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京都サンガ躍進の3要因。曺監督が仕掛けた“意図的カオス”とは【J1リーグ】

京都サンガ 写真:アフロスポーツ

新スタイルで得た恩恵とは

曺監督は長年の指導経験や海外サッカーの研究から、スタイル変革の必要性を感じ取っていたのかもしれない。今シーズンに大きな変化を加えたことで、チームの強化を着実に進めている。ポゼッションをベースに最終ラインから組み立て、狭いスペースで複数の選手が絡みながら細かなパスや的確なくさびのパスを増やしているのが現在の特徴だ。

そして、このシステムで大きな役割を担っているのがMFジョアン・ペドロだ。広い範囲に顔を出してはリズムを作るパスに貢献し、決定機につながる鋭く的確な配球も多く見られる。昨シーズンはボール奪取能力の高さが印象的だったが、今季は本来持つゲームメイク能力を京都で存分に発揮している。

ペドロの才能発揮は彼自身のパフォーマンス向上のみに留まらない。4-1-2-3から3-4-2-1にフォーメーションを変更したことで、彼が自陣に張り付く時間を減らせた点も大きい。昨シーズンまでは中盤の主導権を握れない時間帯に守勢へ回る場面が多かったが、3バックの1人が中盤のサポートに入ることで、中盤での支配力を高めることに成功している。これによりペドロがより前線を意識してプレーできる環境が整った。

さらに今シーズンのサプライズとして挙げられるのが、MF尹星俊(ユン・ソンジュン)の存在だ。ペドロと中盤でコンビを組むことで、互いの能力を最大限に引き出している。尹の優れた空間認識能力と危機管理能力は、ペドロの広いカバーエリアを支え、京都の中盤をより強固なものへと押し上げた。なお、柿谷曜一朗氏のYouTubeチャンネル『ドリームプロジェクト』でも尹のプレーは高く評価されており、「(京都が)この順位でいけば、彼はベストイレブンに入る」と太鼓判を押している。


選手の特徴を活かした“魔改造”

曺監督は選手の能力開発を徹底しており、本来のポジションにとらわれない起用で、たびたび周囲を驚かせている。直近では、サイドバックが主戦場のDF宮本優太をセンターバックで起用し、チーム躍進のきっかけを作った。またJ2時代には、DF森脇良太をボランチで起用するなど、選手の特徴を最大限に活かす姿勢は抜かりない。

そして今シーズン、その“魔改造”はDF須貝英大にも及んだ。昨シーズンは両サイドバックでの起用だったが、第3節以降は右センターバックでプレーしている。身長172cmとセンターバックとしては小柄ながら、対人守備の強さを発揮。さらに積極的な攻撃参加や機転の利いたプレーで、チームの勝利に貢献している。

特に右ウイングバックDF福田心之助との連携が非常におもしろい。右サイドからの攻撃時、須貝と福田は互いの位置を意識しながら、サイドに張る動きと中央への侵入を繰り返す。これにより、相手守備陣にとって予測しにくい動きが生まれている。両者とも右サイドからのクロス対応もできる上、ミドルシュートという武器も持つ福田が中央に入れば、相手には大きな脅威となる。この流動性こそが、曺監督が掲げる「意図的なカオス」を体現していると言えるだろう。


際立つエリアスとトゥーリオの連携

あえて触れないことにしようかと思ったが、やはり無視はできない。今シーズンもFWラファエル・エリアスとFWマルコ・トゥーリオの連携は衰えを知らない。常に互いの動きを見ており、ブラジル勢独特の速度と呼吸で攻撃をけん引している。その関係性は原の海外移籍以降、むしろ強度を増している印象すらある。

前述したように、システム変更に伴いペドロが攻撃に関わる機会も増えた。これにより前線の破壊力はさらに高まり、京都は常にゴールを脅かす存在へと変貌を遂げている。特筆すべきは、トゥーリオのトラップ技術だ。吸い付くようなボールコントロールで一瞬のうちにチャンスを生み出す。彼がボールを収めた瞬間、スタジアムの空気が一変する。得点の予感が、確信へと変わる瞬間である。


苦境を逆手に取ったスタイルチェンジは、単なる修正ではなく強豪へと脱皮するための必然だった。カオスの中に秩序を見出し、自ら主導権を握って試合を支配する。その進化の先には、まだ見ぬ頂点がはっきりと見え始めている。

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名前:秕タクオ

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