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快進撃を見せた2年目のシーズン
2019/20シーズンの苦しい時期を乗り越えたアストン・ビラは、チームとして戦うメソッドを確立。2年目の2020/21シーズンに快進撃を見せる。
ほころびが生まれやすかった中盤では、MFジョン・マッギンの献身性に磨きがかかった。中盤での攻守におけるカバーリングやサイドバックのタイミングを見極めた動き出しはプレミアリーグでもトップの水準まで達した。
長らく課題だったストライカーポジションは、FWオリー・ワトキンスを新たに獲得することで解消させた。前所属ブレントフォード時代にディーン・スミス監督と共に戦った時期もあるワトキンスは、アストン・ビラに順応するまでにそれほど時間を必要とせず、同シーズンにはチームトップとなる14ゴールをマーク。リバプール戦でのハットトリックやアーセナル戦での2ゴールは、アストン・ビラの点取り屋として確立した証拠になったと言える。
ディーン・スミス監督はワトキンスと再会したこともあって、戦術的なロジックを構築することに成功した。特に大きかったのは守備力の安定だろう。DFタイロン・ミングス、DFエズリ・コンサはセンターバックで堅実な守備対応を行うことができ、ラインコントロールを含めて簡単には攻略できない安定感をチームにもたらした。
またアーセナルから加入したGKエミリアーノ・マルティネスは、あのGKトム・ヒートン(現マンチェスター・ユナイテッド所属)を抑えてアストン・ビラの新守護神となり神がかったセーブを連発。その活躍は間違いなくアストン・ビラの上位進出の一助になったと思われる。結果、2020/21シーズンは11位でシーズンを終えたものの、7位に終わったトッテナムとの勝ち点差はたった「7」。強豪クラブの背中が見えてきた。
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新たなストーリーが始まる2021/22シーズン
ここまでのベースが仕上がった上でアストン・ビラは、これから始まる新シーズンに向けてさらなる高みを目指した補強を敢行した。それはまるでジャック・グリーリッシュのマンチェスター・シティ行きが決まることを前提にしたかのような積極的な補強だった。
そもそもクラブはグリーリッシュ抜きで戦い抜くプランを早い段階から構想したかのようにも推測される。大きな戦力を失うことは悪いニュースだが、そうした中においてもチームとしての総合値を高くするにはどうすればいいのか順序立ててプランニングする姿勢は高く評価できるはずだ。毎シーズンのように何の論理もなく「思いつき」で背伸びをした選手補強を目指すどこかのクラブとはまるで違う。
新たに獲得したのは、昨シーズンにノリッジ・シティで15ゴール16アシストを記録してリーグ最優秀選手に選ばれたMFエミリアーノ・ブエンディア、サウサンプトンから前線でハードワークができ得点感覚に優れたのFWダニー・イングス、バイエル・レバークーゼンから足元のテクニックがあり爆発的なスピードも備えるFWレオン・ベイリー。グリーリッシュ不在でも心配ない戦力を準備することに成功した。
また新戦力の獲得に加えて、36歳のアシュリー・ヤングがマンチェスター・ユナイテッド、インテルを経て復帰するなどポジティブな話題もあり、クラブ全体として新シーズンも躍進するための機運を高めた格好だ。
中盤の選手層が厚くなり、ポジション争いも生まれてチームとしての好循環を生み出すことになると考えられる。さらには対戦相手ごとに見極めた柔軟な戦術にも期待ができ、いよいよヨーロッパ(EL、CL)を目指す準備が整ったかのようだ。新シーズンを前にアストン・ビラへの期待が止まらない。
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