
先手を取れたドイツ戦
では第1戦のドイツ戦はどうだったか。W杯優勝4回を誇るドイツに普段通りの4-2-3-1のシステムで対抗しようとした日本だったが、前半は想像以上に押し込まれることになった。
伊東と前田のスピードをいかしたカウンターからネットを揺らしたものの、その他に効果的な手は打てず。完全にボールを握られ、33分にはPKを決められ失点。0-1で終えたものの、前半アディショナルタイムのオフサイドとなった場面など、より大きな差がついても不思議ではなかった。
日本は後半開始から冨安を投入し、3-4-2-1へと変更。前半自由にしてしまったドイツのサイドバックを抑え、さらに攻撃的な選手を次々と投入していく。
一方のドイツは、前半で日本を推し量り、負けるはずがないと感じたことだろう。さらにあの時点では、グループを1位で突破するための大一番と想定されたスペインとの試合を控えていた。意識は徐々に、そのスペイン戦に向かっていく。67分にトーマス・ミュラーとイルカイ・ギュンドアンを交代させたことがその象徴で、この試合の結末を大きく変えるものとなった。
日本は脅威の減ったドイツを徐々に押し返し、途中出場の選手たちが躍動。75分に堂安律、83分には浅野拓磨がゴールを決め、試合をひっくり返すことに成功した。

ドイツは26本ものシュートを放ったが、1得点に留まり敗戦。前半アディショナルタイムのオフサイドとなった場面、ギュンドアンのポストに当たったシュート、日本の守護神権田修一の4連続セーブなど、確かにドイツには数多くの決定機があり、決め切れなかったという見方もある。
だが、日本としてはある程度想定内だった。ドイツに許した決定機のうち、ペナルティエリア内で決定的なシュートを許したのは、前半アディショナルにオフサイドとなった場面と、4連続セーブのうちの後半2回の場面ぐらいだ。
サッカーにおいて得点率の高い位置で簡単にシュートを許さず粘り強く戦えていたこと。加えて遠藤航がデュエル(1対1)での勝率で73.3%を記録し、チーム全体としても50%を超えるなど劣勢のなかでも球際で戦えていたことが、ドイツをPKの1得点のみに抑え金星を掴めた理由だった。

スペイン戦で2度目のサプライズを起こすには
日本はここまでの2試合で、16人をスタメン起用した。途中出場の選手を含めると、すでに26人中21人がプレーしている。ベースはドイツ戦のメンバーだろうが、その中から個としてのパフォーマンスはもちろん、組み合わせとしてのパフォーマンスを考えてベストと思われる11人を起用しなければならない。
負傷中の冨安健洋、酒井宏樹の動向にも注目が集まる。加えて、さまざまな展開を前もって想定しておくべきだろう。
ただしそれだけで勝てるほど、スペインは甘くない。ドイツ戦と同様かそれ以上に守備に身体を張ることは最低限。得点を奪うには、セットプレーでの工夫も必要だ。高さにやや欠ける日本が得点を奪うためには、ここまでの2試合では見せていないトリックプレーなどの策を講じなければならない。流れのなかでも、三笘の突破力や伊東のスピードに頼りすぎず、手を変え品を変えあらゆる手段を試すべき。そのためにはコスタリカ戦で失われていた勇気を、前面に押し出さねばならない。
日本対スペイン戦は、日本時間12月2日の朝4時キックオフと視聴には不向きな時間帯だ。それでも多くのファンやサポーターが、早起きして声援を送るはず。日本を代表する選手としてチームとして、そして何よりこの舞台に向けて準備を重ねてきた自分のために。再びサプライズを起こし、目標のベスト8へと大きく前進することはできるだろうか。
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