プレミアリーグ Jリーグ

プレミアリーグとJリーグ、ほぼ“同期”にしてなぜここまで収益格差が生まれたか

プレミアリーグ(左)Jリーグ(右)写真:アフロスポーツ

プレミアリーグは1992年、イングランドの旧フットボールリーグ1部所属クラブが独立する形で創設された。翌1993年に発足したJリーグとは、わずか1年差の”同世代”のリーグだ。

しかし30年余りを経た現在、プレミアリーグは世界中で放映され莫大な資金力を誇る「世界的エンターテインメント商品」へと成長している一方、Jリーグは国内市場を中心に地域に根差したスポーツ文化として発展を続けている。

ここでは、放映権ビジネスのグローバル化と外国資本の受け入れ体制という2つの要因に着目し、放映権収入やクラブ買収の具体例を交えながら、この差がどのように生まれたのかを歴史的背景とともに解き明かしていきたい。


プレミアリーグ 写真:アフロスポーツ

放映権ビジネスの市場規模の差

プレミアリーグ

プレミアリーグは1992年の創設と同時に、有料衛星放送の『Sky Sports(スカイスポーツ)』と提携した。民放の無料放送中心だった従来のフットボールリーグから有料放送へシフトし、英語圏を基盤としたマーケティングを推し進めた。アジア、北米、中東など世界各地の放送局に放映権を販売し、世界中で視聴されるコンテンツへと変貌させたことで、放映権料は急騰。創設当初から「世界に売る商品」としてリーグを位置づけた点が、その後の成長を大きく左右した。

最新の国内放映権契約は2025/26シーズンから2028/29シーズンまでの4年間で約67億ポンド(約1兆4,516億円)とされ、年間約16億7500万ポンド(約3,629億円)にも達する。国際放映権を合わせると、リーグ全体の放送関連収入は年間数千億円規模に上る。海外権利の割合が半分を超えるケースもあり、グローバルな入札競争が収益を押し上げている。例えば、米国市場ではNBCが全試合の放映権を取得し、年間4億ドル超の規模に成長した事例がある。アジアや中東でも複数の放送局が競合し、放映権料の高値相場が定着した。

2026/27シーズンの移籍期間が9月1日に締め切られたが、プレミアリーグ全20クラブが費やした移籍金は約34億6,000万ポンド(約7,612億円)にも上る。日本プロ野球(NPB)12球団の支配下選手713人の年俸総額(推定約371億8,667万円)に、MLBで活躍する日本人選手の年俸(推定総額約116億円)を加えても、その合計は約487億円程度にとどまる。プレミアリーグ1シーズンの移籍金総額だけでこの数字のおよそ15倍だ。(出典:日本プロ野球選手会公式発表「2026年年俸調査結果」および、MLB公式データ、米国経済メディア『Spotrac』『Cot’s Baseball Contracts』)

Jリーグ

一方、Jリーグは1993年の発足当初は、地上波の無料放送を軸に据えていた。プロ野球のような「お茶の間の定番」を目指し、国内視聴者の拡大を優先した。2017年にDAZNと大型契約を結び有料化へ舵を切ったが、基本的には日本国内市場が中心だ。2023年から2033年までの11年間で約2,395億円の放映権契約を結び、年平均約218億円程度。2025年度のリーグ全体の経常収益は346億円で過去最高を更新したものの、放送権料は221億円規模にとどまる。言語の壁もあり、世界中の放送局が競い合う構造は形成されなかった。海外での放映は約20か国にとどまり、YouTubeでの越境配信なども実施しているが、プレミアリーグのような巨額契約には至っていない。国内向けの有料化は進んだものの、国際市場での競争力は限定的だ。

この放映権収入の差だけでも、プレミアリーグがJリーグを大きく上回る結果となっている。プレミアリーグのクラブ合計収益が2024/25シーズンで約68億ポンド(約1兆4,400億円規模)に達する一方、Jリーグのリーグ本体収益は数百億円規模にとどまる。放映権がリーグ運営の主要な原資である点は共通するが、その絶対額の開きが選手補強や施設投資の差に直結している。


チェルシー 写真:アフロスポーツ

投資対象としての魅力と外資受け入れの違い

プレミアリーグ

プレミアリーグはクラブの株式売却や外資による買収をほぼ完全に自由化した。2003年にロシアの実業家ロマン・アブラモヴィッチ氏がチェルシーを約1億4,000万ポンドで買収したのを皮切りに、アメリカの投資ファンド、中東の政府系ファンド、欧州の大富豪などが次々と参入した。クラブを「世界中で莫大な富を生むコンテンツ」と位置付け、オーナーが私財を投じてスター選手を獲得するサイクルが定着した。

