セリエA ナポリ

モウリーニョの策略を凌駕。ローマを苦しめたナポリの主将【セリエA試合分析】

ジョバンニ・ディ・ロレンツォ(左)タミー・アブラハム(右)写真:Getty Images

2022/23シーズンのセリエA第11節が10月24日(日本時間)に行われ、ローマとナポリが対戦。

後半35分に、途中出場のFWマッテオ・ポリターノからのロングパスを受けたFWビクター・オシムヘンがペナルティエリア内で右足を振り抜き、先制ゴールをゲット。この1点を守りきったナポリが1-0で勝利している。

ローマの粘り強い守備に苦しめられながらも、勝ち点3をもぎ取ったナポリ。ローマを率いるジョゼ・モウリーニョ監督がどのような対策を施し、これにナポリがどう抗ったのか。まずはこの点について言及する。


セリエA第11節、ローマvsナポリのスターティングメンバー

モウリーニョが施したナポリ対策とは

ロレンツォ・ペッレグリーニをトップ下に置く[3-4-1-2]の布陣でこの試合に臨んだローマは、ナポリのパスワークのキーマンをマンツーマン守備で捕捉。

ナポリの基本布陣は[4-1-2-3]で、中盤の底のスタニスラフ・ロボツカやインサイドハーフのタンギ・エンドンベレを起点に自陣後方からのパスワークを試みたが、前者にはペッレグリーニ、後者にはマディ・カマラが張り付き、自由を与えず。昨シーズンのリーグ戦でもモウリーニョ監督はナポリのビルドアップの起点となる選手にマンマークを割り振っており、この守備戦術を今節でも用いた。

タミー・アブラハム 写真:Getty Images

前半8分すぎには、センターサークル内でカマラがエンドンベレからボールを奪い、敵陣ゴール前までドリブル。カマラのパスを受けたタミー・アブラハムがペナルティエリア左隅から惜しいシュートを放っている。モウリーニョ監督仕込みのマンツーマン守備の効果があらわれた場面だっただけに、ローマとしては先取点に結びつけたかった。

ロボツカやエンドンベレを経由するパスワークを封じられたナポリを救ったのは、右サイドバックの主将ジョバンニ・ディ・ロレンツォ。タッチライン際だけでなく、時折ハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)近辺にポジションをとり、対面のレオナルド・スピナッツォーラに捕捉されないようにしていたほか、正確なロングパスで攻撃の起点に。前半26分すぎにはこのイタリア人DFからのロングパスが最前線のオシムヘンに繋がり、最終的にはピオトル・ジエリンスキが強烈なミドルシュートを放っている。

ナポリ DFジョバンニ・ディ・ロレンツォ 写真:Getty Images

特に前半はディ・ロレンツォに対するスピナッツォーラのプレスが緩い場面が見受けられ、故にローマはナポリの攻撃を止めきれず。ディ・ロレンツォが内側にポジションをとった際に、ローマのどの選手が対応するのかも不明瞭だった。

ナポリの先制ゴールも、もとを辿ればディ・ロレンツォが自陣後方でパスを捌き、このボールがポリターノに繋がったことで生まれたもの。ここでもローマの選手のプレッシングが遅れており、前述の問題が尾を引く形となった。

今シーズンよりナポリの主将を務めている29歳のイタリア人DFの配球力が活きた場面でもあり、同選手がローマ撃破に大きく貢献したのは確かだろう。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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