
10月18日に行われたJ1第34節横浜F・マリノス対浦和レッズ戦(日産スタジアム/4-0で横浜FM勝利)で、副審の肩を小突いた浦和MF金子拓郎。Jリーグは21日、同選手に対し出場停止4試合および罰金40万円の懲罰を科すと発表した。判定への抗議としての接触だったが、審判への身体的行為は世界的に競技の公平性や安全を損なう行為として「越えてはならない一線」とされている。
問題の行為は後半46分、試合終了間際に発生。金子は副審に対して不満を示す形で軽く肩を押し、主審から一発退場を命じられた。この場面は3万6,000人を超える観客とDAZNの中継で目撃され、SNS上では「審判への暴力」「ただの抗議」など意見が分かれた。
Jリーグが下した処分は妥当なのか、それとも“大甘”なのか。ここでは、事件の経緯と懲罰基準、過去および海外の事例を踏まえ、今回の判断の是非を検証する。

審判接触への懲罰基準と適用
Jリーグの懲罰基準は、審判に対する行為を2段階に区分している。
(1)攻撃的・侮辱的または暴力的な言葉・ジェスチャー=最低4試合の出場停止および罰金
(2)暴行(肘打ち、パンチ、蹴り、噛みつき、唾を吐く、殴打など)=最低12か月の出場停止および罰金
金子の行為は「小突き程度の接触」と判断され、前者に該当。これが暴行と認定されていれば、1年もの長期停止になっていた可能性もある。
クラブの独自対応と選手像
浦和は試合の翌19日に金子をチームから一時離脱させたが、規律委員会の裁定後に再合流を認めている。天皇杯とルヴァンカップをすでに終えていたため、今回の4試合停止により、実質的に今季はシーズン終了となった。
また、浦和はクラブ独自の対応として、田口誠代表取締役社長と堀之内聖スポーツダイレクターの報酬10%を2か月間自主返納。金子本人も給与の一部返納を申し出たことが報じられた。
今季、ベルギーのKVコルトレイクから完全移籍で加入した金子は、ここまで33試合中28試合に先発。警告わずか2枚のフェアプレーな選手として知られ、今回の行為は“らしくない”一面だった。
日本サッカー界では稀な“審判暴行”
審判への暴力行為は日本では極めて稀だ。Jリーグ創設前の1991年、コニカカップで全日空サッカークラブ(横浜フリューゲルスの前身)のDF田口禎則が審判を殴打し、当初は永久追放も検討された。最終的に出場停止1年(後に7か月に短縮)となったが、当時の社会的衝撃は大きかった。
プロ化から30年以上を経て、同種の行為が再び注目されるのは異例である。
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