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選手経験が無くても世界的名将に。新時代を切り開いた“プロ経験がない”名指揮官8選

ブンデスリーガの史上最年少監督であるホッフェンハイムのユリアン・ナーゲルスマン監督が昨年7月下旬にドイツ最優秀監督に選出されたことが国内外で大きな話題を呼んでおり、クラブを史上初となるCLの舞台に導いた同監督の手腕に注目が集まっている。そこで今回はサッカー界のプロ選手経験のない指揮官を紹介する。

ユリアン・ナーゲルスマン
国籍:ドイツ

主なクラブ経歴
 2010-2011 ホッフェンハイムU17
 2013-2016 ホッフェンハイムU19(2016年2月トップチーム昇格)
 2016-   ホッフェンハイム(2016年2月就任)

主な獲得タイトル なし

相次ぐ負傷に悩まされて20歳で現役引退を決断したナーゲルスマンは、ホッフェンハイムの下部組織で指導者キャリアを着実に積み上げると、2016年2月に28歳というブンデスリーガ史上最年少の若さでホッフェンハイムのトップチーム指揮官に就任する。当初は昨季から監督就任の予定だったものの、前監督のフーブ・ステフェンスが健康上の理由で退任を余儀なくされたことにより2015/2016シーズン途中からの登用となった。そのナーゲルスマンは2月の時点で17位と降格圏に沈んでいたチームを見事に立て直して残留を勝ち取ったほか、クラブ史上初となるバイエルン戦勝利という快挙を成し遂げている。また昨季は第17節までリーグ戦無敗をキープしたことで話題を呼び、4位フィニッシュでクラブ史上初となるCL出場権(プレーオフからの参戦)を獲得。さらに同監督は30歳という若さで2017年のドイツ年間最優秀監督に輝いている。

アリゴ・サッキ

国籍:イタリア

主なクラブ経歴
 1985-1987 パルマ
 1987-1991 ミラン
 1991-1996 イタリア代表
 1996-1997 ミラン(1996年12月就任)
 1998-1999 アトレティコ・マドリード(1999年2月解任)

主な獲得タイトル
・UEFAチャンピオンズカップ(1988/1989、1989/1990-ミラン)
・セリエA(1987/1988-ミラン)

1982年に監督キャリアをスタートさせたサッキは、1985/1986シーズンにパルマをセリエBに昇格させると、ベルルスコーニ会長によってミランに招へいされる。そのミランでは「ゾーン・プレス」による攻撃サッカーに重点を置いた戦術を浸透させると、就任初年度である1987/1988シーズンにセリエA制覇、さらに翌シーズンからチャンピオンズカップ連覇を成し遂げるなど名将として名を馳せる。その後はイタリア代表監督として1994年のワールドカップで準優勝に貢献するものの1996年のEURO出場権を逃した責任をとる形で辞任している。

ジョゼ・モウリーニョ

国籍:ポルトガル

主なクラブ経歴
 2000    ベンフィカ(2000年12月辞任)
 2001-2002 ウニオン・レイリア(2001年4月就任 2002年1月退任)
 2002-2004 ポルト(2002年1月就任)
 2004-2007 チェルシー(2007年9月退任)
 2008-2010 インテル
 2010-2013 レアル・マドリード
 2013-2015 チェルシー(2015年12月解任)
 2016-   マンチェスター・ユナイテッド

主な獲得タイトル
・チャンピオンズリーグ(2003/2004-ポルト 2009/2010-インテル)
・ヨーロッパリーグ(2016/2017-マンチェスター・ユナイテッド)
・UEFAカップ(2002/2003-ポルト)
・イングランドプレミアリーグ(2004/2005、2005/2006、2014/2015-チェルシー)
・FAカップ(2006/2007-チェルシー)
・セリエA(2008/2009、2009/2010-インテル)
・コッパイタリア(2009/2010-インテル)
・リーガ(2011/2012-レアル・マドリード)
・コパ・デル・レイ(2010/2011-レアル・マドリード)

