セリエA

ミランが見せつけた周到なプレス。ユーベに足りなかったあと一手【セリエA試合分析】

レオナルド・ボヌッチ(左)ブラヒム・ディアス(右)写真:Getty Images

2022/23シーズンのセリエA第9節が10月9日(日本時間)に行われ、ミランとユベントスが対戦。

前半アディショナルタイムに、ミランのDFフィカヨ・トモリがコーナーキックから先制ゴールを挙げると、後半9分にはセンターサークル内でボールを奪ったMFブラヒム・ディアスが独力で攻め上がり、追加点をゲット。その後もユベントスの攻撃を抑え込んだミランが2-0で勝利している。

GKマイク・メニャンやDFダビデ・カラブリア、及びMFアレクシス・サレマーカーズらを負傷で欠いたミラン。苦しい台所事情のなかで、いかにユベントスに太刀打ちしたのか。また、ユベントスがどのような攻撃でミラン陣営に揺さぶりをかけたのか。まずはこの2点から試合を分析する。


セリエA第9節、ミランVSユベントスのスターティングメンバー

互いの思惑が交錯した前半

キックオフ直後から、ミランのMFトンマーゾ・ポベガがユベントスのMFマヌエル・ロカテッリを、サンドロ・トナーリが相手MFアドリアン・ラビオをマンツーマン気味に捕捉。[4-2-3-1]の布陣をベースとしながらも、ポベガとトナーリが前に出る[4-1-2-3]の守備隊形も織り交ぜ、ユベントスの自陣後方からのパスワークを封じにかかった。

基本布陣[4-4-2]の2ボランチが徹底マークに遭ったことを受け、ユベントスの右サイドハーフ、フアン・クアドラードが自サイドのハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)を上下動したほか、ドゥシャン・ブラホビッチとアルカディウシュ・ミリクの2トップの片割れが中盤に降りてパスレシーブ。この3選手を経由するパスワークでリズムを掴んだユベントスが何度か敵陣までボールを運んだほか、前半8分10秒にはロカテッリが敵陣でトナーリとの空中戦に勝ち、ボール奪取。ここからユベントスのショートカウンターが始まり、最終的にはクアドラードが惜しいシュートを放っている。前半はミランのゴールを脅かすことができていただけに、ユベントスとしてはこの時間帯に1ゴールは欲しかったところだろう。

トナーリとポベガによるマンツーマン守備

試合の趨勢が変わった前半終了間際

前半にユベントスの速攻を何度か浴びたものの、ミランは持ち前のハイプレスで試合の流れを変えることに成功する。

前半44分16秒に、ユベントスのDFグレイソン・ブレーメルが味方GKボイチェフ・シュチェスニーへバックパス。シュチェスニーが右サイドのクアドラードへパスを送ったところで、ミランのDFテオ・エルナンデスが猛然とアプローチ。ボールを奪ったエルナンデスが左サイドを駆け上がり、コーナーキックを獲得した。

ミランの先制ゴールは、この直後のコーナーキックから生まれている。また、シュチェスニーがブレーメルからのパスを受けた場面では、自陣に降りてボールを受けようとしたロカテッリへのパスコースをポベガが封鎖。右のハーフスペースに立っていたユベントスのDFダニーロにもラファエル・レオンが付き、シュチェスニーのパスコースを限定していた。

前述の追加点の場面でも、ブラホビッチのサイドから中央へのパスをディアスが読み切り、鋭い出足でのインターセプトからカウンターを成立させている。ステファノ・ピオリ監督のもとで磨き上げたハイプレスとカウンターが、今回のビッグマッチでも物を言った。

Previous
ページ 1 / 2

名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

筆者記事一覧