
苦境で勇気づけるモチベーター
同試合、スペインは1点を守りきって逃げ切りを図ったが、ドイツが後半終了間際に追いついたのはホームの意地と実力あってこそだ。しかし、気持ちが落ち込みそうなスペインの選手たちをデ・ラ・フエンテ監督は盛んに勇気づけていた。逃げ切りに失敗したことを引きずってしまうと、逆に気持ちが高ぶっている相手にすぐに2失点目を喫してしまうからだ。モチベーターとしても、同監督はさすがだった。
追いつくことに労力を使ったドイツは延長戦が進むにつれて打つ手がなくなったが、立ち上がりから優勢に進めていたスペインはまだ余力を残していた。ここが、勝負の分かれ目となった。スペイン陣営が狙った通り、試合開始からチャンスをつくった。負傷退場は誤算だが、その選手交代もドンピシャ。順調にゲームを進めて、2得点はともに途中出場選手が決めた。
策士デ・ラ・フエンテの采配が冴え渡った試合といっていいだろう。

アシストしたヤマルの交代
ラミン・ヤマルは同試合でスペインの先制点をアシストした。しかし、早々に63分にFWフェラン・トーレス(バルセロナ)と交代でピッチを退いたのはなぜなのかと思うかもしれない。デ・ラ・フエンテ監督の意図はここにも働いている。
スペインの得点をアシストした時あれだけ喜んでいたヤマルは、交代時うつむき加減でゆっくり歩きながら、顔を横に振り目に涙を浮かべていた。大事な試合で、ここから佳境を迎えるという場面でお役御免になってしまった。初めての大きな国際大会の舞台に立ったばかりの16歳の少年なのだから仕方ない。
しかし「アシストしたのに」ではなく「アシストしたから」交代したのだ。スペインが得点したことで、ドイツの攻撃の圧力が増してきた。そしてヤマルのサイドが決壊し始めたのだ。ヤマルは攻撃が特徴の選手であって、守備に求められるフィジカルはまだ発展途上だ。しかも、後半で疲れが出始めている。
交代で出場したトーレスは右サイドで身体を張って守備を行った。74分には突破を試みたドイツのFWジャマル・ムシアラ(バイエルン・ミュンヘン)を両腕で抱え込むようにタックルしてイエローカードを提示された。しっかりと仕事を理解している。
トーレス投入時のデ・ラ・フエンテ監督の意図は守備だ。「体を張ってサイドを守りきれ」という指示が出ていたに違いない。ヤマルは大活躍だったが、スペインが守りに転じたため、戦術的理由で交代になったのである。同様に左サイドが破られはじめると、80分に左アウトサイドMFのウィリアムズも交代になった。
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