Jリーグ 北海道コンサドーレ札幌

ジェイ・ボスロイドが語る日本サッカー。フットボールの母国からやってきた男がJ文化と日本人のコミュニケーションスタイルについて語り尽くす【独占インタビュー】

「欧州ではサッカーは単なるスポーツではない」

プレミアリーグ時代のジェイ・ボスロイド 写真提供:Getty Images

―― 欧州や、おそらく世界の他国ではサッカーは単なる「スポーツ」以上のものだと思われています。一方で、日本では単にひとつのスポーツだとみなされていると感じられますか? 欧州ではサッカーは独自の文化で、エンターテインメントのひとつの形として、単に試合やピッチ上で起こることの域を越えた存在です。選手やファンがスタジアム外で自分たちを表現することも、欧州ではサッカーが語られる上での大きな部分を占めており、サッカー文化をより日常生活に近づけるような話の広がりを加えています。それに対して日本では、主に週末の娯楽でしかありません。少なくとも我々欧州人の視点では、それが日本のサッカーに何か足りない部分だと考えられるでしょうか

JB:何かが足りないのかどうか確かなことは言えないが、確かにサッカー文化というものの中で、人々の意見は大きな部分を占めている。誰かが良いと考える選手を、自分は良いとは思えないかもしれない。そういう意見や、なぜそう考えるのかについて議論することもサッカーの楽しい部分のひとつだ。確かに、日本にももう少しそういう部分があってもいいかもしれない。

―― 北海道コンサドーレ札幌での経験は、今のところどうですか?

JB:札幌の新しいチームメートのみんなは素晴らしいよ。稲本はイングランドでも数年プレーしていたから、彼とはコミュニケーションを取ることができる。彼はイングランドの選手がどういうものなのか知っているからね。コンサドーレとは2年前に磐田のホームで対戦したことがあった。ファウルを受けて少し腹が立ったのを覚えているが、シンジ(小野)が僕のところに来て、「ヘイ、ジェイ。ちょっと落ち着いて…」と言ってきた。彼も英語が上手なんだとその時に分かったよ(笑)。シンジは海外でも素晴らしいキャリアを過ごしてきたし、今でも日本で最高の選手の一人だ。英語も話せるので大きな助けになってくれている。ここにいることを楽しめているよ。ジュビロが2015年に札幌で試合をした時には負傷していたので、ここに来たのはこの夏が初めてだった。札幌はすごく良い町だね。

―― 練習を見ていても、すごく楽しめている様子が分かりました。何人かの選手にジェイ選手のことを質問しましたが、実はすごく優しいタイプなので驚いたと言っていましたよ(笑)

JB:ええと…(笑)。僕は普通の人間だよ。他のみんなと同じように悩みもあるし、特別な人間じゃない。自分の仕事が大好きで、サッカーが大好きだ。練習ではいつも最初にピッチに出て、最後まで残っていることが多い。日本のサッカーは基本的に狭い世界で、何か話をすれば噂になるけど、普段の暮らしの中では実際に会ってから人のことを判断すべきだ。札幌では、磐田の時と同じように、すぐにチームメートと仲良くなることができた。すごく心地よく過ごさせてもらっている。ディナーに誘われたり、ジョークを言って笑い合ったり、本当に楽しく元気に過ごせている。野々村社長もすごく良くしてくれて、歓迎されていると感じられる。僕が普通の人間ではないという見方がどこから来るものなのかは分からないが…(笑)。僕がピッチ上ではクラブのために全力を尽くすというのは、誰もが知っていることだ。

―― ジェイ選手のように経験豊富な外国人選手が、日本のサッカー文化の向上に貢献できるのはどういった部分でしょうか

JB:日本では、練習の前後に、クラブの若い選手たちと一緒に時間を過ごすようにしている。ピッチ上で何かをすることもあるし、彼らから色々と興味深い質問もされて、僕もできる限りのアドバイスを返している。ジュビロでは基本的に毎日、川辺や小林やその他の選手たちと話をしていた。一緒に長い時間を過ごしたことが、彼のプレー向上の助けになったと思いたい。それが日本のサッカーを発展させる助けになるのなら、自分の知っているどんなことでも共有したいと思う。日本で自分が受け入れられて、大きなものを受け取ったと感じているので、僕からも何かお返しをしたい。良いパフォーマンスを見せて、ファンを楽しませたいとも思うし、いくつかのトップリーグでプレーして得た経験も共有したい。日本のサッカーもレベルは高いが、欧州に比べれば、プロサッカーは比較的新しいものだ。今後はさらに多くの日本人選手が海外でプレーするだろうし、みんな素晴らしい選手たちだが、多くの選手にはまだ意識の面で足りない部分がある。先程も言われたように、欧州でのサッカーは「単なるゲーム」じゃない。文化でもあり、職業でもある。多くの人々にとって生計を立てる手段だ。一つひとつの試合や、勝ち点3を取れるかどうかが死活問題になる。だからこそ欧州では試合中や、あるいは練習中でさえも選手がケンカをすることが多い。お互いを嫌っているからではなく、単にそれも競争の一部だ。他のチームとの競争だけでなく、自分のクラブ内での競争もある。ピッチに立てるのは11人だけで、自分が先発メンバーに入りたいと誰もが望んでいるからだ。

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