欧州その他

欧州移籍市場における代理人の動き。ロナウドのマンU復帰は筋書き通り?

アーセナル新加入DF冨安健洋 写真提供:Gettyimages

冨安の移籍が決まる裏でも…

我らが日本代表の守備の要であるDF冨安健洋も、今夏の欧州移籍市場における悲喜こもごもの中にいた。

ボローニャに所属していた冨安に移籍の話が出始めると、あるクラブの名前が挙がっては消え、新たなクラブが手を挙げたかと思えばまた消え、復活し、残留の目も出てきていた。いや、経営面を考えればボローニャは、冨安を売りたくて仕方がなかったはずだ。ボローニャのワルテル・サバティーニ氏という有名なテクニカルディレクターが、会長の名前を使って「売らない」と移籍金額を吊り上げていたという。

移籍市場最終盤には、テレビ放映権収入が桁違いであるために他国より3割増の移籍金が見込めるイングランド方面での動きが激しくなった。トッテナム・ホットスパーやウェストハム・ユナイテッドなどロンドンに本拠地を置くクラブも本命視される中、冨安の移籍先は市場最終日に同じロンドンのアーセナルに決まった。ボローニャの金額吊り上げ策も実り、最高で2300万ユーロ(約30億円)にまで上る移籍金を引き出した。


ロナウド、母、息子、代理人ジョルジュ・メンデス 写真提供:Gettyimages

移籍交渉にも残る「人間臭さ」

現代のサッカー界では一般社会と同じく膨大なデータがIT化され、世界中の映像が遠い国からでも閲覧できるようリモート化も進んでいる。世界最先端をいく各クラブのチーム強化会議では緻密に補強ポイントを精査し、的確なチーム編成がなされていると思われる。

しかしながら、実際の移籍交渉となるとぎりぎりまで「人間臭い」取引が行われていることが伺え、人と人の信頼関係の重要度は今後も高いままだろう。そもそも最先端クラブの補強担当は膨大なデータなど見る必要がない。彼等が獲得するのは極東に住む我々日本人でも知る選手ばかりで、“ググれば”必要最低限以上の情報は即座に手に入る。得意先(クラブや会長など)と通じている信頼できる営業マン(代理人)に話を持ち掛けるところからスタートし「今回はこちらでツケさせてもらいます」「前回はお世話になりました」などといった交渉は、IT化にまとまらないはずだ。

ピッチ上では選手たちがVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)などで厳しく裁かれ、喜びも肩透かしの場面もある。ピッチ外では放映権ビジネスが行き過ぎて「なぜこんな時間に試合してるの?誰のために?」とサッカーファンまでもが疑問を抱く。現代サッカーに辟易することもあるかもしれない。

しかし「サッカーは文化を反映する」と言われている。なくならない「人間臭さ」の部分こそがサッカーというスポーツの面白さ、醍醐味であり、それはこのように移籍交渉の場面にも残る。

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