リバプール 日本代表・海外組

なぜリバプールは南野を選んだか?取引の裏にある深い理由

写真提供: Gettyimages

もう決まりと言っても良い。南野拓実が1月からユルゲン・クロップ監督率いるリバプールの選手になるということが、移籍市場の話題の主役となっている。

南野の獲得に動いていたのはリバプールだけではない。マンチェスター・ユナイテッド、ミラン、酒井宏樹が所属するオリンピック・マルセイユなど、複数のビッグクラブが動き始めようとしていた。しかし、もっとも早く動いた現在プレミアリーグの首位を独走するリバプールが、南野にとっても一番魅力的なクラブだった。

セレッソ大阪のユースに育てられた南野は、2012年から2014年の間にJリーグのトップチームでプレーしてから、オーストリアのレッドブル・ザルツブルクに移籍した。現在海外での5シーズン目を戦っている。

その間、南野は132試合に出場し、37得点を決めてきた(約3.5試合ごとに1得点)。そして、最近のチャンピオンズリーグ(CL)の試合でリバプールを相手に2度黒星つけられたものの、素晴らしいゴールを決めてクロップの顔に笑みを浮かばせた(10月3日の試合時からクロップは南野が自分のクラブに加わることをすでに分かっていたのだろうか…)。

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この取引の裏にいる人物

この取引の裏に、間違いなく関わっている人物がいる。それはレッドブル・グループのサッカー開発部門責任者を務めているラルフ・ラングニック氏です。彼はシュトゥットガルト、 ハノーファー、シャルケ、ホッフェンハイムでの指導者としての活躍を経て、レッドブル・ザルツブルクに呼ばれた。そして、現在はザルツブルクのみならずレッドブルグループの哲学を作り上げ、国際的にも戦えるクラブを作っている最中です。

実はクロップが監督になってから、リバプールはすでにラングニック氏に勧められた選手を4人も獲得している。ナビ・ケイタはレッドブルグループの2つのチーム、ザルツブルクとライプツィヒで経験を積んでからリバプールに移籍。サディオ・マネもザルツブルクで力をつけてからイングランドに旅立った。そして、ラングニック氏がシャルケとホッフェンハイムの指導者を務めていた時に、ジョエル・マティプ、そしてロベルト・フィルミーノを育てていたのだ。南野はラングニック氏からリバプールに勧められた5人目の選手となる。

この流れが偶然じゃないということは、ラングニック氏自身がインタビューで明かしている。「クロップが私が指導した選手を求めているのは偶然じゃない。高い位置でのプレス、切り替えの速さ、ボールを奪った瞬間にすぐゴールを狙うこと…。私と彼が選手に求めているプレースタイルとメンタリティーが非常に似ているんだ」

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リバプールにとって重要な南野の特徴

南野は間違いなくリバプールに必要な選手です。彼は昔、サイドの攻撃的選手として育てられたが、ザルツブルクで進化を遂げた。現在はトップ下、またはセカンドストライカーのポジションでもプレーすることができる。

現在、サラー、フィルミーノ、マネの3トップ以外のオプションとしてリバプールが持っているのは、ディヴォック・オリジとジェルダン・シャチリです。しかし、両選手共に南野の特徴は備えていない。オリジはピュアなストライカー。シャチリはサイドから仕掛ける選手だが、中央の方に絞るパターンが多くみられる。

上記二人の選手に足りないのは縦の攻撃パターン、試合読み、そして切り替えの速さ…。まさに南野のサッカースタイルに備わっている重要なポイントだ。今の南野は技術的にまだ成長しなければならないことは多いが、サラー、フィルミーノ、マネの3人と一緒にプレーすれば、着実に成長し、チームに欠かせない存在になるだろう。

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南野はどのポジションで使われる?

南野のポジションを予測するのはまだ早い。しかし、エバートン戦で見せたように、クロップのスタイルは4-3-3のシステムから4-2-3-1に傾く時がある。その場合、シャチリとスタメン争いになるが、南野はこんな風に使われるかもしれません。

4-2-3-1の場合の南野のポジション予想:画像: Football Tribe MY11

あるいは4-3-1-2のシステムで、サラーとマネのすぐ後ろでプレーすることも考えられる。しかし、これはチームに加わったばかりの選手をプレーの中心にすることを意味する。少なくとも最初の数ヶ月には、よほどの怪我人が出ない限り、ちょっと考えづらいパターンではある。

4-3-1-2の場合の南野のポジション予想:画像: Football Tribe MY11

最初に考えられる一番現実的な話としては、控えメンバーとしてスタートし、交代選手によって、アタッキング・ミッドフィルダー、トップ下、セカンドストライカーのそれぞれのポジションに使われることではないだろうか。

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南野はリバプールブランドを広める大事な存在となる

アメリカの経済新聞『フォーブス』によると、この取引にはとても重要な経済的な理由もある。もちろんこれは南野獲得のメインの狙いではないが、彼の活躍、そしてナイキのブランド力で、リバプールは日本とアジアにもっとマーケットを広めたい。

1ヶ月ほど前まで、リバプールはスポンサーであるニューバランスとある問題で揉めていた。リバプールがナイキを新しいスポンサーとして検討して、ニューバランスに契約解約を求めていた。しかしニューバランスは契約に書かれていた「同等の契約を提示すれば、契約更新を優先する」という条項があることを主張し、裁判を起こしていたのだ。しかし、その裁判ではリバプールが勝ち、ナイキと5年契約を交わすことができた。

ナイキは極東に6,000店舗ほどをもち、南野がリバプールに移籍したことで、イングランドのグッズのアジアでの売り上げが増加する見込みがあると言われている。

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南野にとってもリバプールにとっても良い取引

リバプールにとって、南野が加わることは非常に魅力的なことです。安い契約解除金(725万ポンド・約10億4000万円)を支払ってクオリティーの高い選手を手に入れる…。その選手は攻撃的な様々なポジションにフィットして、チームをより強くできる…。そして経済的にも売り上げの増加を見込むことができる。

南野自身にとっても、良いタイミングでリバプールほどのトップクラブに移籍できた。若くしてヨーロッパに渡ったことで、高いレベルのサッカーに慣れる時間がだいぶあった。そして、彼は現在まだ24歳。フィジカル的にも技術的にも伸びしろがある。

そして、一番大事なのは、クロップがやるようなサッカーには南野はすでに慣れていることです。プレミアリーグで彼の素晴らしい活躍を見られる時期は、そんなに遠くないと思う。

名前Uccheddu Davide(ウッケッドゥ・ダビデ)
国籍:イタリア
趣味:サッカー、アニメ、ボウリング、囲碁
好きなチーム:ACミラン、北海道コンサドーレ札幌、アビスパ福岡

14年前に来日したイタリア人です。フットボール・トライブ設立メンバーの1人。6歳の時に初めてミランの練習に連れて行ってもらい、マルディーニ、バレージ、コスタクルタに会ってからミランのサポーターに。アビスパ福岡でファビオ・ペッキア監督の通訳も務めた経験があります。

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