24歳で現役生活に見切りをつけたモウリーニョは、語学留学を経て1993年にスポルティングでボビー・ロブソン監督のもと通訳を務める。そのロブソンのバルセロナ指揮官就任とともにバルセロナのスタッフ入りを果たすと、1997年にはファン・ハール監督のもとでアシスタントコーチを務めリーガ連覇に貢献。その後、2000年にベンフィカで監督キャリアをスタートすると、2003/2004シーズンにポルトでCL制覇を果たし、一気に欧州での評価を上げている。チェルシーでは2回に渡る任期で3度のプレミア制覇、そして2008年から2シーズン監督を務めたインテルでは2009/2010シーズンにCL制覇を含めた3冠達成を成し遂げている。そのモウリーニョはチェルシー解任後の空白期間を経て、昨季からユナイテッドの指揮官に就任。そのユナイテッドでは史上初となるELタイトルを獲得している。

レオニード・スルツキー

国籍:ロシア

主なクラブ経歴
 2005-2007 FCモスクワ
 2007-2009 KSサマーラ
 2009-2016 CSKAモスクワ(2016年12月辞任)
 2015-2016 ロシア代表
 2017-   ハル・シティ

主な獲得タイトル
・ロシア・プレミアリーグ(2012/2013、2013/2014、2015/2016-CSKAモスクワ)
・ロシア・カップ(2010/2011、2012/2013-CSKAモスクワ)

左ひざの負傷により19歳にして現役引退を余儀なくされたスルツキーは、FCモスクワとKSサマーラの監督を経て、2009年にわずか38歳ながらも国内強豪のCSKAモスクワ指揮官に就任。国内リーグで低迷するクラブの再建を託されるとそのリーグ戦では5位フィニッシュで来季EL出場権を獲得。さらにはCLでは見事ベスト8まで勝ち進んでいる。CSKAモスクワでは2010年1月から2013年12月まで本田圭佑を指導しており、スルツキーは同選手をサイドやトップ下など攻撃的なポジションで多くの出場機会を与えている。また2012/2013シーズンには国内3冠を成し遂げており、2015年8月にはCSKAモスクワと兼任する形でロシア代表監督にも就任。ただ昨季にCL予選敗退に加えて国内リーグで3位に甘んじていたことを受けて昨年12月にCSKAモスクワ監督を辞任。今季より英2部チャンピオンシップのハル・シティ指揮官に就任している。

アンドレ・ビラス・ボアス

国籍:ポルトガル

主なクラブ経歴
 2009-2010 アカデミカ・コインブラ(2009年10月就任)
 2010-2011 ポルト
 2011-2012 チェルシー(2012年3月解任)
 2012-2013 トッテナム(2013年12月解任)
 2014-2016 ゼニト・サンクトペテルブルク(2014年3月就任)
 2016-2017 海上港

主な獲得タイトル
・ヨーロッパリーグ(2010/2011-ポルト)
・スーペル・リーガ(2010/2011-ポルト)
・タッサ・デ・ポルトガル(2010/2011-ポルト)
・ロシア・プレミアリーグ(2014/2015-ゼニト・サンクトペテルブルク)

スカウティングや統計分析を専門にしていたアンドレ・ビラス・ボアスは、モウリーニョ監督のもとポルト、チェルシー、そしてインテルの3クラブでチームスタッフの1人として働く。インテルでチームスタッフとして働いていた2009/2010シーズンの途中にポルトガル1部のアカデミカ・コインブラから声がかかり、初めてクラブチームでの監督に就任。最下位に沈んでいたコインブラを1部残留に導く。翌シーズンには幼い頃からファンだったポルトを率いると、ELタイトルを含めた4冠達成を成し遂げる。そして2011年に33歳という若さにしてチェルシー監督に就任、プレミア初挑戦を果たすものの成績不振で解任。アンドレ・ビラス・ボアスは翌シーズンにはトッテナムでも解任の憂き目に遭っており、現在は上海上港の指揮官を務めている。なお、16歳の時にポルトのボビー・ロブソン監督に対し、同監督の選手起用に異論を唱える内容の手紙を送ったことによってスカウトとしての才能を買われたことは有名な話だ。

ロガー・シュミット

国籍:ドイツ

主なクラブ経歴
 2011-2012 SCパーダーボルン
 2012-2014 レッドブル・ザルツブルク
 2014-2017 レバークーゼン(2017年3月解任)
 2017-    北京国安

主な獲得タイトル
・オーストリア・ブンデスリーガ(2013/2014-レッドブル・ザルツブルク)
・オーストリア・カップ(2013/2014-レッドブル・ザルツブルク)

