Jリーグ ジュビロ磐田

中村俊輔ら主力不在の中で立て直しに成功した磐田。名波監督はチームを次のレベルに導けるのか

ジュビロ磐田の名波浩監督 写真提供:Getty Images

 前半は1-1で終わったが、より積極的だったのはアウェイのジュビロの方だった。柏が相手陣内でほとんどパスを繋げなかったのに対し、磐田はうまくスペースを埋め、危険なエリアにボールを運んでチャンスを作り出していた。しかし後半になるとやっとホームチームが目を覚ます。レイソルはポゼッションを握り始め後半だけで9本のシュートを放ったが(対照的に前半はシュートわずか2本だった)、枠に飛んだのはカミンスキーにとって簡単な2本だけだった。3本のシュートは枠を外れ、5本はブロックされている。ジュビロのディフェンスは後半開始直後こそ柏のロングボールに意表を突かれたが、その他の時間はうまく対応した。

 実際に、守備の安定はジュビロの強みだ。2017年シーズンの磐田はホームとアウェイで全く同じ戦績(8勝5分4敗)を残しているが、特にホームよりも敵地でディフェンスの堅さを見せ、17試合で11失点しかしていない。今季もこれまで6試合5失点と、本来ならよりプレッシャーが掛かるはずのアウェイで守備がうまく機能している。

 ジュビロはハーフタイム後に試合を決める後半型のチームだ。彼らは柏の側に流れが傾いた時間をしっかりと耐え、再び個人のスキルを活かしてタイムアップ6分前に決勝点を決めた。山田と松浦は既にベンチに退いており、スポットライトを浴びたのは(皮肉にも柏U-18出身の)荒木大吾だった。カウンターアタックで前線に駆け上がると、本職のポジションではない中山雄太を交わして川又にピンポイントのクロスを上げる。巧みにポジションを取った184cmのセンターフォワードはマークについた169cmの右サイドバック小池龍太にチャンスを与えず、ヘディングシュートを決めた。

 名波監督はカリスマ、現代的なアイディアと戦術的柔軟性を備えた比較的若い(45歳)指揮官だ。3バックを好む傾向があるが必要であれば4バックも採用し、毎年一歩ずつジュビロを上のレベルへと引き上げてきた。彼のサッカースタイルは最も魅力的なものではないかもしれないが、それは大きなトーナメントで日本代表に必要とされるアプローチにも思える。このまま進歩を続ければ、かつての日本代表の10番はいずれサムライブルーの監督の有力な候補になるだろう。

著者:チアゴ・ボンテンポ

1985年生まれのブラジル人ジャーナリスト。サンパウロ在住。幼少期よりスポーツとりわけサッカーを愛する。大学時代にジャーナリズムを専攻し2011年よりブラジル『Globo Esporte』で日本サッカーを担当している。ブラジルのボタフォゴ、アーセナル、そして日本代表の熱烈なサポーターである。将来の夢は日本語を流暢に扱うこと、富士山登頂、Jリーグスタジアムを巡ること。

Twitter: @GunnerTNB

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