Jリーグ 鹿島アントラーズ

柳沢敦、大迫勇也、鈴木優磨「鹿島産FW選手の流儀」とは?

柳沢敦 写真提供: Gettyimages

日本人に大きな影響を与えたマジーニョ&マルキーニョス

鹿島は伝統的に2トップを採用し「外国人+日本人」の構成をしてきた。日本人の選手を育成しながらチームの強化を図る策は、サッカー発展途上国であった日本にとっては理想的な強化策だ。

「アルシンド&黒崎久志(長谷川祥之)」「マジーニョ&柳沢」「柳沢&鈴木」「マルキーニョス&興梠慎三(田代有三)」「金崎夢生(現・名古屋グランパス)&土居聖真」は、クラブの歴史に残る2トップだ。

特に後続の選手にまで影響を与えた印象の強いFWとしては、マジーニョ(1995~2000年に在籍)とマルキーニョス(2007~2010年に在籍)の両ブラジル人が挙げられる。特にJリーグの多くのクラブに在籍し、鹿島が来日7年目で5チーム目だったマルキーニョスの影響は、共にプレーした当時の若手であった興梠や田代、大迫にまで強烈な影響を与えている。

また、鹿島だけに限らず日本人のFW選手に「誰をFWとして参考にしていますか?」との問いで最も名前が上がる柳沢は、「マジーニョから受けた影響が強い」と語る。地味ながらもFWがチーム全体を助けるキープ力や攻撃の起点となる動き出しの数々は、マジーニョから伝統的に伝わる「鹿島産FWの流儀」になっている。

マジーニョ退団後は柳沢と鈴木による日本代表2トップが誕生し、マルキーニョスの退団前後にも興梠や田代、大迫という3人の代表FWを続けて輩出している事も、このブラジル人FW2人の影響力の大きさを感じさせる。また、金崎も欧州移籍を経験した「海外組」であったため、彼の存在も若手には大きな影響力があっただろう。

そうは言っても、2トップが2人とも生粋のFWだった時代とは異なり、以前とは運用形態には時代によって変化はある。セレーゾ体制第2政権となった2013年頃からは、主力を張るMF土居が2トップの1角に入っている。スポーツ専門チャンネルだけでなく、NHKでの中継でも土居は1.5列目に表記されて紹介されている。本人はちょっと嬉しいのではないか?


土居 聖真 & 金崎夢生 写真提供:Gettyimages

鹿島産FW動き出しの優先順位

そんな鹿島のFWの動き出しには特徴がある。特徴があるというより優先順位があって、相手や試合展開を見ながら的確に動き出しを行っている。以下にそれを優先順位で整理したい。

【鹿島産FWの動き出しのルーティーン】

  1. クサビとなる縦パスを受ける。
  2. 中盤に引いてシンプルにボールを捌く。
  3. サイドに開いて起点となる。
  4. サイドに開いたポジションから裏のスペースへ抜ける

カウンターや速攻時には相手DFライン裏へ抜ける事を優先するが、基本的にはまずは①最前線でパスを受ける事を模索し、クサビとなる縦パスを足下で受けてワンツーの的や自ら攻撃の起点になろうとする。そこでパスを受けられなかった場合、次は、②中盤へ降りてワンタッチやツータッチでシンプルにボールを捌く。

それでもボールを受けられなかった場合は、③サイドへ開いて足下へ受け、味方が攻めあがるタメを作るため、あるいはサイド攻撃で数的優位を作る仕掛けに関与する。

そこでも受けれなかった場合は、④サイドに開いたポジションから相手DF裏へのスペースへ走り込む。すでに自分がいったん中盤へ引いてからサイドに開く動きをしているため、相手DFライン裏にはたいていスペースが拡がっているからだ。そのためスペースを自ら作る予備動作は必要がない効率の良さが際立っている。と言うよりも、通常の動きが全てスペースを作るための予備動作となるよう、その動き出しの順番や組み合わせに一切の無駄がない抜け目のない動き方が備わっているのだ。

ちなみに④の動きをしてもボールが来なかった場合は、オフサイドラインに入ってしまうのだが、オンサイドに戻った場合に次は、①のクサビのパスを受ける動きに戻りやすくなる。

以上の①~④を順番に繰り返し、④が終わると①に戻る。

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