さようなら、キャプテン・アストーリ

著者：Giancarlo Rinaldi（翻訳者：土屋一平）

　私たちのサッカーヒーローたちがこの世を去る時、彼らに敬意を示すのは自然の秩序である。通常は、引退したずっと後、彼らの素晴らしいキャリアを思い起こさせる、ノスタルジックな時を私たちに与えてくれたあとに、それは起こる。しかし31歳で失うことになると、感情は全く違うものになる。

　青天の霹靂。フィオレンティーナのキャプテンであるダビデ・アストーリの死を知った時、まさにこう感じた。リーグ中位のウディネーゼとの難しい試合に向けて準備していた矢先、次の瞬間には真の悲劇を受け入れなければならなかった。私たちが抱くサッカーに対する些細な心配は、実際そうであるように、馬鹿げたものであることが突然あらわになったのだ。

　スポーツは成長し、現実に直面することから私たちを隔離する。そしてそれはスポーツのひとつの魅力だ。私たちは「大惨事」といったような言葉を使って、実際にはそれほど重要ではない問題を語る。

　スポーツは無害な現実逃避だが、本当に悲惨な出来事が起こった時、すべてはありのままの見方になる。試合について書き、日々誇張表現とともに過ごす私たちは、起こったことの規模を正当に表す言葉のために、虚空をつかんでいる自分たちを発見するのだ。

　私たちの損失は、パートナー、子ども、家族、友達と比べれば何でもない。彼らは人生、父親、親戚、同僚、親しい仲間を失ったのだ。彼はサッカーの試合に出かけ、帰ることはなかった。イタリアのサッカーは敬意を示すために、試合を延期した。