セリエA カリアリ

5クラブによる混戦のセリエA残留争いから抜け出すのは【第1回】

4月のウディネーゼ戦で勝利を飾ったクロトーネ  写真:fccrotone.it

サン・パオロで昨季以上の“奇跡”を

 昨季の最終節、スタディオ・エツィオ・スチーダは終了のホイッスルが吹かれると歓喜に沸いた。この試合での対戦相手ラツィオから3ポイントをもぎ取ることは不可能に近く、降格はほぼ確実という下馬評を見事に覆し、当時クラブを率いていたダビデ・ニコラは“奇跡の残留”を果たした選手やクラブスタッフの手により夜空に舞った。

 このカラブリア州の海沿いに面した港湾都市に位置するプロビンチャは昨夏にクラブ史上初となるセリエA昇格を果たしたものの、開幕節を除き常に降格圏に沈むという苦境に。それでもシーズン終盤の4月以降はホームでインテルに土をつけるなど第36節まで17ポイント稼ぎ出す「決して遅すぎない」快進撃を披露。さすがにアリアンツ・スタジアムに乗り込んでの第37節・ユベントス戦では敗れ、スクデット6連覇を目前にする屈辱を味わったものの、ホームでの最終節で3ポイントを掴み、かつエンポリが最下位パレルモにまさかの敗戦を喫したことにより、土壇場で首の皮一枚つながった格好だった。

 セリエA挑戦2度目となった今季も4月以降における状況は1年前を思い起こさせるようなものであるかもしれない。3月のインターナショナルマッチウィーク明けのフィオレンティーナ戦こそ敵地で完敗に終わったものの、4月中旬には過密日程にあったユベントスからホームで1ポイントをもぎ取るなどチーム全体のパフォーマンスは冬場よりも上向きであることは確かだ。そして第37節ではホームにまたしてもラツィオを迎えると、終盤まで互角の戦いに持ち込みドローで1ポイントを加算している。

4月以降、驚異のペースでネットを揺らしているクロトーネのシミー  写真:fccrotone.it

 ただ幾分セリエAのレベルに慣れたクロトーネであっても、今季妥当ユベントスの最右翼であり続けたナポリと最終節で対戦することを踏まえると、サン・パオロで昨季以上の“偉業”を成し遂げなければならない。現在17位のSPALとは勝ち点35で並んでいるものの、得失点差で「3」点のビハインドを抱えていることから少なくともドローで終えたいところだ。

 しかしそんな厳しい現状でも、ティフォージは手脚の長さを生かした狭いスペースでの突破やボックス内での相手DFとの駆け引きに長けているFWシミーのゴールに残留への希望を見出しているだろう。この強靭なフィジカルを兼ね備えている「9」番は4月以降のリーグ戦8試合で6ゴールを叩き出している。そして特筆すべきは、同選手がネットを揺らした試合ではポイントを手に入れていることだ。クラブを率いるワルテル・ゼンガはシミーを最大限に生かすためのアプローチの構築に加え、ナポリのスペクタクルな攻撃の封殺という難題への対応に迫られそうだ。

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