アジア Jリーグ

なぜ鹿島は石井監督を解任したのか。浦和を救った“戦犯”森脇の存在

なぜ鹿島は石井監督を解任したのか

 埼玉スタジアムでの決闘がハッピーエンドに終わった一方で、茨城県立カシマサッカースタジアムでは悲劇があった。鹿島はアウェイ・広州での1-0の敗戦を取り戻すべく、完璧なパフォーマンスが必要だった。まったく悪い試合ではなかったのだ。前半にFWペドロ・ジュニオールが合計スコアをタイにした。しかし、スローインでの注意を欠いてしまった。そして、ブラジル代表で最もスキャンダラスな選手でもある広州恒大のMFパウリーニョが、鹿島がなんとしても避けなければならなかった重要なゴールを決めた。Jリーグ王者の鹿島はさらに2ゴールが必要となったが、最終的に途中出場のMF金崎夢生による1得点に終わっている。今シーズンの大きな目標を失った結果、同クラブは翌日に石井正忠監督の解任を発表。後任は大岩剛コーチが務めることとなった。

 突然の解任発表は、多くの人を驚かせた。なぜJ1の中で最も高い61%の勝率を持つ監督が解任されるのか。なぜクラブをJリーグタイトル獲得と驚くべきFIFAクラブワールドカップ準優勝に導いた人物を放棄するのか。奇妙な決定に思われたが、事態の背景を深く見れば実際には意味が通るのだ。昨年、石井監督は2度クラブを離れかけた。1度目は、金崎との熱いディスカッションの後。2度目は、シーズンの終わりに。Jリーグ第2ステージでの無残な結果を受けて、理事会はすでに2017年に向けて石井監督に代わるブラジル人監督の雇用を検討していた。優勝決定戦を勝つことは僅かな期待であったが、小さな奇跡が起こって同監督が仕事を続けたのだ。最終的に考えれば、その当時に彼が解雇されていたなら意味が通らなかっただろう。

 今シーズン、鹿島はさらなるタイトルを目指した。とりわけ史上初となるACLタイトルだ。チームを強化するために大きな投資が行なわれたが、シーズンのほぼ中間に来てチームはまだポテンシャルを発揮していない。得点は少なく、ホームで勝てず、結局ACLトロフィーも逃した。石井監督にはプレッシャーが大きく圧し掛かり、期待されるものを届けることができなかった。

 最後になったが大切なこととして、川崎Fが残っている。埼玉と茨城の嵐に比べ、川崎Fはこの決勝トーナメントで快適な風を起こしてきた。ムアントンはMFチャナティプ・ソングラシンが2ndレグに出場せず、“神奈川のブルー&ブラック”にとても対抗できなかった。現在自身のキャリア史上最も良いプレーをするFW小林悠は、1ゴール2アシストで4-1の大勝をもたらし2戦合計7-2とした。川崎Fはサウジアラビアのアル・ヒラルと並んでこのACL無敗のクラブとなる。浦和、広州恒大、上海上港集団足球俱楽部のような相手に対し、決勝に到達する見込みが高いとはいえないが、少なくともサッカーの質は劣っていない。

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