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躍動のロナウドと沈黙のメッシ。対照的な2人の差はチーム状態が原因か

さかのぼること2016年、アルゼンチン代表がコパ・アメリカ・センテナリオの決勝でPK戦の末チリ代表に負けた後、リオネル・メッシは代表引退を決意した。決勝でPKを失敗し、チームを24年ぶりのタイトル獲得に導けなかった彼のショックは相当に大きかっただろう。奇しくも同じ年、彼の最大のライバルと言われるクリスティアーノ・ロナウドがEURO2016でポルトガル代表を初のEURO優勝に導いた。


ロナウドの活躍に発奮したのかは分からないが、その後国民の復帰を望む声に応えて代表復帰したメッシは、ワールドカップ・ロシア大会の出場権をかけた南米予選の最終戦、負ければ予選敗退となる状況でハットトリックを達成するなどの活躍でチームを本大会出場に導いた。


だからこそファンは期待したはずだ。ロシアで彼が活躍し、準優勝に終わった前回大会での屈辱を晴らしてくれると。しかしここまでメッシは無得点と結果を残せず、チームもグループリーグ敗退の危機に瀕している。

初戦のアイスランド戦ではPKを失敗し、2戦目のクロアチア戦では90分を通してシュート1本に抑えられた。一方ロナウドは2試合で4得点を叩き出し、2試合連続で「マン・オブ・ザ・マッチ」を受賞しておりまさに大車輪の活躍を見せている。


沈黙するメッシと躍動するロナウド。ここまではメッシよりもロナウドがチームを勝利に導くことができる選手であり、優れた選手であるように思われるがその考えはあまに単純すぎるし、重要なポイントを見落としている。

最初に、4年前のブラジルW杯でメッシは4ゴールを記録し、チームを決勝に導いている。一方、ロナウドは1ゴールしか決められずチームもグループリーグ敗退に終わっている。


さらに重要なことは今大会におけるポルトガルとアルゼンチンのパフォーマンスである。両チームの完成度の高さには雲泥の差がありそれがロナウドとメッシのパフォーマンスに大きく関係している。

ポルトガルの強みは強固なディフェンスや戦術理解度の高さ、ボール奪取からの高速カウンターである。ロナウドがあまり守備にかかわらずともチームが機能し、彼がゴールを取ることに専念できる環境があるのもこの戦術がベースにあるからである。


一方、アルゼンチンはクロアチアとの試合で明らかになったように、ディフェンスに問題を抱えておりチームの方向性や構成もはっきりしない。ドローに終わったアイスランドとの初戦から大幅に変えたメンバーも機能せず、メッシが孤立する状況も改善が見られない。


両選手のプレーデータを見てもこの差は明らかである。強豪スペインとの初戦ロナウドは相手ペナルティエリアで前後半合わせて8回ボールを受ている一方、メッシはクロアチアとの試合で前後半合わせて4回しかボールをペナルティエリアで受けられず、すべてロストしている。

元イングランド代表のマーティン・キーオンもメッシがロナウドように輝けていない現状について、「正しいシステムを見つけられていないサンパオリが責任を負うべきだ」との見解を示している。


ロナウドはメッシよりも優れた選手かもしれないが、直近の2試合だけではそれを決めつけることはできないだろう。今まで述べたようにそもそもチームとしての力に大きな差があるためだ。ただ目に見える結果を出しているのはロナウドだ。

22日に行われるナイジェリア代表とアイスランド代表の結果次第ではますますグループリーグ敗退に近づくアルゼンチン。26日に行われる第3戦のナイジェリア戦でメッシはチームを救うことはできるのだろうか。