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ジェイ・ボスロイドが語る日本サッカー。フットボールの母国からやってきた男がJ文化と日本人のコミュニケーションスタイルについて語り尽くす【独占インタビュー】

「プレミアリーグとセリエAが世界的に人気がある理由は強いエゴを持つ選手たちが集まっているからだ」

英国ではサッカーと日常生活を分けて考えることに慣れている 写真提供:Getty Images

―― 先程も言ったように日本のサッカーの環境では、メディアは一般的にそれほど批判的ではありません。ジェイ選手は今言われたような「何が何でも勝つ」姿勢に対して多少の批判を受けたこともあったのではありませんか?

JB:誰にでもそれぞれの意見があるものだ。結局のところ僕はストライカーで、ゴールを決めるために雇われている。日本では今までその仕事を順調に遂行できていたので、札幌でも続けていきたいと思っている。日本のサッカー文化はすごく独特で、それは社会全体にも言えることだと思う。守るべきヒエラルキーが存在し、エゴの強い人間はあまり歓迎されない。だがプレミアリーグやセリエAが世界的に人気なのは、各チームにそれぞれ異なるエゴを持つ選手が溢れていて、どの選手や監督にもそれぞれの性格やそれぞれの感情があるからだ。声の大きい選手も静かな選手も、傲慢な選手も謙虚な選手もいる。だが、それこそがサッカーの素晴らしいところで、異なる様々な個性をひとつに結びつけることができる。だから最高のクラブには、強いエゴを持った最高の選手たちをうまく管理できるような最高の監督が必要になる。だが強いエゴを持つということは、必ずしも悪い人間であることを意味するわけじゃない。ほとんどの場合は勝ちたいこと、負けたくないことがその根本にあって、それはもちろん僕にも当てはまることだ。それでもチームメートから嫌な奴だと思われたくはない。チーム内ではいつも友好的でポジティブな姿勢を持ち、笑顔でいるように努めている。負けた直後以外はね(笑)。サポーターに聞いてくれてもいいが、写真やサインやちょっとした会話を拒否したことは一度もない。気分が沈む状況は誰にでもあるが、ポジティブな姿勢でネガティブさを打ち消すことができるようにいつも努めようとしている。

―― 新たな国に行けばその文化に慣れなければいけないのは確かだと思います。自分たちの文化の良い面や、人間としての経験を伝えることも大事です。エゴについての話や、サッカーにおいては勝利のメンタリティーを生み出すだけでなくある程度楽しむことも大事だという話がありました。日本の文化のことは十分に尊重した上で、選手たちにはエゴが不足している部分もあると感じますか?

JB:答えにくい質問だね。「イエス」と言ってしまうと、日本の文化やこの国の多くの人々のあり方を尊重していないように取られてしまうかもしれない。だがもちろん僕は日本の文化を強く尊重している。この国の文化が大好きになったことが、ここにいたいと思う理由のひとつだからね。それでも、イギリス人としての僕の視点では、サッカーを日常生活とは分けて考えることに慣れている。練習場に入ったり、ピッチに立ったりすれば、ほとんどの選手は日常生活の場面とは別の人間になるものなんだ。その2つを区別することが受け入れられている。分かりやすい例をひとつ挙げてみよう。ロイ・キーンは、ピッチ上では嫌な選手だったと言えるだろう。屈強で、激しすぎるほどだった。だがピッチを離れた彼は本当に接しやすいタイプだ。欧州にはそういう選手がたくさんいる。日本では、そういう区別が理解されにくいように思えることもある。ピッチ上で荒っぽい選手は、日常生活でも同じなんだろうと思われるが、そういうわけじゃない。

―― ジェイ選手自身も、ピッチ上で時折見せる行動を通して、人間性を判断される部分がありましたか?

JB:うーん、まあそうだね。そういうこともあったと思う。自分がすごく感情的だということを隠すつもりはないし、それは誰もが知っている。だがチームメートはそういう部分を気に入ってくれて、そこからモチベーションを得てくれるような場合が多いのも確かだ。ファンも気に入ってくれている。僕は衝動に突き動かされるタイプの人間で、そういう選手でもある。周囲に悪い印象を与えたくはないので、自分の姿勢に気をつけるようにはしているが、結局のところ僕がいくら日本の文化を知りたいと望んで、日本の文化を大好きになって、そこから何かを学んで理解したいと望んだとしても、決して自分が日本人にはなれない。僕は別の国で育ってきた。変わること、適応することには時間が必要で、決して一晩では達成できない。どの選手もピッチに立つ時には勝つつもりでいると思うが、その捉え方は各自によって違っている。僕としては、ピッチ上でやる全てのことがチームの勝利を助けるためのことだ。もちろんチームがゴールを決めれば、感情を隠すことはない。選手たちも普通の人間で、仕事の悩みもあるし、家庭や日常生活に悩みがあるのも他の人々と同じだ。

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