Jリーグ 湘南ベルマーレ

湘南ベルマーレが首位町田ゼルビアを撃破。堅守攻略の立役者は

池田昌生(左)鈴木雄斗(中)鈴木章斗(右)写真:Getty Images

2024明治安田J1リーグ第26節の計10試合が、8月10日から12日に各地で行われた。湘南ベルマーレは11日、敵地町田GIONスタジアムにて町田ゼルビアと対戦。最終スコア1-0で勝利している。

7月の公式戦4試合全勝に加え、同リーグ首位の町田をも撃破した湘南。J2リーグ降格圏(18位以下)との勝ち点差1の16位に沈んでいるが、直近の公式戦6試合無敗(5勝1分け)と好調を維持している。

今季J1リーグ全20チーム中、最多タイの無失点試合数(12試合)を誇る町田の堅守をいかに破ったのか。ここでは第26節町田戦を振り返るとともに、湘南の勝因を中心に論評する。


町田ゼルビアvs湘南ベルマーレ、先発メンバー

周到だった町田の守備

両チームの基本布陣は、町田が[4-4-2]で湘南が[3-1-4-2]。最終ラインからパスを繋ごうとする湘南に対し、町田がオ・セフンと藤尾翔太の両FW(2トップ)を起点にハイプレスを仕掛けた。

オ・セフンと藤尾のいずれかが湘南MF田中聡(中盤の底)を捕捉したうえで、もう一方が湘南DFキム・ミンテに寄せる。湘南3バックの左右を務めるDF髙橋直也とMF鈴木淳之介には、相馬勇紀とナ・サンホの両FW(両サイドハーフ)がアプローチ。湘南のパス回しを片方のサイドへ誘導し、ウイングバックにボールが渡った瞬間に町田のサイドバック(林幸多郎と鈴木準弥の両DF)がそこへ素早く寄せる。これが町田の主な守備の段取りだった。

前半17分には、DFキムの横パスを受けた髙橋に相馬が寄せ、湘南右ウイングバック鈴木雄斗へのパスを誘発。タッチライン際でボールを受けた鈴木雄斗に町田の左サイドバック林が寄せると、センターサークル付近で再びボールを受けた髙橋にオ・セフンが付く。その後髙橋からボールを奪った林、相馬の順でパスが繋がり、相馬のクロスに反応した藤尾が湘南GKソン・ボムグンを脅かすシュートを放っている。オフサイドと判定されたが、町田の周到な守備がチャンスに繋がったのは確かだ。


鈴木雄斗 写真:Getty Images

鈴木雄斗、吉田の両WBを起点に反撃

前述の町田陣営の狙いを察知したのか、時間の経過とともに湘南の攻撃の初手がロングボールへ偏っていく。特に前半は町田陣営にロングボールを跳ね返されたうえ、田中が敵陣へ侵入した際も町田2トップのいずれかが帰陣してマークに付いたため、湘南のパスワークは困難を極めた。

こうした状況下でも湘南の攻撃配置には工夫が見られ、前半18分に右ウイングバックの鈴木雄斗が町田左サイドハーフ相馬の斜め後ろに立ち、味方センターバック髙橋からのパスを受け取っている。髙橋に寄せようとした相馬の斜め後ろを突く好プレーで鈴木雄斗が攻撃の起点となると、その後髙橋、キム、鈴木淳之介の順でパスが繋がる。最終的には鈴木淳之介のパスを受けたDF吉田新(左ウイングバック)がゴール前へクロスボールを送っている。このラストパスはシュートに結びつかなかったが、湘南が攻撃のリズムを掴んだ瞬間だった。

前半19分には、自陣右サイドでボールを奪った鈴木雄斗から湘南の攻撃が始まり、ここでも鈴木淳之介から吉田へのパスが繋がっている。この場面で相手サイドハーフとサイドバックの中間に立ち、どちらにも捕捉されない状況を作っていた吉田のポジショニングも良好で、同選手のクロスに反応したFWルキアンがヘディングシュートを放っている。町田GK谷晃生にシュートを阻まれたものの、ウイングバックの立ち位置の良さから生まれたビッグチャンスだった。

また、片方のサイドへ相手のパス回しを追い込みたい町田にとって、正確なロングパスが特長の鈴木雄斗は脅威に。前半26分には鈴木雄斗から逆サイドの吉田へのロングパスが繋がっており、町田は持ち前のハイプレスを無力化されている。町田に攻め込まれる時間帯もあったなかで、湘南の両ウイングバックが反撃の口火を切ったこと。これが同クラブの勝因のひとつだ。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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