代表チーム イングランド代表

イングランド代表に悪影響を与えるライバル関係。レジェンドが指摘したピッチ外の問題

現役時代のスティーブン・ジェラード 写真提供:Getty Images

 他の多くの仮説とは違い、ファーディナンドの発言は現実味があり共感することができるものだ。サッカーのグローバル化と動く金額の巨大化により、ヨーロッパのクラブでは試合に勝利しタイトルを獲得するため常に大きなプレッシャーが掛かっており、それはライバルを蹴落とすことを意味している。例えばスペインに目を向ければ、スペイン対カタルーニャの歴史的対立を背景としたクラシコは多くのファン、そして選手にとってより重要な存在になっている。

 YouTubeの人気チャンネル『アーセナルファンTV』をフォローしている人間なら、実に多くのファンがインターナショナルウィークを嫌い、イングランド代表などどうでもいいと思っているのを目にしたことがあるだろう。多くの人々にとって、国全体よりも彼らのコミュニティを代表するチームの方がはるかに重要なのだ。サッカーがビジネス化し巨額の金が動く現在も、人々のコミュニティ、そしてアイデンティティを代表して戦う選手たちにそうした感情が移るのも当然と言えるだろう。代表チームのアイデンティティが国全体を象徴するドイツのような国と違い、イングランドはミッドランド、マンチェスター、リバプール、ヨークシャーやタインサイドなど、ローカルコミュニティが独自のアイデンティティを持っている。

 ライバル関係がヨーロッパ中に存在する一方で、イングランドの問題はユニークなものだ。2017年の11月、スティーブン・ジェラードはフィリッペ・コウチーニョが10日間のブラジル代表のトレーニングキャンプをどんなに楽しみにしているかを語った。それはイングランドの選手には理解しがたいものだ。「イングランド代表での関係は愛情のある親密さというより、互いを尊重した関係だった。コウチーニョはブラジル代表に参加するのが待ちきれず、その10日間はシーズンで最高の時間なんだ。イングランドではそういう感情はなかった」と元リバプールのキャプテンは語っている。

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