その他 Jリーグ

J2昇格争い中の栃木シティ。スタジアム減免措置が退けられた理由

CITY FOOTBALL STATION 写真:Getty Images

Jクラブに「公共性」はないのか

エスコンフィールドは北広島市に大きな経済効果をもたらし、単なる球場ではなく商業施設や観光資源を組み合わせた複合開発であった。

一方、栃木シティのCFSはサッカー専用スタジアムとしての規模や影響力が限定的で、クラブ運営会社の利益追求のための施設とみなされた。

CFSの所有者は民間企業「日本理化工業株式会社」、主たる利用者も民間企業「株式会社THE TOCHIGI CITY UNITED」。裁判所はこれを「特定の民間企業が所有し、別の民間企業が独占的に使用する施設」と判断した。

また、CFSの収容人数約5,000人は、エスコンフィールドの約35,000人に比べ小規模で、地域経済への波及効果も限定的とみられた。加えて、栃木市の市民訴訟が公共性審査を厳格化し、裁判所が「客観的根拠」を強く求めたことも影響したと考えられる。

スポーツ施設は地域経済やコミュニティ活性化の起爆剤と期待されるが、公共性の立証は課題であり、経済効果の予測や市民合意、自治体支援は不可欠である。


田中パウロ淳一 写真:Getty Images

栃木シティにとって公共性を高める好機

2024年にJFLを制しJ3へ昇格した栃木シティは、今季はJ2昇格争いの中心として注目を集めている。クラブは黒字経営を維持するものの、CFSの運営には固定資産税や公園使用料の負担が重くのしかかる。

国が推進するスポーツを通じた地方創生の中で、公共性を立証し市民の理解を得ることは容易ではない。特にJ3クラブはプロ野球に比べ観客動員・経済規模が小さく、自治体にとって投資対効果が見えにくい。

一方で、FW田中パウロ淳一のように、ピッチ内外で話題を集める選手も現れ、その存在がクラブ人気を押し上げている。栃木シティとしては、自治体との連携を深め、地域に根差した活動で公共性を高める好機だ。地方創生の成否は経済効果だけでなく、地域の誇りや一体感をいかに醸成するかにかかっている。固定資産税の減免は現状見込みが薄いが、別の形での自治体支援が望まれる。

ページ 2 / 2

名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

筆者記事一覧