2005年にアマチュアクラブでの現役生活に幕を閉じたシュミットは、システムエンジニアの仕事を行いつつアマチュアクラブの監督を務めるものの、ドイツ4部のSCプロイセン・ミュンスター監督就任に伴い、監督業に専念。2011/2012シーズンにはドイツ2部のSCパーダーボルンを率いてクラブを5位に導くと、その手腕を評価したオーストリア1部のレッドブル・ザルツブルクにわずか1シーズンで引き抜かれる。そのザルツブルクでは2013/2014シーズンに国内リーグ戦・カップ戦の2冠を達成したほか、ELでもベスト16まで勝ち進むなど結果を残す。そして2014年にはレバークーゼン指揮官に就任し自身初のブンデスリーガ挑戦権を得ると、就任初年度からプレッシングに重点を置いた戦術がはまり、2シーズン連続でCL出場権獲得に成功。ただ昨季は主力の相次ぐ離脱もあり、一時は残留争いに巻き込まれるなど苦しいシーズンとなり、昨年3月に解任されている。

マウリツィオ・サッリ

国籍:イタリア

主なクラブ経歴
・2012-2015 エンポリ
・2015-    ナポリ

主な獲得タイトル なし

銀行員として働く傍らでアマチュアクラブの監督も務めていたサッリは、2000年に監督業に専念するため銀行の職を辞める。イタリア6部のACサンソビーノで監督業をスタートさせると、セリエBやセリエC1などを中心にのべ9クラブを渡り歩く。そして2012年夏にエンポリの指揮官に就任すると2013/2014シーズンにセリエA昇格へ導く。さらに翌シーズンにはサッリにとって初挑戦となったセリエAでナポリやローマなど強豪クラブに引けを取らない戦いを披露し見事8位でフィニッシュ。国内外からその手腕が高評価されると、2015年夏にナポリが同監督の引き抜く。ナポリのアウレリオ・デ・ラウレンティス会長はサッリ招へいを決断した理由にプロとしての謙虚さを挙げている。昨季はベルギー代表FWドリス・メルテンスのポジションをコンバートさせたことにより、ユベントスに移籍したアルゼンチン代表FWゴンサロ・イグアインの穴をシーズン通して埋めることに成功。ナポリでもセリエAやCLで好成績を残しており、あのナポリの英雄マラドーナ氏からも高評価を受けている。

アルベルト・ザッケローニ

日本代表のアルベルト・ザッケローニ 写真提供:Getty Images
国籍:イタリア

主なクラブ経歴
 1995-1998 ウディネーゼ
 1998-2001 ミラン(2001年3月解任)
 2001-2002 ラツィオ(2001年10月就任)
 2003-2004 インテル(2003年10月就任)
 2006-2007 トリノ(2006年9月就任 2007年2月解任)
 2010    ユベントス(2010年1月就任 2010年5月解任)
 2010-2014 日本代表
 2016-2016 北京国安(2016年5月解任)

主な獲得タイトル
・セリエA(1998/1999-ミラン)
・アジアカップ(2010/2011-日本代表)

病気や怪我などにより20歳になる前に選手キャリアに別れを告げたザッケローニは、家業のペンション経営や保険代理店の仕事を行いながら、地元の幼年チームの指揮を執るなど監督業も務めていた。1983年にセリエC2のチェゼナティコ指揮官として監督業を本格的にスタートさせると、数々のクラブを転々と渡り1995年夏にウディネーゼの監督に就任する。ザッケローニは自身にとってセリエA初挑戦となったウディネーゼで1997/1998シーズンにリーグ戦3位と好成績を収め、来季UEFAカップ出場権獲得に成功。これで監督としての名声を上げたザッケローニは翌シーズンからミランを率いると就任初年度でセリエA制覇を成し遂げる。ただそれ以降は再び思うように結果を残せず、ラツィオ、インテル、トリノ、ユベントスとクラブを転々と変える。2010年の南アフリカワールドカップ以降は日本代表の監督を務め、2011年1月にはアジアカップを制覇。ただ2014年のブラジルワールドカップでは本大会予選で敗退し、大会終了と同時に日本代表監督を退任している。


名前:菊池大将
趣味:サッカー観戦、映画鑑賞、読書
好きなチーム:ACミラン
幼少期に父親の影響でミランが好きになりました。アイドルはシェフチェンコ。パッション、データ、経済、カルチャー、サッカーの持つ様々な表情を見るのが好きです。よろしくお願い致します!

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