プレミアリーグ マンチェスター・ユナイテッド

マンUのジレンマ。プレミア上位返り咲きが難しい理由

写真提供: Gettyimages

トッテナムに就任したジョゼ・モウリーニョ監督が、かつて指揮したマンチェスター・ユナイテッドのホーム・スタジアムに敵として戻ってきた。昨日で、ユナイテッド解任からちょうど一年が経った。そして、トッテナム就任後初めての黒星をユナイテッドに付けられたのである。

ユナイテッドはこの試合に勝ったことで、ランキングでトッテナムを追い越し、少しだけ上位のクラブに近づいた。ユナイテッドにとっては大きな勝利だっただろう。しかし、素晴らしい歴史のあるこのクラブがプレミアリーグのトップに再び立つのは今年も難しいと思われる…。

伝説のアレックス・ファーガソン監督が引退した後、ユナイテッドは勝利への道を忘れたかのように、2013年からどんなことをやってもプレミア1位になることができない。モウリーニョが2016年に監督になってから、チームの調子が少し良くなり、2017/2018年シーズン2位というポジションまで昇りつめた。

確かに悪くない結果だと思いますが、問題なのは1位との勝ち点差。同じマンチェスターのチームであるマンチェスター・シティが3桁の勝ち点100でそのシーズンを終え、2位のユナイテッドは勝ち点81だった。19点の差はかなり大きい。

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これまでのユナイテッドの失敗

しかし、ユナイテッドが調子を取り戻せないのは、モウリーニョが監督になる前からの、ある問題が関係している。

ファーガソンが世界を驚かせる監督引退を発表してから、モウリーニョが引き継ぐまでの3年の間に、ユナイテッドは二人の全く違うコンセプトの監督を呼んだ。

一人はデイヴィッド・モイーズだった。その年は監督だけが変わり、移籍にはほぼ動きがなかった。6シーズンの契約を結んだ期待のモイーズは、フレッシュな戦力なしで失敗し、たったの10カ月で解任された。

もう一人は元アヤックス・アムステルダム、バルセロナ、そしてオランダ代表の監督だった、ルイ・ファン・ハール。彼はモイーズとは全く違うやり方で、莫大な金額を使いたくさんのトップレベル選手を獲得した。そして、戦術的なサッカーを目指した。しかし、そういったサッカーに選手がハマるのは時間がかかるもので、2シーズンの間にユナイテッドらしい実績は残せなかった。

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そして、2016年5月にモウリーニョがやってきた。どうしてもトップを目指したいチームにとって、彼しかいないという判断は正しかったと思う。しかし、彼が選ばれたことで本当のユナイテッドの問題が表に出てきた。

モウリーニョはすぐに結果を示した。2016年イングランドスーパーカップで、リーグチャンピオンであった岡崎慎司のいるレスターを破って優勝。また2017年2月にEFLカップも手に入れた。そして、5月にユナイテッドの初めてのヨーロッパリーグ優勝も達成。しかし、次のシーズンに酷いスタートをきると、そのままクラブが求めていた数字をなかなか達成できず、2018年12月にモウリーニョも解任された。

三人の監督時代のパターンには2つの共通点がある。一つはクラブが短期間に結果を出すことしか考えてないこと。もう一つは理想としているビジョンがはっきりしてないということです。

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長期的計画がないと失敗する

ユナイテッドが数年タイトルを取れなければ、クラブの経営状態に悪い影響となる。リーグ優勝やヨーロッパの大会参加による収入が発生しないことで、次のシーズンの戦略を大きく変えなければなりません。そして、これがこの数年毎年繰り返されるパターンです。

長期的に作りあげられたプランがあれば、少ない予算に合わせた選手を獲得しても、フィロソフィーがブレない。しかし、今までの選手の動きを見ると、ユナイテッドにはそれができてないように見える。

まず今年、結果がついてきてないのにも関わらず、現在のスールシャール監督率いるユナイテッドはプレミアリーグの中で選手の合計年俸が一番高いチームです。その上にいろんな経済的な場面で詰めが甘いと思いませんか?

例えば、現在レンタルでインテルに移籍しているアレクシス・サンチェスの約半分の年俸はユナイテッドが負担している。インテルにとって、とても都合の良い条件で、もう少し交渉ができる取引だったという気がする。

こういった良くないマネジメントの1番の理由はおそらく、フロントとチームの間のクッションがなかったことだと思う。監督の戦略を理解し、シンプルにトップの人間に伝える人間が間にいれば、こんな難しい状況にならなかっただろう。

今の段階では、やはりフロントが求めていることとチームが実際に実現できることの差が激しすぎる。

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アカデミー若手で再スタートを迎えるべき

とりあえずユナイテッドは長期的なプロジェクトを考えるべきです。今のままだと、何をやってももう一度プレミアのトップに立つことが難しい。ここまで深刻な状況は戦術と技術のみで超えられるものではない。

しかし、ユナイテッドのアカデミーは未だにイングランドのトップだと言われている。そこから出たたくさんの選手がプレミアの様々なクラブで経験を積んでいる。これからはもう少しこのクラブの未来である若手を大事にすることも大事だと思いませんか?

スールシャールのチームで機会が与えられているアカデミー出身の若手は、ラッシュフォードとマクトミネイのみです。しかし、彼らはスールシャールが監督になる前からトップチームにいた選手であって、彼ら以外のアカデミー出身選手は少ない上、出場機会もあまり与えられてない。

長期的計画を考え、いつまでにその計画を実現させるかの予定を決めて、そして今クラブ内にいる宝物、若手選手を中心に再びトップを目指す…。それがユナイテッドがやるべきなことだと私は思います。

名前Uccheddu Davide(ウッケッドゥ・ダビデ)
国籍:イタリア
趣味:サッカー、アニメ、ボウリング、囲碁
好きなチーム:ACミラン、北海道コンサドーレ札幌、アビスパ福岡

14年前に来日したイタリア人です。フットボール・トライブ設立メンバーの1人。6歳の時に初めてミランの練習に連れて行ってもらい、マルディーニ、バレージ、コスタクルタに会ってからミランのサポーターに。アビスパ福岡でファビオ・ペッキア監督の通訳も務めた経験があります。

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