
全国高校サッカー選手権宮城県大会で優勝し、全国大会出場を決めた仙台育英高校サッカー部で、3年生の男子部員がイジメを受けていたことが報じられた。近年、強豪校のサッカー部で暴言やハラスメントが表面化するケースが増えている。2022年には熊本県立大津高校で上級生による「全裸土下座事件」が発覚しており、いずれも全国常連の名門校だ。
両校は多くのJリーガーを輩出してきた実績を持つが、勝利至上主義が部員の尊厳を脅かす構造的課題を抱えている。ここでは2校の事例を手がかりに、強豪校の課題と出場辞退をめぐる是非を整理する。

仙台育英の暴言事件
仙台育英高校サッカー部では、1年生の頃から上級生部員が特定の部員に対して暴言を浴びせ続けていた。「うざい」「デブ」などの言葉が日常的に繰り返され、被害生徒は2024年に抑うつ症状と診断され、現在も通院を続けているとされる。
事件が表面化したのは2025年10月14日。被害生徒が「部活に出られない」と顧問に相談したことで、学校はいじめ防止対策推進法に基づき「重大事態」として調査を開始した。加害者は同学年の複数の部員であり、現在も調査が続いているようだ。
この時期、チームは県大会の佳境を迎えていた。11月2日の決勝で聖和学園を下し、2年ぶり38度目の優勝を果たしたが、学校は全国大会への出場を「保留」とした。被害生徒と保護者の了承を得て試合に臨んだと説明しているが、世論からは「出場を辞退すべきだ」との声も上がっている。
加藤聖一校長は11月1日付で全保護者に宛てた文書の中で、「『イジリ』と称される不適切な言動が繰り返されていた」と報告し、「被害を受けた部員に心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。その上で、「イジリ」と「イジメ」の線引きの曖昧さを課題として指摘し、指導体制の見直しを約束している。
さらに、同校は11月8日に予定されていた高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ東北の試合を棄権した。この結果、対戦相手のベガルタ仙台ユースが不戦勝となり、プレミアリーグプレーオフ出場を決めた。

大津の土下座強要事件
一方、大津高校サッカー部では、2022年1月の全国大会出場を前に、1年生部員が上級生から全裸での土下座を強要され、その様子をスマートフォンで撮影されたと報じられた。発端は些細な口論だったが、被害者は精神的な苦痛から転校を余儀なくされた。
第三者委員会は2025年10月31日、この行為を正式に「イジメ」と認定。事件から実に3年8か月を要した。被害者は「サッカーを続けたかった」と語っていたが、その希望は学校と指導陣の対応によって絶たれた。
当時チームを指導していた平岡和徳テクニカルアドバイザーは、「外部指導者の立場のためコメントできない」として沈黙を貫いた。平岡氏は過去に「1000日かけて怪物を育てる」と語るなど勝利至上主義的な指導哲学を公言していたが、事件後は説明責任を果たしていない。皮肉にも、大津はその後、2024年の高円宮杯U-18プレミアリーグファイナルで県立校として初めて日本一となり、平岡氏は選手に胴上げされた。栄光の陰で、かつての被害者が取り残されたままだった。
大津も全国高校サッカーの常連強豪校だが、イジメ認定後も学校側の具体的な再発防止策は公表されていない。加害とされた元上級生2人は、強要罪で刑事裁判の初公判に臨んだが、「全裸での土下座を強要していない」と無罪を主張していることが報じられている。
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