プレミアリーグ レスター・シティ

レスターへの愛を貫き、自身も愛されたビチャイ・スリヴァッダナプラバ

多くの人々がビチャイ氏との別れを惜しんだ 写真提供:Getty Images

 ビジネスライクな時代において

 サッカークラブがビジネスの一種になった時代に、ビチャイ氏は家族のようにクラブを導いた。全てのスタッフ、選手、そしてサポーターを含めた広範囲のユニットを作り上げた。世界のサッカー界で5000倍(レスター・シティ優勝のオッズ)の勝利を経験するクラブはほとんど存在しない。免税店の億万長者よりも少ないだろう。

 典型的なタイ人オーナーは国内リーグ戦で選手たちとともにスタジアムに座り、スポットライトを夢見ている。ビチャイ氏はジェイミー・バーディやリヤド・マフレズ、エンゴロ・カンテなどの誰もが知っている選手と残るの選手たちでその夢を実現できるスカッドを巧みに形成できることを証明した。

 2010年にレスターを買収した際には、ビチャイ氏はタイ元首相タクシン・チナワット氏(元マンチェスター・シティオーナー)の残した高い評判に応える必要があり、チナワット氏が短くつづった言葉は、サポーターとの不和を生んだとされている。実際、2003年にロマン・アブラモビッチがチェルシーを買収して以降、外国人オーナーに対しての不信感は高まっていた。海外の悲惨の経営者の手によって財政難に陥ったポーツマスのようなクラブの経験だけが、裕福な外国人オーナーの擁護に繋がった。

 しかしながら、悔やまれる事故が遭った今日においても、この時代においてもレスターとその他のクラブのサポーターからのリアクションはビチャイ氏がレスターにとっていかに特別な存在であったかを物語っている。サッカーがマーケティングや政治的な手段に利用されるこの時代に、ビチャイ氏がクラブに対して見せた真の愛情は誰の目にも明らかだった。

 ビチャイ氏の優しさ、寛大さ、謙虚さはレスター・シティ全体から正当な賞賛を受け、理想的な代表としての彼の地位を確立させた。彼が経験した悲劇的な結末は、レスターだけではなく世界中が模範的なチェアマンを失ったことを意味するだろう。

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名前:菊池大将
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