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欧州移籍市場における代理人の動き。ロナウドのマンU復帰は筋書き通り?

ジョルジュ・メンデス(左)クリスティアーノ・ロナウド(右)写真提供:Gettyimages

欧州の移籍市場はトルコなどの一部を除いて8月31日で閉幕した。今夏は34歳のアルゼンチン代表リオネル・メッシと、36歳のポルトガル代表クリスティアーノ・ロナウドの「ビッグ2」が同時に動いた。メッシが下部組織時代から20年所属したバルセロナからパリ・サンジェルマン(PSG)へ。ロナウドが3シーズンを過ごしたユベントスから古巣マンチェスター・ユナイテッドへ。

しかしながら、新型コロナウイルスによる昨今の情勢のために各クラブが緊縮財政に努めた結果、全体に金銭面での大きな動きは少なかった。メッシはバルセロナを契約満了で退団したフリー移籍(移籍金なし)である。PSGは他にも大物を獲得しているが、GKジャンルイジ・ドンナルンマ(前ミラン)、DFセルヒオ・ラモス(前レアル・マドリード)、MFジョルジニオ・ワイナルドゥム(前リバプール)も同様にフリー移籍だった。つまり、市場自体へ投下されたキャッシュ(移籍金)は少ない。

こんな情勢の中でも、選手の大きな移籍案件の手数料が売上となるサッカー界の代理人は、自らが抱えるクライアント(選手)の移籍希望や架空クラブからの条件をメディアにリークし、さらなる契約延長交渉で年棒を吊り上げようとしたり、より良い条件のクラブへと移籍させようと奔走する。火のないところに自ら問題を作り、私腹を肥やしながらも有力選手からの信頼を得て、エージェント契約の件数まで増やす代理人たちはまさに辣腕である。


マンU新加入FWクリスティアーノ・ロナウド 写真提供:Gettyimages

ロナウドのマンU復帰は筋書き通り?

最も有名な代理人の1人にはミノ・ライオラ氏が挙げられる。ポール・ポグバ(ユナイテッド)や、前述のドンナルンマ、ズラタン・イブラヒモビッチ(ミラン)、今を時めくアーリング・ハーランド(ボルシア・ドルトムント)など一癖ある曲者たちをクライアントに持つ。

ロナウドの代理人ジョルジュ・メンデス氏もまた、ハメス・ロドリゲス(エバートン)、ジョゼ・モウリーニョ(ローマ監督)を始め、母国ポルトガルに強いネットワークを持つ。一流の人たらしで、ルックスからしても何人も彼女がいそうなマメな男を想像してしまう。

ロナウドの電撃的な12年ぶりのユナイテッドへの復帰が発表されたのは8月27日だったが、前日の夜まではライバルであるマンチェスター・シティへの移籍が目前であると世界中のメディアが報じていた。実際、メンデス氏はシティのクラブ関係者と交渉を進めており、フロント内では合意もされていたようだ。実現に至らなかったのは、現場サイドでの戦術面や36歳というロナウドの年齢がネックになったと報じられている。

しかし、ここまで全てがメンデス氏の筋書き通りなのではないか?とも考えられる。もともとロナウドのユナイテッド復帰の可能性は5月からあったことが明白になっている。ロナウドにとってユナイテッドは、当時18歳だった彼が青年へと成長する過程を共にした古巣であり、個人としても2008年にバロンドールを初めて受賞するに至った心のクラブである。2003年から2009年まで6年間プレーしたユナイテッド時代は、リーグ優勝3回やUEFAチャンピオンズリーグ制覇など数々のタイトルを獲得した栄光の軌跡だ。

しかし、他のポジションに優先させる補強ポイントがあったユナイテッドがロナウド獲得になかなか重い腰を上げなかったため、メンデス氏が戦略的にシティを使い、ユナイテッド側のスイッチを押させた格好となった。もちろん、その交渉の最中ではロナウドのもう1つの心のクラブであるレアル・マドリードにも案件を持ちかけていたと思われるが、最終的には意中のクラブに移籍させることに成功させた。

ユナイテッドとしても、象徴的存在であったロナウドを「うるさい隣人」シティへ移籍させるわけにはいかない。ロナウドをユナイテッド時代に指導したサー・アレックス・ファーガソン元監督やウェイン・ルーニー(現イングランド2部ダービー・カウンティ監督)ら元同僚も、それを阻止するようなやり取りを見せた。最終的には自身も現役時代に4年間チームメイトとしてプレーしたオーレ・グンナー・スールシャール現監督がロナウド獲得にゴーサインを出したのだった。

まさにメンデス氏の筋書き通りの話である。

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