したものの、フタを開ければ降格圏もチラつく順位(現時点15位)とあって、またもや“監督ガチャ”の時代に戻ってしまう危険性がある。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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