ラ・リーガ バルセロナ

バルサのバトンは新星アンス・ファティに。ネイマールは戻らなくても結構!

写真提供: Gettyimages

才能のある選手が化けたら、もう誰にも止められない。一直線に成長する。

リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドは、デビューしてから一気にサッカー界のトップまで昇りつめた。パリ・サンジェルマン(PSG)所属のキリアン・ムバッペは16歳でモナコでデビューし、2016/2017年シーズンでいきなり力を発揮して、チームをリーグ優勝に導いた。その1年後には、ロシア・ワールドカップでも優勝した。

この3人の選手と似たような道を歩んでいるのが、バルセロナ所属のアンス・ファティです。彼は2日前に行われた2019/2020チャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ最終戦、インテルのホームで途中出場し、メッシを思い起こさせるほどの難しいゴールを決めた。それがCL史上最年少得点となっている。

しかし、これがファティが初めて達成した記録ではない…。

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アンス・ファティの経歴

ファティは、2002年10月31日にギニアビサウの首都であるビサウで生まれ、6歳で家族と一緒にスペインに移動した。現在はスペイン国籍を持っている。セビージャのユースを経て2012年にバルセロナのユースに渡った。そして今年、2019年7月にバルサと初めてのプロ契約を交わした。

プロ契約を結んでからちょうど1ヶ月後のベティス戦でプロデビュー。16歳と298日でバルサ史上2番目の若いデビューとなった。ファティの出場は途中からだったが、12分でドリブル、スプリント、アシスト、全ての武器を見せてサポーターを驚かせた。試合後メッシからされた「お疲れ」のハグがネットで大人気となり、一気に有名人に。

その次の一節に初めての個人記録を達成。オサスナ戦でカルレス・ペレスのクロスボールに頭で合わせ、16歳と304日の年でプロ初ゴールを決めた。クラブ史上最年少ゴールとなり、リーガ史上3番目の最年少ゴールにもなった。

特徴は「完全性」と「リーダーシップ」

ファティの特徴を二つの言葉でまとめるなら、それは「完全性」と「リーダーシップ」です。

17歳になったばかりで、すでにこんなに高いレベルでプレーしていることが驚きなのだが、一番驚くべきなのは彼の複数のプレー。まるで「長い経験を積み重ねた完璧な選手」のようだ。

デビューしたばかりのヒヨコが良い活躍を見せる時、大抵は瞬発力、スピード、ボール触りなど、あまり戦術と関係しないプレーが多い。ファティにももちろんそれができるが、チームの戦術にぴったり合う彼のレパートリーに最も驚かされる。

ファティのポジションはウィングと言われているが、サイドからの一対一の突破力だけの選手ではない。ボールを持っていない時の動きは長い経験者のような動きである。第3節のオサスナ戦、その次のバレンシア戦中で稼いだ得点は、彼のペナルティエリア内に動くタイミングの絶妙さを表す。

また、ファティがピッチに入ると、チームが変わる。17歳になったばかりの一番の若手選手がチームのリーダーになり、周りの選手の中心になっている。

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バルサにネイマールは必要ない

ファティはメッシ級の選手になれると、サポーターやメディアが期待している。しかし、彼はまだ若いし、あまりプレッシャーをかけてはいけない。バルサのエルネスト・バルベルデ監督が、活躍の割にファティにスタメンのチャンスを与えてないのは、もっと伸びるための時間を与えたいからだろう…。

この難しいリーグで90分戦えるぐらいに成長しているファティには、これから出場機会がどんどん増えると思う。しかし、彼が試合に出ることでメッシをベンチに引っ込めるわけにはいかない。ファティは本来のポジションである右サイドではなく、メッシと逆の左サイドに使われることが増えるのではないか。

現在バルサのサポーターは、PSGにいるネイマールがバルサに復帰することを求めている。しかし、もしネイマールがバルサに来たとしたら、ファティはずっとベンチスタートになる可能性が高い。

それは若いのに一度もチームの期待を裏切っていないファティにとって良くない話だし、クラブも昔に縛られずにどんどん若手にバトンタッチした方がいいと思いませんか?

ネイマールは自分からバルサを出た時点で、このクラブの歴史を描ける選手じゃなかったのだ…。

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バルサのバトンを引き継ぐ重要な役割

ファティはユースから上がって、慣れる時間も与えられずにすぐ試合出場させられ、クラブ史上2番目の若い選手となった。また、彼のゴールはクラブ史上最年少得点、そしてCL史上最年少得点にもなった。この素晴らしいスタートを切った選手こそ、バルサのベテラン選手のバトンを引き継ぐことにふさわしい。

この数年バルサのアカデミーの質が落ちたと言われている。確かにボージャン・クルキッチ、ジェラール・デウロフェウ、ヴィッセル神戸所属のセルジ・サンペルなど、ファティの前の時代の選手はサッカー界の期待に答えられなかった。

シャビ、イニエスタ、プジョル、メッシ…。バルサスクールから出たトップチームの選手たちは国内でも国外でもたくさんのタイトルを獲得してきた。そのスクールが未だに世界のトップであることを証明しなければならないのは、他の誰でもない!アンス・ファティです。彼に期待してもいいと私は思う。

名前Uccheddu Davide(ウッケッドゥ・ダビデ)
国籍:イタリア
趣味:サッカー、アニメ、ボウリング、囲碁
好きなチーム:ACミラン、北海道コンサドーレ札幌、アビスパ福岡

14年前に来日したイタリア人です。フットボール・トライブ設立メンバーの1人。6歳の時に初めてミランの練習に連れて行ってもらい、マルディーニ、バレージ、コスタクルタに会ってからミランのサポーターに。アビスパ福岡でファビオ・ペッキア監督の通訳も務めた経験があります。

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