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京都サンガ躍進の3要因。曺監督が仕掛けた“意図的カオス”とは【J1リーグ】

曺貴裁監督 写真:アフロスポーツ

2025シーズンの明治安田J1リーグをクラブ史上最高順位となる3位でフィニッシュした京都サンガ。2022シーズンにJ1へ昇格して以降、苦しみながらも着実に成長を重ね、その歩みが現在の結果につながっている。

今シーズンの特別大会(百年構想リーグ)も開幕し、チームの新たなスタイルが徐々に見え始めている。そこには、これまでとは異なるアップデートが感じられ、さらなる高みへと押し上げる予感も漂う。ここでは、タイトル獲得を目標に掲げる京都の今シーズンの進化について分析する。


大幅な戦力ダウンでのスタート

新シーズンの船出は順風満帆に見えたが、「主力の離脱」という荒波に飲み込まれた。大半の選手たちはクラブに残留したものの、主軸のFW原大智がドイツのザンクト・パウリへ移籍。さらにDF宮本優太は、期限付き移籍期間満了に伴い浦和レッズへ帰還し、キャプテンのMF福岡慎平も右膝内側半月板損傷による長期離脱となった。チームの核となる選手たちの不在が際立つ形となり、「最終ラインからビルドアップができない」「ロングボールで敵陣へ進入できない」「ミドルサードでのバランスが取れない」という三重苦が浮き彫りに。これまで積み上げてきた戦い方が根底から崩れ去ったかのように映った。

これらの課題が十分に改善されないままシーズンが始まったと言っても過言ではない。開幕節のヴィッセル神戸戦は引き分けの末にPK負け。続く第2節の清水エスパルス戦では、終始圧倒されながらも後半アディショナルタイムに相手のミスを見逃さず同点に追いつき、PK戦を制して最低限の結果を手にした。しかし内容を踏まえれば、決して良いスタートと言えないことは確かだ。そんな中、曺貴裁(チョウ・キジェ)監督は興味深い変更に踏み切る。


曺監督が行ったシステム変更

従来のフォーメーションである4-1-2-3から3-4-2-1へとシステムを変更し、チームをポゼッション志向へとシフトさせたのだ。これまでの京都は、ディフェンスラインからロングボールを供給し、FW原を起点に敵陣へ入り込むことが多かった。しかし、そのスタイルを大きく転換したのである。元々、原以外にはボールタッチに優れた選手が多く、素早いポジションチェンジも可能だ。さらに曺監督の哲学がチームに浸透している段階だったこともあり、ポゼッション志向への転換は決して不自然なものではなかった。これらの条件が今回の進化につながったと言えるだろう。

実際に、直近シーズンのボールポゼッション率を比較すると、2024シーズンは44.9%、2025シーズンは48.1%、そして今シーズンは第5節終了時点で54.0%と急激な上昇傾向が見られる。この変化は、中堅クラブが強豪クラブへと進化する過程でしばしば見られるスタイル変化とも一致する。近年のアストン・ビラ(イングランド1部)が、その好例だろう。中堅クラブが上位クラブを脅かすレベルまで順位を上げる際には、守備を固め、速攻で相手の隙を突くスタイルで強豪から大金星を奪い、上位へと駆け上がることができる。

しかし、いざ上位争いに加わるようになると、当然ながら対戦相手の警戒は一段と強まり、相手は新たなリスペクトの形として「あえてボールを持たせる」「ポゼッションを譲る」という戦術的選択を取るようになる。ボールを持たないことを前提に設計されてきたチームにとって、これは極めて難しい状況だ。これまでオープンスペースに走り込んでいたアタッカーは、極端に狭いスペースでのプレーを強いられ、ミッドフィルダーは引いて守る相手に対して自らボールを動かし、崩しのアイデアを提示しなければならない。チーム全体にとって、いわば“カルチャーショック”とも言える変化である。

実際、2025シーズン第13節のガンバ大阪VS京都サンガの試合は、その傾向が顕著に表れた一戦だった。G大阪は京都にあえてボールを持たせる戦い方を選択し、カウンターから鮮やかに2得点を奪って勝利。京都にとっては、大きな衝撃を残す敗戦となった。

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名前:秕タクオ

欧州主要リーグはもちろんJリーグや代表チームまで。日々溢れるフットボールへの思考も濾過しつつニュートラルな視点を持ってフットボールの光と影を忖度なしに発信していきたいと思います。

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