
解決策と今後の展望は?
審判の育成と報酬改善
審判の質を向上させるためには、JFAによる審判育成プログラムの拡充と報酬の改善が必要だ。Jリーグの審判報酬は、欧州のトップリーグに比べて低く、モチベーション低下の原因となっている。待遇を改善し、プロフェッショナルレフェリー(PR)の数も増やし、VAR専任のトレーニングを行うことで、J2・J3でもVAR運用が実現可能になるかもしれない。
プレミアリーグの主審の平均年俸は17万ポンド~18万ポンド(約3,300万円~約3,500万円)、トップレフェリーともなれば25万ポンド(約4,900万円)程度と報じられている。
一方、現在のJリーグの審判報酬は、J1リーグの主審が1試合あたり15万円、副審が8万円、第4審が3万円、VARが6万円、AVARが3万円。J2の主審が7万円、副審が4万円、第4審が1万7,000円。J3の主審が5万円、副審が3万円、第4審が1万5,000円となっている。これらの報酬には交通費や宿泊費が別途支給されるが、特にJ2以下では報酬の低さが課題となっている。
PRの年俸については、2025年からJFA審判マネジャーに就任した元PRの西村雄一氏が、スカパー!の『Jリーグラボ』にゲスト出演した際、MCの野々村芳和Jリーグチェアマンから話を振られ「一般企業の管理職くらい」と語り、野々村氏は「1,000万円ちょっと」と付け加えた。
今季からPRは19人から24人へ増員され、手当制度は廃止され基本給へ移行したものの、その報酬は公表されていない。しかし、W杯も含む国際審判員も務めたトップレフェリーだった西村氏の過去の報酬から、高くとも1,000万円前後と推測できるだろう。
この報酬格差は、Jリーグの審判のモチベーション維持や人材確保の大きな課題となっている。特にJ3では試合数が多くても報酬が低く、審判のプロ化が進みにくい状況にある。このため、若手審判の育成やPRの拡充が急務であることは明らかだろう。

簡易型VARの導入検討
現時点でIFAB(国際サッカー評議会)が公式に採用しているものではなく、あくまで構想・提案段階のアイデアであるが、J2・J3でのVAR導入に向けた妥協策として、簡易型VARの採用が一案として挙げられることがある。例えば、1人のVAR審判が特に重要なシーン(ゴールやPKなど)に限定して確認する方式であれば、人材やコストの負担を軽減できる可能性があるだろう。
また、一部のファンからは「DAZNの映像を使えばよい」という声もあるが、VARの運用はIFAB(国際サッカー評議会)が定める「VARプロトコル」に基づいており、特定の機材・映像品質・運用基準を満たす必要がある。放送用の映像はエンターテインメント目的で撮影されており、審判判定に必要な多角的・高精度な映像を常に保証できるわけではない。そのため、FIFAやAFCのガイドラインでは、VAR判定用には専用の映像フィードを用いることが求められている。
比較としてよく挙げられる大相撲では、1969年夏場所からビデオ判定が導入され、NHK中継映像を参考にしている。これは直径4.55メートルの土俵という競技環境が、小規模なカメラ配置でも十分にカバーできるためで、広大なフィールドを持つサッカーには単純に適用できない。
日本プロ野球(NPB)も2018年から監督のリクエストによるリプレイ検証を導入し、テレビ局の中継映像を利用している。しかし、2023年5月28日の楽天対日本ハム戦では、タッチアップの離塁を確認する映像がなく判定変更ができなかった事例があった。これは、中継映像のみを判定材料とする際の限界を示した例といえる。
こうした背景からも、FIFA推奨サイズである105m×68mのピッチを持つサッカーで、中継映像だけをVARに流用するのは現実的ではない。
加えて、ボールにチップを内蔵するゴールラインテクノロジー(GLT)の導入も有効な選択肢となる。これはVARよりも早く導入された判定補助システムで、ライン上のイン・アウト判定を自動化できる。ただし、スタジアムあたり数千万円規模の初期導入費がかかるため、低コストというよりは、対象判定が限定される分、VARよりも運用が簡素なシステムといえる。

Jリーグ全体での財政支援
Jリーグが将来的にVAR導入のための財政的支援を行う可能性も議論されている。例えば、既存の分配金制度の一部を活用し、J2・J3クラブのインフラ整備を後押しする仕組みを整えれば、リーグ全体の公平性が向上する可能性がある。ただし、これにはクラブ間の利害調整が必要であり、現時点で具体的な補助制度が決まっているわけではないため、実現には時間を要するだろう。
J1での誤審は、VARの運用における人的判断の限界や技術的制約に起因する。一方、J2・J3リーグでは、人材不足、資金面の制約、技術的インフラの不足がVAR導入の障壁となっている。冒頭で示した誤審の議論は、これらの課題を浮き彫りにした。簡易型VARやゴールライン技術の導入、審判の育成、財政支援を通じて、Jリーグ全体での判定の公平性を高める努力が求められるのではないだろうか。
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