ワールドカップ 代表チーム

敗退後の混乱が続くドイツ代表。レーブ留任の理由と代表引退濃厚な選手は

著者:マリオ・カワタ

 ワールドカップのベスト4が出そろう一方、予想以上に早く大会を去ることになった国々は既に新たなスタートに向けて動き出している。中でも無残なグループステージ敗退を喫したドイツ代表に対しては、国内メディアが批判の集中砲火を浴びせるとともに変化を求めた。ロシアで精彩を欠いたベテラン選手たちには代表引退を求める声が上がり、チームを率いるヨアヒム・レーブ監督も失敗の責任を追及された。実際に敗退直後はドイツサッカー史上に残る大失敗の後で、2006年から指揮を執るレーブ監督が留任することないだろうとの見方が強かった。

 しかし敗退の一週間後、ドイツサッカー連盟(DEB)は今後も引き続きレーブが代表チームを率いることを発表した。この一見驚くべき決断の裏には、いくつかの理由がある。中でも最大の理由は、DFBに解任に踏み切るほどの経済的な余裕がないことだ。DFBはW杯開幕前にレーブ監督との契約を2022年まで延長したばかりだった。全てが順調だったはずの当時は、実績十分の指揮官をビッグクラブに奪われる前に引き留めることは賢明な判断のように思えた。実際にジダンがレアル・マドリードの監督を辞任した際にはレーブも後任候補として名前が挙がったが、契約延長直後ということで早々に噂は否定されている。

 この新たな長期契約を打ち切り後任を雇うとなれば莫大な資金が必要になるが、現在のDFBに想定外の大きな支出を正当化できるだけの余裕はない。また仮にレーブを解任したとしても、後任の適任者は少ない。ユルゲン・クロップは現時点でリバプールを離れることは考えられず、その他に名前が挙がったフライブルクのクリスティアン・ストライヒらも国際経験や実績の点では物足りない。

 つまりDFBにとって、レーブ解任は現実的なオプションではなかったのだ。そうなると留任か退任かはレーブ次第となるが、韓国戦後に「今回の結果は完全に私に責任がある」と語り辞任が濃厚とさえ言われていた指揮官は、監督の座に留まることを選択した。現在もその実績からサッカー界からの評価は高いレーブだが、彼の留任に多くのファンは異議を唱えており、国民から信頼を取り戻すには時間が掛かるだろう。

 それでも、ドイツ代表に何らかの変化が求められていることに変わりはない。W杯敗退はひとつの時代が終わったことを意味し、長年代表チームの顔としてプレーしてきた選手たちの去就が注目を集めている。敗退の怒りの中でファンやメディアからはトーマス・ミュラー、ジェローム・ボアテング、サミ・ケディラらベテラン選手の代表引退を求める声が上がったが、ボアテングは公式に代表引退を否定している。現時点では多くの選手が自ら代表チームを去ることは考えにくいが、メスト・エジルが再びドイツ代表のユニフォームを着る可能性は低いかもしれない。

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