具体例として、2008年にアブダビの政府系ファンドがマンチェスター・シティを買収し、以降巨額の投資を続けた。ライバルのマンチェスター・ユナイテッドは米国のグレイザー家が買収し、上場を経て世界的な商業価値を高めた。リバプールは米国のフェンウェイ・スポーツ・グループが買収し、商業化を加速させた。これらの動きにより、クラブの企業価値自体が高騰し、リーグ全体の資金力が飛躍的に向上した。投資に対するリターンとして、欧州CL(UEFAチャンピオンズリーグ)出場による賞金や知名度向上が大きな魅力となった。外資の流入は選手の移籍市場を活性化させ、リーグの競技レベル向上にもつながった。

参考までに、プレミアリーグ全20クラブのオーナーとその国籍を示したい。如何にしてプレミアリーグが外国資本によって発展したのかが一目瞭然だ。

アメリカ資本:11クラブ

  • アーセナル:クロエンケ・スポーツ&エンターテインメント(スタン・クロエンケ氏)
  • アストン・ビラ:V Sports(投資会社アタイロス、ウェス・エデンス氏=アメリカ、ビラ:ナセフ・サウィリス氏=エジプト)
  • ボーンマス:ブラックナイト・フットボール・クラブ(ビル・フォーリー氏)
  • チェルシー:クリアレイク・キャピタル、エルドリッジ・インダストリーズ(トッド・ベーリー氏)
  • クリスタル・パレス:スティーヴ・パリッシュ氏、ウッディ・ジョンソン氏、ジョシュ・ハリス氏、デイヴィッド・ブリッツァー氏ほか
  • エバートン:フリードキン・グループ(TFG)
  • フラム:シャヒド・カーン・トニー・カーン父子
  • マンチェスター・ユナイテッド:グレイザー家、ジム・ラトクリフ氏(共同オーナー)
  • リーズ・ユナイテッド: 49ersエンタープライズ
  • リバプール: フェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)、ジョン・H・ヘンリー氏
  • イプスウィッチ・タウン: ポートマン・ホールディングス(Portman Holdings)、ブライトパス・スポーツ・パートナーズ(Bright Path Sports Partners)、エド・シーラン氏(少数株式保有)

イギリス資本:4クラブ

  • ブレントフォード:マシュー・ベナム氏
  • ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオン:トニー・ブルーム氏
  • トッテナム・ホットスパー:ENICグループ(ジョー・ルイス氏)
  • コベントリー・シティ:ダグ・キング氏

中東資本:2クラブ

  • マンチェスター・シティ:シェイク・マンスール・ビン・ザイド・アル・ナヒヤン氏(シティ・フットボール・グループ)
  • ニューカッスル・ユナイテッド:サウジアラビア公共投資ファンド(PIF)、RBスポーツ&メディア、ルーマン・ファミリー

その他欧州・アジア資本:3クラブ

  • ノッティンガム・フォレスト:エヴァンゲロス・マリナキス氏=ギリシャ国籍
  • サンダーランド: キリル・ルイ・ドレフュス氏=フランス出身・スイス国籍
  • ハル・シティ:アクン・イルカル氏=トルコ国籍

現時点で過半数が外資系オーナーだ。莫大な放映権料と世界を代表する億万長者がオーナーに就くことで、世界的名選手が次々とプレミアリーグのクラブへ移籍する土壌が出来上がっている。

Jリーグ

これに対しJリーグは「地域密着(ホームタウン制)」を理念の柱に据え、特定の外資や大富豪によるクラブの私物化を規約で厳しく制限してきた(外資系オーナーによる過半数の株式保有を禁止)。企業の実業団チームを母体にゼロからプロリーグを立ち上げた経緯もあり、地方自治体やローカルスポンサーとの共生を重視する姿勢が未だに強く、海外の億万長者が巨額のマネーゲームを仕掛ける対象にはなりにくかった。結果として、クラブの強化資金は国内企業や地元スポンサーに依存する構造が続いている。地域貢献を重視する理念はクラブの社会的意義を高めたが、国際的な資本流入を抑制する要因にもなった。

Jリーグは2020年に規約を改め、外資企業によるクラブの経営権保有(株式保有)を解禁し、2024年、レッドブル・グループが大宮アルディージャの全株式を取得し、外資系企業のJクラブ買収第1号となった。創設以来、外資買収を制限していなかったプレミアリーグとの差はここにある。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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