高校サッカー

「高校無償化」によって高校サッカー界にも格差社会が到来か

高校サッカー 写真:Getty Images

今国会(第217回常会2025年1月24日から6月22日まで)で、石破内閣の目玉政策の1つだった「高校無償化(高校の授業料無償化)」について、自民・公明の与党両党と日本維新の会が合意した。早ければ今年度から実施されるという。

高校の授業料無償化については、今年4月から公立・私立を問わず一律に実施し、公立高では年間11万8,800円の就学支援金についても所得制限を撤廃。また、2026年4月からは私立高を対象に加算されている就学支援金の所得制限も撤廃され、私立の全国平均の授業料である45万7,000円に引き上げる見通し。併せて、低中所得世帯を対象に教材の費用などを支援する「奨学給付金」も拡充するとしている。

全国に先駆け、東京都と大阪府の独自政策として所得制限のない私立・公立高授業料の無償化がなされていたが、隣接の県や府から通う、いわゆる“越境入学者”は対象から外れ不公平を生んでいた。しかしこの政策によって、この不公平も撤廃される。

世界的に見ても驚異的なスピードで進む少子高齢化に歯止めを掛けようとするこの政策。しかしながら、これによってさらなる教育格差を生むと主張する教育学者がいるのも確かだ。実際、東京都や大阪府では、公立高の志望者が減少し定員割れするケースが続出。どのみち「無償」であれば、受験生とその保護者が公立高より私立高を選ぶのも自然な流れといえよう。

この流れはサッカー界にとって無関係ではない。強豪私立高サッカー部に有望株が殺到し、公立高では太刀打ちできない事態になる将来が予想されるからだ。ここでは高校無償化による、高校サッカー界への影響を考察する。


長谷部誠氏 写真:Getty Images

公立高が私立高に選手獲得面で後れを取る?

基本的には公立高は、部活動の強化を目的とした越境入学を認めていない。2022年、全国高校サッカー選手権優勝4回、準優勝3回を誇る名門の静岡県立藤枝東高校で、約25年にわたって複数の生徒が県外の自宅から通学していたことやサッカー部OB会が用意したアパートで一人暮らししている実態が明るみとなり、静岡県教育委員会が謝罪する事態となった。

藤枝東高は、元日本代表FW中山雅史(現アスルクラロ沼津監督)を筆頭に、浦和レッズ一筋の現役生活を送ったMF山田暢久(現ガナドールFCコーチ)、元日本代表主将のMF長谷部誠(現フランクフルトU-21アシスタントコーチ兼日本代表コーチングスタッフ)、元日本代表MF山田大記(現ジュビロ磐田クラブリレーションズオフィサー)、元U-20日本代表MF河井陽介(現J2カターレ富山)らを輩出している。

一方、越境入学の縛りがない強豪私立高サッカー部は、全国から有望選手を集めることが可能だ。入学金や授業料を免除した上、寮も完備した「特待生制度」をフル活用し強化を進めている。その中にはサッカー部員が3桁にも上る高校も珍しくない。

高校無償化は公立高にも私立高にも適用されるため、この私立高の特待生制度を使った勧誘が難しくなる。一見、条件は同じようにも思えるが、サッカー選手として少しでも高いレベルで競争したいという意思を持つ中学生が進路を選ぶ際、親の金銭的負担が同じなのであれば、強豪私立高サッカー部を選ぶのが自然なことだろう。

一方、前述の藤枝東高や、同じ静岡県立の清水東高校、静岡市立清水桜が丘高校(かつての清水商業高校)、さいたま市立浦和南高校、習志野市立習志野高校、船橋市立船橋高校、滋賀県立野洲高校、広島県立広島皆実高校など、全国高校サッカーを制したこともある公立の名門高にとっては、選手獲得の面において強豪私立高に後れを取ることになることが予想される。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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