セリエA

ラツィオが突いたアタランタの隙。サッリ仕込みのパスワークの体現者は【試合分析】

ラツィオ マウリツィオ・サッリ監督 写真:Getty Images

2022/23シーズンのセリエA第11節が10月24日(日本時間)に行われ、同リーグ2位のアタランタと5位ラツィオが対戦。

前半10分に、ラツィオの左ウイングFWマッティア・ザッカーニが右ウイングFWペドロ・ロドリゲスのクロスに左足で合わせ、先制ゴールを奪取。後半7分にも、FWフェリペ・アンデルソンがペナルティアーク内からのシュートで追加点を挙げ、ラツィオが2-0で勝利している。

アタランタの激しいボディコンタクトを伴う守備を攻略してみせたラツィオ。同クラブが突いたアタランタの隙とは何か。ここではこの点について分析する。


セリエA第11節、アタランタvsラツィオのスターティングメンバー

守備隊形をセットしきれなかったアタランタ

マリオ・パシャリッチをトップ下に、アデモラ・ルックマンとルイス・ムリエルを2トップに置く[3-4-1-2]の布陣でこの試合に臨んだアタランタは、マンツーマン守備を主体とするハイプレスで、ラツィオの自陣後方からのパスワークに対抗。

基本布陣[4-1-2-3]のラツィオの中盤の底、ダニーロ・カタルディにパシャリッチが張り付いたほか、自陣後方でボールを受けようとするマティアス・ベシーノにはインサイドハーフのマルテン・デ・ローンが、ザッカーニに対してはカレブ・オコリが最終ラインから飛び出して密着マーク。敵陣と自陣を行き来するセルゲイ・ミリンコビッチ・サビッチに対しては、左センターバックのジョルジョ・スカルビーニとインサイドハーフのトゥーン・コープマイネルスが適宜マークを受け渡す守備戦術を採っていた。

ハイプレスでのボール奪取が難しい局面では、素早い帰陣で[5-3-2]の隊形をセット。このメリハリのある守備が今シーズンのアタランタの躍進の要因だが、今節では試合開始早々に綻びが生じてしまう。

前半8分50秒すぎに、右ウイングバックのブランドン・ソッピーと、右サイドに降りてきたルックマンとのパス交換が失敗に終わる。アタランタの面々が急いで守備隊形を整えたが、ソッピーの帰陣がやや遅く、これによって生まれた右サイドのスペースへの侵入をザッカーニに許す形に。ラツィオの先取点は、ソッピーよりも速くアタランタのゴール前に走り込んだ27歳のイタリア人FWによってもたらされた。

ラツィオ FWペドロ・ロドリゲス 写真:Getty Images

ぽっかりと空いたサイドのスペースを見逃さなかったザッカーニも然ることながら、アタランタの最終ラインと中盤の間でテンポ良くボールを捌いたアンデルソンとペドロも称えられるべきだろう。3トップが相手最終ラインと中盤の間に立ち、守備隊形をかく乱。これがマウリツィオ・サッリ監督仕込みのパスサッカーの要諦であり、ペドロやアンデルソンはまさにサッリズモ(sarrismo)の体現者だ。

最終ラインから飛び出したメリフ・デミラルとスカルビーニの寄せに動じなかったアンデルソンとペドロの好プレーで、前半9分すぎよりラツィオの右サイド(アタランタの左サイド)からの攻撃がスタート。

ミリンコビッチ・サビッチ、右サイドバックのマヌエル・ラッザリの順でパスが繋がると、アンデルソンが同サイドに流れ、スカルビーニを大外に誘い出す。右のハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)にポジションをとっていたペドロもデミラルを最終ラインから釣り出すと、このトルコ人DFの背後へ走り込み、ラッザリからのパスを受ける。この直後のペドロのクロスが、ザッカーニのゴールに直結している。サッリ監督が率いているチームならではの、流麗なパスワークだった。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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