プレミアリーグ マンチェスター・ユナイテッド

C・ロナウドをメッシと並ぶ世界最高フットボーラーにした「最強の活用術」とは

ガレス・ベイル(左)カリム・ベンゼマ(中)クリスティアーノ・ロナウド(右)写真提供:Gettyimages

「BBC」を活かした可変システム(Rマドリード時代)

2009年、ロナウドは当時の世界最高額となる8000万ポンド(約130億円)でスペインのレアル・マドリードに完全移籍する。加入初年度はマヌエル・ペジェグリーニ監督(現べティス監督)の下、アルゼンチン代表のゴンサロ・イグアイン(現インテル・マイアミ)との2トップでメインに起用された。

加入2年目からはジョゼ・モウリーニョ監督(現ローマ監督)の下、ロナウドは得意とする左サイドからのドリブルでのカットインとシュート力を活かす[4-2-3-1]の左ウイングを定位置とし、2010/11シーズンにはリーガの得点王も獲得。しかし、バロンドール(2010年から2015年の6年間はFIFA最優秀選手賞と統合)は、2009年から2012年までメッシに4連覇を許した。メッシが所属するバルセロナが黄金期を迎えていたこともあるが、チームとして機能するバルセロナとメッシとは裏腹に、ロナウドは個の能力だけで戦っているような状態だった。

2013/14シーズン、マドリードに就任したイタリア人のカルロ・アンチェロッティ監督はチームの最適解を試行錯誤し、シーズン後半戦からある奇策を用意した。バルセロナに勝たなければタイトルを獲れないチームの事情を鑑みて、そのバルセロナ相手に好成績を残すアトレティコ・マドリードの守備戦術をチームに取り入れたのだ。

通常時には、「BBC」と呼ばれるウェールズ代表ガレス・ベイル(B)フランス代表カリム・ベンゼマ(B)クリスティアーノ・ロナウド(C)の豪華絢爛な3トップが並ぶ[4-3-3]を採用。バルセロナなど強豪相手の守備時には、左ウイングのロナウドが前線に残り、右ウイングのベイルが1列下がって、左インサイドハーフのアルゼンチン代表MFアンヘル・ディ・マリア(現PSG)が左サイドハーフにズレることで、アトレティコのように自陣に引いて[4-4-2]の守備ブロックを形成したカウンター狙いの戦術を採った。

つまり、ロナウドの守備のタスクをチームとして負担し合い、2つのシステムを使い分けたのだ。これにより、攻撃でも唯一最大の武器だった超高速カウンターだけでなく、ポゼッションとの使い分けが可能となった。

レアル・マドリード2013-2014「可変システム」作成:筆者

このポゼッション型[4-3-3]とカウンター型[4-4-2]を試合中に併用する可変システムの導入により、マドリードは同2013/14シーズン、スペイン国王杯の決勝でバルセロナを破ってタイトルを掲げた。CLでも最強バルセロナを作り上げたジョゼップ・グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ監督)率いるバイエルン・ミュンヘンに大勝を挙げ、決勝では“元ネタ”のアトレティコを下して2冠を達成。12年ぶりの制覇となったCLでの優勝は最多「ラ・デシマ」(夢の10冠目)と謳われている。ロナウドもリーガとCLの得点王に輝き、バロンドールも受賞した。

「BBC」を活かすための可変システムは、最強のロナウド活用術となった。

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